2011年2月28日月曜日

卒業式の歌

 3月は、卒業式のシーズンだ。
 卒業生が歌う卒業式ソングも、以前は「仰げば尊し」が多かったが、今は卒業生が選曲する学校が増えているらしい。

 徳島新聞では、県内の国公私立の全中学校(87校1分校)に取材したところ、もっとも歌われる曲は、「旅立ちの日に」で、34校だったという。
 「旅立ちの日に」は、1991年、埼玉県秩父市立影森中学校の校長だった小嶋登さんが作詞し、音楽担当だった高橋浩美教諭が曲を作った。翌年、音楽教師向けの専門誌に掲載されると、全国の小中学校などに広まった。
 
 その他には、「道」(EXILE)、「旅立ちの日に…」(川嶋あい)、「ありがとう」「YELL」(いずれも、いきものがかり)「桜ノ雨」(absorb)など、Jポップの人気アーティストの曲が並ぶ。


 今春、伊藤翼君は元気でいれば、友人たちとともに中学校を卒業するはずだった。未来を夢見て、大きくはばたくはずだった。何事にも前向きだったという翼君は、さまざまな困難を乗り越えて、きっと、社会に貢献する人になっていたにちがいない。
 その翼君は、2008年5月、諏訪市のJR中央東線の遮断機のない踏切で、特急スーパーあずさに撥ねられて亡くなった。事故から半年後、踏切には遮断機が設置された。
 友人たちから尊敬され慕われていた翼君が、なぜ踏切事故で突然この世を去らねばならなかったのか、ご両親は今も問い続けている。

 翼君の事故については、
 「踏切事故の現場をたずねて」 http://tomosibi.blogspot.com/2009/07/blog-post.html
 「諏訪市武津踏切、遮断機設置へ」 http://tomosibi.blogspot.com/2008/09/blog-post.html

《参考》

「旅立ちの日に」 (小嶋登作詞 高橋浩美作曲)から

白い光の中に  山並みは萌えて
遥かな空の 果てまでも 君は飛び立つ
限りなく青い 空に心ふるわせ
自由をかける鳥よ 振り返ることもせず
勇気を翼にこめて 希望の風に乗り
この広い大空に 夢を託して

(略)

今 別れの時 飛び立とう 未来信じて 
はずむ若い力 信じて
この広い 大空に

《参考記事》
「卒うた変わる定番 県内中学校、Jポップ上位 」 2011/2/28 10:26  徳島新聞
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2011/02/2011_12988564302.html

2011年2月21日月曜日

JR山田線盆景踏切事故:損保、JR東に損害賠償請求

 2009年10月20日午前7時40分ころ、岩手県宮古市のJR山田線盆景踏切で、乗用車に乗っていた母子が、踏切で列車に衝突して亡くなった。踏切は、当時第4種踏切で、警報機や遮断機はなかった。現場の踏切は見通しが悪く、2006年2月にも、同じような事故が起きているという。

 報道によると、事故後、付近の住民らが宮古市やJR東に安全対策を要望した。その結果、2010年10月、宮古市が全額負担して、警報機や遮断機や、踏切内で取り残された自動車を検知して運転士に知らせる特殊信号発光機が設置された。

 この事故について、亡くなった母子の遺族に保険金を支払った保険会社が、JR東日本に対して保険金の一部の負担を求める訴訟を起こしていることがわかった。
 報道によると、2月18日、この訴訟の第1回口頭弁論が、盛岡地裁(田中寿生裁判長)で行われ、保険会社側は「遮断機や警報機がなかったことが事故の一因になった」として、JR東日本に保険金の4割にあたる3868万円の支払いを求めた。
 これに対して、JR東は、「踏切の設備に瑕疵(かし)はなかった」などとして、全面的に争う姿勢だという。

