2010年6月30日水曜日

公共交通の事故被害者への支援ニーズについての報告書

 かねてから、鉄道や航空の重大事故の遺族や被害者の方々は、事故の発生時や事故後十分な情報提供を行ってほしい、突然大切な人を失って心の安定を失うことの多い被害者へ心のケアなどの支援についても検討してほしいと、行政などに要望してきた。

 また、2008年、運輸安全委員会が発足する際には、被害者・遺族への支援の重要性が、国会でも論議され、「総合的な施策の推進のために必要な措置を検討すること」とする附帯決議がなされた。

 その結果、2009年から、公共交通の事故被害者等への支援のあり方を検討するため、遺族団体や支援団体の協力も得て、有識者、行政関係者が一堂に会する検討会が国土交通省で開催された。今度、昨年度の調査の内容が報告書としてまとめられ公表された。

 報告書によれば、事故の遺族や被害者がどのような支援を必要としているか把握するため、遺族らにヒアリングをしたり、被害者以外の関係者にもヒアリングをしている。また、海外の被害者支援については、アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)に調査にいき、報告をまとめたということである。

 まとめられた被害者へのアンケート結果をみると、具体的にどのような支援が必要か、どのような課題が残されているかがわかる。
 
 知りたいこと、必要な支援は被害者によって異なるだろうと思う。細かな要望にていねいに応えられる支援の体制がどのようなものなのか、検討会で十分論議して、大切な人を失った遺族や被害者が二重三重に苦しみ嘆くことのないようにしてほしい。

《参考》
国土交通省 「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」
「公共交通における事故による被害者等への支援ニーズ等に関する調査 報告書」(平成22年3月)
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_fr_000007.html

2010年6月23日水曜日

ボート転覆事故、問われる県や委託業者らの危機管理体制

 春に入学したばかりの中学一年生にとって、友人との交流の場となり、楽しい思い出を残すはずの自然体験学習が、暗転して痛ましい事故の記憶に置き換えられてしまった。
 朝、元気に玄関から出かけるのを見送ったのを最後に、突然変わり果てたわが子と対面しなくてはならなかった中学生のご両親の心痛はいかばかりだろうか。ご両親のことを思うと、本当に何と書いてよいかわからない。
 
 転覆したボートに取り残されて亡くなった女子中学生の告別式が、22日行われた。中学生が所属していた吹奏楽部の演奏に、多くの友人が涙したに違いない。

 報道で事故当時の状況が分かってくるにつれ、大雨・洪水・強風・波浪などの注意報が出される中、なぜ、「県立三ケ日青年の家」所長や校長が、訓練を実施したのだろうかと疑問がわいてくる。

 事故については、運輸安全委員会の船舶事故調査官が現地入りして、所長ら関係者から事情を聞くなどして、原因の究明にあたると言うことだ。
 訓練実施の判断は誰がどのようにしたのかや、転覆した後なぜ生徒の安否確認がおくれたのかなど、危機管理が十分だったかどうか、今後、調査されるのだろう。

 静岡県では、2004年から、県の文化・運動施設などの効率的な運営をめざして、民間業者に委託する「指定管理者」制度を導入し、現在44の施設で、「指定管理者」で運営しているということだ。「県立三ケ日青年の家」も今年、4月から、「小学館集英社プロダクション」(東京都千代田区)に運営を委託していた。

 今回の事故の前にも、他の施設で事故が起きているという。業務を委託する県は指定管理者の危機管理体制は十分か、スタッフの技術はどの程度なのか、チェックする義務があるのではないだろうか。

《参考記事》
「ボート転覆で死亡、西野さんの告別式しめやかに」
(2010年6月23日09時27分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100622-OYT1T00785.htm?from=nwlb

「指定管理者の問われる危機管理 県内の施設で事故相次ぐ」
2010年6月22日中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20100622/CK2010062202000143.html?ref=related