 盆景踏切の事故については、拙ブログでも取り上げた。
(「JR山田線盆景踏切、事故から1年、遮断機・警報機設置へ」 2010年10月14日http://tomosibi.blogspot.com/2010/10/jr1.html
 踏切周辺の宅地化などが進み、人口が増え通行者も増えているのに、安全対策を見直さないJR東日本の踏切対策に、問題があったのではないかと思った。
 また、この事故以前にも同じような事故がおきており、警報機も遮断機もない踏切が危険であることは分かっていたと思う。

 JR東日本には、踏切の安全対策を再検討して、各地の危険な踏切をなくす努力をしてほしいと思う。

《参考記事》
「宮古の鉄道事故:日新火災保険、JR東を損賠提訴 「安全対策遅れ一因」 /岩手」 【宮崎隆】
http://mainichi.jp/area/iwate/news/20110202ddlk03040007000c.html

「踏切事故 保険金負担訴訟 JR東争う姿勢 」2011年02月19日
.http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000001102190003

2011年2月11日金曜日

ホームの転落防止ドア、設置をいそいで

 8日、国土交通省のまとめによると、全国の14の鉄道事業者が2011年度以降、285の駅でホームからの転落を防ぐホームドア(可動式ホーム柵)を設置することを計画していることがわかった。すべて設置されれば、既設の駅と合わせて783駅となるという。バリアーフリー新法が設置を求める約2800駅のうちの3割弱で整備が進むことになるそうだ。

 今年1月16日、JR山手線の目白駅で、目の見えない男性がホームから転落し、列車に撥ねられて亡くなった事故や、JR山手線新大久保駅で転落した男性を救おうとして日本人カメラマンや韓国人留学生がなくなった事故から10年経つことなどから、大畠国交相が、ホームドアの設置計画を調査を指示していた。
  大畠国交相は「今後、設置基準を検討し、整備が前倒しで進むよう期待したい」と話しているという。
 また、国交省は「混雑駅で整備を進めるか、視覚障害者の施設が近くにある駅でまず設置をめざすのかなど議論を深めていきたい」としている。

 ホームドアは、バリアフリー新法で、1日の乗降客が5千人以上の駅には設置が求められているが、新設の駅には義務付けられているものの、既設の駅では努力義務になっている。
 既設の駅に設置する場合は、ホームドアの重さに耐えられるようホームの補強をしなくてはならなかったり、ドアの位置がさまざまな車両が乗り入れる路線の駅では、ホームドアの設置が難しいとされている。

 しかし、1日の乗降客が75万人という京王線新宿駅では、昨年ホームから男性が他の客に押されて転落し亡くなるという事故が起きている。山手線や京浜東北線など、乗降りする人が多いのにホームの狭いところや、目の不自由な方の利用の多い駅などから、ホームドアを設置したり、ホームの点字ブロックを改善するなどの対策を急いでほしい。

《参考》 「平成23年度以降のホームドアの整備計画」 (国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/common/000134960.pdf
「第1回 ホームドアの整備促進等に関する検討会」の結果について (国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/common/000135244.pdf
「ホームドアの設置状況について」(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/common/000133960.pdf
《参考記事》
「ホームの転落防止ドア、14社285駅で設置予定」 2011年2月8日15時2分 朝日新聞
(永田工、宮嶋加菜子)
http://www.asahi.com/national/update/0208/TKY201102080199.html

2011年2月10日木曜日

トヨタ車、「電子制御に欠陥なし」とアメリカ運輸省報告

 報道によると、アメリカ運輸省は、アメリカ国内でトヨタ自動車の車を運転中に急に加速するという苦情が相次いだ問題をうけて、調査をしていたが、2月8日最終的な調査結果を発表した。2009年8月にアメリカのサンディエゴで、4人が死亡する事故が発生するなど、大きな問題となっていた。

 2010年1月までに、トヨタ自動車は、アクセルペダルが戻りにくくなるなどの欠陥があるとして、約750万台のリコールを行った。2010年2月から3月には、この問題で、アメリカ議会の上下院では、豊田章男社長らを呼んで、公聴会が開かれた。また、トヨタ自動車はアメリカ当局に計5000万ドル近い民事制裁金を支払うことで合意している。