2010年6月19日土曜日

教育への公的支出の拡大を~文部科学白書

 報道によると、18日、文部科学省は同省の取り組みをまとめた「文部科学白書」を発表、初めて教育費の問題をとりあげた。「日本は国際的にみて家計の教育費負担が大きく、公的支出が少ない」と強調、「教育に十分な資源を振り向けることが喫緊の課題」だという。

 高校卒業後の進路について、親の年収別に調べたところ、3年前のデータで、年収400万円以下の家庭では大学進学率が31%なのに対し、年収1000万円を超える家庭では大学進学率が62%となっていることがわかった。年収の差によって教育機会の格差が明確になっているとしている。また、毎年行われている全国学力テストでは、いずれの教科でも、親の収入が高いほど、平均正答率も高い傾向になっている。

 また、白書の特集では、教育費について、子ども1人が幼稚園から高校まで公立、大学は国立に通った場合、約1千万円、すべて私立に通った場合は約2300万円かかることがわかった。「子ども2人が私立大学に通っている場合は、勤労世帯の可処分所得の2分の1超を教育費が占める」と、家計への負担の重さを強調しているという。

 教育支出に占める私費と公費の負担割合の国際比較では、日本は大学などの高等教育段階では私費が7割、公費は3割(先進国平均=私費3割、公費7割)と、家計への負担が重い。政府支出に占める教育支出の割合が先進27カ国中最下位だということだが、すぐに先進国並みに…とは言わない。大学への補助金を増やすなどして授業料を値下げするなど、家計への負担を減らし、教育費以外への支出を増やせるようにしてほしいものだ。そうすれば、日本の経済にとってもよい効果があるのではないだろうか。

 日本は、明治維新後、近代的な国家をつくるため、教育に何よりも力を入れてきたはずだ。すべての国民が教育を受け、読み書き計算ができ自分で問題解決できる力を持つことが、産業を支え国の発展につながると考えて、明治の政府は、日本全国津々浦々小学校を建てて、子供たちを教育してきたはず。

 日本の近代化をみてもわかるように、教育は個人にとって利益となるだけではなく、国の発展、ひいては国際社会の発展と平和を支えるものではないかと考えると、国民が経済的な理由で教育を受ける機会を失うことのないように、教育の予算をふやすことが必要ではないかと思う。

《参考》
「平成21年度文部科学白書の公表について」 文部科学省 平成22年6月18日
6月末刊行予定の文部科学白書について、要旨が発表されている
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/06/1294984.htm

《参考記事》
・「日本は家計の教育費負担大きい」文部科学白書が特集    2010年6月18日朝日新聞
http://www.asahi.com/edu/news/TKY201006180281.html

・白書 教育への公的投資充実を   6月18日 10時57分 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100618/t10015198071000.html

2010年6月17日木曜日

男性二人がホームから転落した女性を救出、 消防署が感謝状

 報道によると、6月13日夜、東京都目黒区の東急東横線自由が丘駅で、女性(83)がホームから転落するという事故があった。ホームに居合わせた男性二人が力を合わせて、女性を助け出した。女性は、頭を打っているが意識はあり、手足にけがをしたものの命に別条はないということだ。

 下り特急列車が迫る中、とっさにホームの緊急停止ボタンを押し、ホームに飛び降りた男性は、女性を抱えたものの、全く動かせない。この状況を見たもう一人の男性が、ホームから飛び降り、先の男性といっしょに女性を隣の上り線の線路に移した。特急列車は3人から約70m手前で緊急停止し、乗客にもけがはなかった。
 
 救助にあたったのは藤沢市の会社員水野尾孝司さん(35)と横浜市南区の警備会社員竹森明さん(51)。竹森さんは、以前JR山手線新大久保駅を通勤に使っていた。
 新大久保駅では、2001年、ホームから転落した男性を助けようとして、韓国人留学生李秀賢さん(当時26才)と横浜市のカメラマン関根史郎さん(同47才)が電車にはねられ亡くなるという事故が起きていた。
 
 竹森さんは当時、通勤で通る新大久保駅にある犠牲者を追悼するプレートを毎日見ていた。自由が丘駅のホームで、新大久保駅の出来事がよぎり、とっさに飛び降りたという。
 竹森さんは「新大久保駅の事故を思うと知らんぷりはできなかった。全員無事でよかった」と語っている。列車が迫ってくる中、普通ではとっさにできない勇気のある行動だと思う。目黒消防署は、15日、女性を救った二人に消防総監感謝状を送った。

 新大久保駅での事故の後、ホーム下に避難スペースを設置するなどの対策がとられてきているが、乗降客が多い自由が丘駅で避難スペースがないのは驚いた。
 ホームから転落する事故を防ぐには、ホーム柵設置などの対策が必要ではないかと思う。

《参考記事》
迫る特急、間一髪の救出 消防署が感謝状   2010年06月16日 朝日新聞横浜版
http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000001006160005

2010年6月14日月曜日

警報機・遮断機、停止線なしの踏切事故で、JR九州を提訴 

  昨年6月、福岡県うきは市のJR久大線うきは-筑後吉井間にある踏切で、近くに住む小学校5年生の男児が普通列車に撥ねられて亡くなった。この踏切は遮断機や警報機のない踏切で、一旦停止線もなかったという。
 
 報道によると、10日、この小学生の父親が、JR九州に対して「危険回避上の瑕疵(かし)がある」として、慰謝料などをもとめる裁判を起こしたことがわかった。
 
 訴状によると、2009年6月15日午後4時半ころ、小学生は、うきは市吉井町清瀬の踏切(幅1.8m)を自転車で渡ろうとしたが、列車が近付いてきたため、一時停止した。しかし、列車が自転車の前輪に接触、頭を強く打って死亡した。事故当時、現場には、一旦停止線もなかったという。
 
 原告代理人である弁護士は、「小学生にとっては、列車の車幅を予測して接触や風圧による転倒、巻き込み事故を防ぐ判断をすることは容易ではない」としており、「JR九州は警報機や遮断機を設置して危険を回避する責任があった」と指摘しているとのこと。
  
  国土交通省の統計によると、09年3月末現在、全国にある踏切34,252か所のうち、約1割の3,404か所に、警報機・遮断機がなく、 JR九州管内には、踏切2,887カ所のうち287カ所に警報機・遮断機がない。

 遮断機・警報機がない踏切の事故については、広島地裁が2009年2月、高校3年生が列車にはねられて死亡したJR山陽線東広島堀川踏切の事故で、JR西日本に賠償を命じる判決を言い渡している。
 踏切道の安全確保について、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13 年国土交通省令第151 号)は、「第40 条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という)の安全かつ円滑な通行に配慮したものであり、かつ、第62 条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。」とし、
 第62 条 第1 項では、「 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。」としている。

 つまり、踏切には、最低列車の接近を知らせる装置が必要だとしているのである。
 線路がまっすぐだったりすると、見通しはよいけれど、列車と自分との距離がわかりにくく、振動の少ないロングレールなどでは音で列車の接近を判断するのも難しくなってきている。また、列車の幅を予測して、踏切で停止位置を判断するのが困難な児童や生徒が通行する通学路などには、優先的に、警報機や遮断機などを設置すべきだと思う。

 鉄道事業者は、踏切を通行する人がどんな人たちなのか、児童生徒やお年寄りが多いかどうかといったことも考慮して踏切の安全対策を見直すべきだと思う。踏切の周囲の環境の変化に応じた安全対策が求められていると思う。

《参考》
 広島地裁の判決などについては、当ブログの以下を参照
事故の詳細は、当ブログ参照「 踏切事故の現場を訪ねて~4月24日東広島」   http://tomosibi.blogspot.com/2009/08/2009424.html
《広島地裁判決については以下で判例検索できる》
平成20(ワ)8 損害賠償請求事件 平成21年02月25日 広島地方裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090417195030.pdf
《参考記事》
踏切事故で死亡小5の親 「管理に問題」JR提訴 6600万円賠償請求 遮断機、停止線なし 地裁久留米    2010年6月11日 05:14
=2010/06/11付   西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/177516