 しかし、アメリカ国内では、消費者から修理後も急な加速があるという苦情が相次いだことから、
アメリカ運輸省は昨年の3月末以降、電子制御システムに問題がないかどうか、アメリカ航空宇宙局(NASA)の協力をえて、調査。
 その結果、電子制御システムの問題ではなく、アクセルペダルの2種類の欠陥が原因だったと発表した。このアクセルペダルについては、トヨタ自動車はすでにリコールを実施しており、苦情があった急な加速は、運転手がブレーキとアクセルを踏み間違えていた可能性が高いとした。

 アメリカ運輸省は、運転手のアクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐため、ペダルの形状や配置のあり方を調査する考えも示した。 また、安全対策として、アクセルとブレーキを同時に踏んだ場合には、アクセルよりブレーキを優先する装置や、事故記録装置を装備することを、すべての乗用車に義務づけるルール改正を検討しているという。

 日本でも、運転中に、アクセルとブレーキを踏み間違えて、運転手などが死亡するなどの事故が、年間7000件、幅広い年齢層でおきているという。交通心理学の研究者たちは、事故の原因を「車の構造」と「人間の心理」から検証し、ペダルの配置が操作ミスを誘発しているとの報告を出しているという。


 単なる運転手のミスとして放置されてきた事故がなぜ起きるのか調査し、事故の原因を明らかにして、日本でも、このような事故を防ぐために、安全対策を検討していくことが必要ではないかと思う。

《参考記事》
『トヨタ車急加速問題 「電子制御に欠陥なし」と米当局』 2011年2月9日11時29分 朝日新聞
 http://www.asahi.com/business/update/0209/TKY201102090047.html?ref=any

《参考》
「クローズアップ現代 見過ごされてきた踏み間違い事故」 2010年10月19日放送 (NHK)
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2951

2011年2月8日火曜日

JR飯山線踏切事故、JR東社長が遺族に謝罪

報道によると、2月5日午後、新潟県津南町のJR飯山線大根原踏切で、JR東日本の社員が誤って遮断棹をあげてしまったため、踏切内に車で入って列車と衝突して亡くなった男性の葬儀が、小千谷市の斎場で営まれた。葬儀には、JR東日本の清野智社長ら幹部が参列した。

5日午前、JR東の清野社長は亡くなった男性方を訪れ、「私どものミスで田村様のかけがえのない命を奪う結果になってしまい、誠に申し訳ございません」と遺族に謝罪したという。
また、清野社長は遮断棹を上げる際の安全確認が十分でなかったとの認識を示し、7日にもJR東幹部と全支社長を集め、運行や設備、トラブル時の対応など、社内ルールの再徹底をはかる方針だともいう。

突然の事故によって、大切な人を失ったご家族はもちろんのこと、古くからの友人や同僚の方々の驚きと悲しみははかりしれない。
また、JRの社員の誘導であれば、だれでも、信頼して踏切内に入り渡ると思う。車を運転していた方は、JRの社員やJRを信頼していただろうと思う。それなのに、家族や友人と最期の言葉をかわすこともできずにこの世を去らねばならなかった思いはいかばかりだろう。

男性の葬儀を行った喪主の男性は、出棺の際、「突然の事故で本人が一番驚き、悔しい思いだったと思う。家族としても別れの言葉すらかわすことなく、本当に心残りだ」と話したという。

JR東日本には今回の踏切事故の原因を調査して、会社の問題点を洗い出し、二度と悲惨な事故が起きないよう、安全対策を講じてほしい。

《参考記事》
「飯山線事故 被害者の葬儀営む」 2011年02月06日 朝日新聞
http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000001102070004

2011年2月7日月曜日

JR東飯山線踏切事故~雪の壁で列車見えず

2月1日、JR東飯山線大根原踏切で、故障した踏切遮断機のバーを上げ下げするJR社員の誘導ミスで、踏切内に入ったライトバンと列車が衝突し、車に乗っていた男性が亡くなるという痛ましい事故がおきた。
鉄道係員の誤りがあったとして、運輸安全委員会は鉄道事故調査官2人を現地に派遣、北陸信越運輸局はJR東日本に文書で警告した。

報道によると、列車の運転士が踏切に入る車に気付いたのは、約20m手前で、当時列車は時速60㎞を出しており、衝突まで約1秒しかなかったことがわかったという。

なぜ、踏切にいたJRの社員は、迫る列車に気付かず、踏切の遮断機のバーを上げてしまったのか。
現場を取材した記者によれば、線路の両脇には、雪が積もり、雪の壁は高さ2.1m、踏切遮断機のバーから踏切内へ2.5mのところまで壁ができているという。踏切から西に95mのところにはトンネルがあり、当時列車はトンネルを通過して雪の壁の間を走り、踏切にきた。
記者が踏切内の中心にたつと、列車が出てきたトンネルが見えるが、JRの社員が立っていたとされる遮断機のバーのところでは、列車が直前まで見えないことがわかった。

列車の接近を社員の目視だけで確認するのではなく、他に確認の方法はなかったのだろうか。踏切の遮断機が故障した際に、見通しの悪い踏切では、もっと人員を配置して、列車の接近を確認すべきではなかったのか。

JR東日本や運輸安全委員会には、今回の事故の原因を十分調査して、同じような事故が起きないように、踏切の安全対策を検討してほしい。

最後になりましたが、事故で亡くなられた方のご冥福を祈ります。

《参考記事》
「踏切内でないと列車確認できず/飯山線事故」 2011年02月04日 朝日新聞
http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000001102040004

「ダイヤ確認不十分/飯山線衝突」 2011年02月03日 朝日新聞
http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000001102030004

2011年2月6日日曜日

コースター事故~徹底した原因調査を

 1月30日、東京都文京区にある「東京ドームシティアトラクションズ」のコースターから、34歳の会社員の男性が転落して亡くなるという痛ましい事故が起きた。

 安全バーは乗客が自分で固定し、従業員が確認することになっているが、固定が不十分なまま、コースターが走行し、男性が8メートルの高さから転落したとされている。事故当時、安全バーが固定されているかどうか確認する作業をしていたアルバイトの女性は、バーが固定されているかどうか手で確認しておらず、「バーは下りているようにみえた」と説明しているという。
 コースターはドイツ製で、毎朝開園前の点検のほかに、毎月1回と年1回の定期点検をしており、今まで事故は起きていないということだ。

 又、報道によると、コースター運行の手順を記した手引書が従業員に配布されていなかったことがわかっており、警視庁は管理運営会社「東京ドーム」の安全管理が徹底されていなかった可能性があるとみて調べている。

 しかし、従業員への安全管理の不徹底や人員の配置の不十分さに事故の原因をもとめて調査を終えるのではなく、コースターの設計そのものを調査すべきだという意見もある。
 人命にかかわるところは、現場の人間に安全確認を任せるのではなく、機械に安全装置をつけるべきではないか。現場の従業員に安全確認を任せれば、安全バーが固定されているかどうか手で押されるのを嫌がる乗客もいたりするだろう。そんな苦情が出たことから従業員は手で押して確認するのをやめたという報道もある。そんな場面をさけるためにも、安全バーが固定されていなかったり、機械が故障していたら走行できない設計にすることが必要ではないだろうか。

 遊園地の運営会社や事故調査にあたる機関には、あってはならない事故を繰り返さないために、事故原因を徹底的に調査して、楽しい休日をもとめて来園した人の命を守る仕組みを真剣に検討してほしい。 