2010年6月10日木曜日

ツアー登山、3割の旅行会社でマニュアルなし

 2009年7月、北海道大雪山系トムラウシ山(2,141m)で、台風が近づく悪天候の中、ツアー登山に参加していた登山者ら8人が凍死した。この遭難事故を受け、観光庁は、ツアー登山を行う旅行会社に、登山マニュアルを作成しているかアンケートをとった。

 報道によると、アンケートの結果、添乗員や山岳ガイドのための登山マニュアルを作成していないと回答した旅行会社は三分の一に上ることがわかったという。
 
 今年三月、調査結果をふまえて、観光庁はマニュアル作成を業界団体に要請したそうだ。観光庁の担当者によれば、各社が天候が悪化した場合の危険を回避するための判断基準などを具体的に決め、最低限の約束事を決めるべきだという。

 アンケート結果によれば、「添乗員を必ず正社員が務める」は27%、「ガイドを必ず正社員が務める」は4%で、非正規のスタッフがツアーを支える実態もわかった。
 近年ツアー登山の人気が高まっており、ツアー登山には年間30万人が参加するという。ツアーの参加者が安全に登山できるよう、旅行業者は、山の知識や事故対応について講習などを通じて、スタッフを教育したり、専門の山岳ガイドとして認定されたスタッフをツアーの添乗員にしてほしい。

 自然とのふれあいをもとめて参加した登山が、参加者にとって楽しく思い出深いものとなるよう、ツアー登山を企画運営する旅行業者のみなさんには、十分計画を検討し、経験豊かなスタッフをツアー登山につけてほしい。そして2度と同じような事故を繰り返さないでほしいと思う。

(なお、当ブログでは以下で、昨年の事故を取り上げたhttp://tomosibi.blogspot.com/2009/07/blog-post_24.html

《参考》
(社)日本旅行業協会 「ツアー登山運行ガイドライン」(平成21年9月1日作成)
http://www.jata-net.or.jp/membership/info-japan/climbing-tour/pdf/200909tourclimb_guideline.pdf
《参考記事》
「登山ツアー マニュアルなし3割 観光庁 旅行社に作成通達 」    東京新聞2010年5月24日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/yama/CK2010052402000186.html

2010年6月5日土曜日

港区エレベーター事故から4年~柳田邦男氏が講演

 6月3日、港区のマンションでシンドラーエレベーター社製のエレベーターに乗っていて、扉が開いたので降りようとした市川大輔さんが、突然上昇したエレベーターに挟まれて亡くなった事故から4年がたった。

 3日、大輔さんの両親が主催した講演会では、作家でジャーナリストの柳田邦男氏が2時間にわたり、「生きる力」と題して講演をおこなった。柳田氏はジャーナリストとして50年間、さまざまな事故や事件に関わってきた。柳田氏は、日航ジャンボ機墜落事故や信楽高原鉄道事故、エレベーター事故などの遺族・被害者の置かれてきた状況を目の当たりにしてきた。切実に、事故の原因究明をもとめる遺族の思いをひしひしと感じてきたのだと思う。
 
 柳田氏は「重大事故でさえ、これまで被害者は行政や警察に置き去りにされてきた」と指摘、被害者が事故調査に加わる意義を語った。

 遺族は、大切な人を奪った事故がなぜおきたのか、なぜ大切な人が亡くなったのかと問う。なぜ、事故を防げなかったのか、なぜ、事故が起きても助かる術がなかったのかと、悲しみの中から問いかける。その問いかけが、車両の安全性向上や座席の安全性を高め、安全を語り継ぐ場をつくることにつながってきたという。
 