《参考記事》
「安全確保を人の作業に任すな」朝日新聞2月3日「声」欄

「現場任せの安全管理露呈 コースター事故から1週間 管理手法、業界での共有が課題 」
2011/2/5 14:15
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E2E6E2E7878DE2E7E2E0E0E2E3E39191E2E2E2E2?n_cid=DSANY001

2011年2月4日金曜日

総務省、製品事故で迅速なリコールを勧告

 1日、総務省は、消費者の安心と安全を確保する観点から、扇風機から発火したり、スプレー缶へ引火するなどの製品事故について、メーカーなどによる事故調査が終わってから、リコールを始めるまでに時間がかかり、事故が再発していることを重くみて、メーカーが迅速にリコールを実施するよう、経済産業省に指導を徹底するよう勧告した。

 また、報道によると、消費者庁が事故の情報を把握していたにも関わらず、メーカーから報告がなかったことなどを理由にメーカーの名前などを公表していないケースがあるとして、消費者庁に対して、事故情報を迅速に公表することを徹底することなどを勧告した。

 (独)製品評価技術基盤機構に対し、経産省や消防庁は、原因究明調査の進行を管理し着実に実施させること、消防機関と機構が連携し、情報の共有をより一層促進させることを勧告した。

 製品事故を防ぐために、事故情報を受け取る各機関が情報を共有し、すばやく消費者に知らせてほしい。消費者が事故の情報を知ることで、すこしでも、同じような悲惨な事故が防げるかもしれない。

《参考》総務省 報道資料 平成23年2月1日
「製品の安全対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/39746.html#houkokusyo

《参考》当ブログでは昨年末に、朝日新聞の記事を取り上げた。
「重大製品事故 再発24件」 2010年12月31日
http://tomosibi.blogspot.com/2010/12/24_31.html

《参考記事》
「製品事故 迅速なリコール勧告」 2月1日 11時30分  NHK
http://www.nhk.or.jp/news/html/20110201/t10013771151000.html

2011年2月1日火曜日

踏切事故の現場をたずねて~JR西日本阪和線杉本町駅構内

 1月30日、一昨年踏切死亡事故が起きたJR西日本杉本町駅の踏切をたずねた。
大阪の天王寺駅から阪和線の各駅停車に乗り換え、15分ほどで杉本町駅に着く。

 杉本町駅は、駅舎が古く、跨線橋は旧阪和線開業当時の面影を残すという。地上駅のホームは島式で2面あり4線が通る。
 杉本町駅は各駅列車しか停車しない。幅およそ4.5mと狭いホームの横を急行や快速が通過するため、早い列車が通過する側だけ柵が設けられている。
 駅の南北にある踏切は、どちらも警報機・遮断機が設置されている。南側の踏切には、踏切警視の詰め所があり、常駐しているという。
 杉本町駅の東側には、大阪市立大学があり、1日の乗降客は2万人近い。にもかかわらず、駅の東側には出口がなく、駅西側から出て1時間に40分以上も開かない「開かずの踏切」を渡らないと、東側に行かれない。杉本駅付近の踏切では、報道などによると、2006年4月以降4件の事故が起き、3人が死亡、1人が重傷を負っているという。
 余裕を持って出ても、踏切が一旦しまって20分から30分も待たされると、授業や出勤に遅刻することになり、地元住民や学生や通勤の人々から、踏切を解消してほしいという声があがっていた。
また、駅舎も2階になっているため、ホームに行くのに階段を4~5回昇り降りしなくてはならず、障害を持った方々やお年寄りや子供を連れた方には、とても利用しにくいと思う。 

上りホームから下りホームを見る。急行線の側だけ柵がある。

JR阪和線杉本町駅 (2011年1月30日撮影)









 2009年10月8日、朝、7時54分ころ、杉本町駅北側の踏切で、踏切を開くのを待っていた通勤の女性が、遮断機がなかなか開かないので遮断機をくぐって渡り、そこに快速列車に来て、女性は撥ねられて亡くなった。
 事故当時、台風の影響で列車ダイヤが乱れ、開かずの踏切がますます開かない状況になっていたという。多数の人が遮断機をくぐって踏切を渡る中、件の女性も待ち切れずに前の人について入ってしまったらしい。
 事故があった10月は、「JR杉本町駅東口設置推進の会」が、同年3月から始めた駅の改善と踏切の解消を求める署名活動をしていたときで、会の関係者は心配していた悲惨な踏切事故が起きたことに言葉がなかったという。
死亡事故のあった杉本町駅北側の踏切

事故のあった踏切から列車のきた方向を見る。列車が来る方向は駅舎で見えにくい。







 駅北側の踏切は、長さが23,4メートルはあるだろうか。踏切の外側、遮断機に近い方を急行線が走っているため、踏切が開くのを待っていると、目の前を特急や快速がものすごい勢いで通過する。
 駅南側の踏切は、踏切道に線路が複雑に何本も走っていて、驚いてしまった。私は、鉄道の専門家ではないから、踏切の上で、線路が急行線と緩行線に分かれてホームに入っていくのがめずらしいことなのか、よくあることなのかわからない。
 しかし、踏切に何本ものレールが横切っているのをみて、愕然としてしまった。
複線できた線路は、踏切の上で、駅を通過する急行と、ホームに入る各駅列車の線路に分かれる。そのうえに、廃止になって今は使われていない貨物線のレールも加わって、踏切の上には、7線がはしる。したがってレールの本数はその倍近くなる。


駅南側の踏切を走る線路
2009年5月には、踏切を渡っていた車いすの前輪がレールとレールの間のガイドに挟まって動けなくなるというトラブルがあったそうだ。

 車いすの方は遮断機が上がったので、渡り始めたところ、すぐに警報が鳴りだし、あわてて渡り切ろうとしたところ、車輪が挟まってしまったという。当時は介護者もいたが、車いすを動かせず、近くにいた学生らが介護者と一緒に車いすを持ち上げて、踏切警視が半開きにしてくれていた遮断機をくぐって、難を逃れたそうだ。
 その17秒後には、特急「はるか」が通過したが、大きな事故にならずにすんだ。しかし、もし、現場に多くの通行人がいなかったら、介護者だけでは脱出できなかったと思う。
 駅南側踏切には、踏切警視が常駐し、踏切を渡る人を誘導している。踏切の警報が鳴りだしているのに、渡ろうとする人には、ベルを鳴らして注意するそうだ。
 駅北側には、踏切警視がいない代わりに、非常停止ボタンと踏切支障を検知する装置(センサー)が設置され、踏切内に人が取り残されたり、車が取り残された際に、列車の運転士に知らせるようになっている。
 杉本町駅の北側我孫子駅をすぎたあたり、駅手前500mくらいのところまで、阪和線は高架化がすんでいる。にもかかわらず、杉本町駅が高架化がすすまないのは、なぜなのか。
 杉本町駅の南北の踏切と、駅北側数十メートル先にある踏切の3か所の「開かずの踏切」が駅周辺の人々の通行を不便で危険なものにしている。踏切が駅東西の町と人を分断し、人の交流や交通を阻害することになっている。
 
駅北側踏切から大阪方面をみる。近くまで高架になっているのが見える。
30日、事故のあった杉本町駅踏切を案内してくださった大阪市立大学の先生は、
「学生をあずかる身として、学生を危険な目にあわせないようにする責任があります。」 と話してくだった。
 杉本町駅のバリアーをなくし、人にやさしい駅にすること、危険な踏切をなくし、安心して通える安全な大学にすることは、先生方をはじめ、地元の方々の願いだと思う。
一刻も早く、杉本町駅の改善がすすみ、危険な踏切がなくなり、事故がなくってほしいと思う。
 最後になりましたが、杉本町駅の踏切で亡くなられた方々のご冥福を祈ります。