 事故から今年8月で25年になる日航ジャンボ機墜落事故の遺族は、事故直後から残存機体などを廃棄処分しようとしていた日航にたいして、機体や遺品の保存を求め続けた。事故から20年以上たって、2006年4月、日航はトラブルが続いたことを反省して、日航機事故などを語り継ぐ場として、社員教育のための安全啓発センターをつくり、遺品や事故機の圧力隔壁などを展示することにした。柳田氏は、遺族の声はそのきっかけになったと指摘した。

  また、さまざまな生活空間の事故の遺族同士のつながりができつつあるが、それは遺族の生きる支えになっている。国交省では、事故被害者の支援について検討を始めているが、今後、被害者支援が政策としてまとめられることを期待しているとも語った。
 
 講演会の最後に、挨拶に立った大輔さんの母正子さんは、亡くなった人の命を無駄にしないため、(監督官庁から)独立した公正で中立な事故調査機関の設置と徹底した事故の原因究明をもとめて、さまざまな遺族や被害者と絆を深めていきたいと語っていた。

《参考記事》
エレベーター死亡事故から4年 原因調査めぐり柳田氏講演
2010/06/03 21:22 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201006/CN2010060301000664.html

明石歩道橋事故、元明石署地域官ら実刑確定へ…最高裁が上告棄却

 平成13年(2001)年7月21日夜、兵庫県明石市の朝霧駅歩道橋で、駅に向かう通行人と会場に向かう花火大会の見物客とが異常に集中し、群衆雪崩が発生、11人が死亡、247人が負傷するという事故が起きた。
 
  事故当時、通行人が滞留した橋の上では、1㎡あたり、13~15人もの人がとじ込められたという。橋はボトルネック構造になっている。駅から100mほどの長さで幅6mあるが、下りる階段は幅3mで片側しかなく、踊り場で花火を見物する人が滞留し、駅から来る通行人と夜店が並ぶ歩道から上がってくる見物客とで橋の上は身動きが出来なくなった。
 
  橋はプラスチック製の屋根でおおわれているため、事故当時、大勢の人が押しとどめられた橋の中は、蒸し風呂のように熱くなったという。
(写真は2007年7月撮影 国道28号の方からみる。 左手が朝霧駅、右手が大蔵海岸)

 この事故について、5月31日、最高裁判所第1小法廷は、事故当時、現場の警備にあたっていた元明石署地域官・金沢常夫被告(60)と警備会社の元大阪支社長・新田敬一郎被告(68)の上告を棄却する決定をした。同小法廷は、「機動隊に出動を要請して歩道橋への立ち入りを規制していれば事故は回避できた」と判断、「事故を容易に予測できたのに、事故は起きないと軽信し、必要な措置を講じなかったために多数の死傷者が出た」と認定した。両被告は、業務上過失致死傷罪で、禁固2年6月の刑が確定する。
 
 この花火大会では、主催者の明石市とともに明石署も事前の計画段階から、警備計画にあたっていた。
 しかし、この花火大会の7カ月前の平成12年12月31日に同じ会場で行われたカウントダウンイベントの際、歩道橋の上で、異常な密集状態となって雑踏事故の一歩手前だったのに、このときの警備計画を見直さず、7月の花火大会の際に分断規制や入場規制などの雑踏事故防止の対策を怠ったとされている。
 また当日は、明石警察署では、テレビモニターや警察無線などで、歩道橋内の混雑状況が把握できたにもかかわらず、元署長らは現地の部下に適切な指示を怠り、事故の発生を防止しなかったとされ、元副署長らは、今年4月、神戸第2検察審査会の「起訴議決」を受けて全国で初めて強制起訴された。

《参考》
明石歩道橋事故は、民事裁判については、平成17年6月、神戸地裁が原告である遺族側の主張を認め、花火大会の主催者である明石市や警備会社、兵庫県に損害賠償の支払いを命じた。
 (判例)平成14年(ワ)2435損害賠償事件 平成17年6月28日神戸地方裁判所
《参考記事》
歩道橋事故、明石署元幹部ら実刑確定へ…最高裁が上告棄却 (2010年6月3日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100603-OYO1T00206.htm?from=top