2011年11月16日水曜日

省庁間の連携不足、小麦アレルギーの注意喚起に遅れ

報道によると、(株)悠香(福岡県大野城市)が通信販売した「茶のしずく石鹸」の旧製品に含まれる小麦由来成分によるアレルギーの発症の被害が相ついでいる問題で、消費者庁が2010年10月に、厚生労働省から、被害例の報告を受けていたことがわかった。
しかし、消費者庁が消費者向けに注意喚起したのは、悠香が今年5月自主回収を始めた後の6月に入ってからだ。消費者庁の福嶋長官は、16日の会見で、遅れたことを「反省しなければならない」と釈明したという。

消費者安全法では、省庁や自治体は、消費者庁に対して、商品やサービスに原因のある消費者事故を把握したとき、被害の拡大を防ぐため、消費者庁へ通知するように義務づけている。事故の情報を一カ所に集約して分析、公表することで、被害の拡大を防ぐのが狙いで、迅速な対応がのぞまれている。
福嶋長官は、厚労省からのデータは「発生の日時や場所、商品名がなく、消費者事故の通知なのかあいまいだった。厚労省に詳しい情報の提供を求めるべきだった。(省庁間の)連携を深めたい」と話しているという。

昨年厚労省から通知のあった文書の中には、小麦由来成分を含んだ石鹸を使っていた30代の女性がパンを食べた後、テニスを始めて15分後、目や顔、手が腫れ、血圧低下や腹痛、下痢などの症状があらわれ入院した―などの三つの症例が記されていたということだ。このような命に関わる重篤な症例について、消費者庁の担当者が、報告を受けていながら、厚労省に発生日時や商品名などの必要な情報を確認せず、迅速に注意喚起をしないのは、怠慢としか言いようがない。
長官はじめ消費者庁で働く職員の方々には、消費者保護の行政機関として、今一度、その役割とするべきことを再確認してほしい。

《参考記事》
『消費者庁「茶のしずく」報告見過ごす 注意喚起に遅れ 』
http://www.asahi.com/national/update/1116/TKY201111150764.html

『茶のしずく:省庁連携不足 小麦アレルギーの注意喚起遅れ』
 毎日新聞 2011年11月16日 21時52分(最終更新 11月16日 21時54分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111117k0000m040083000c.html

2011年11月15日火曜日

「茶のしずく」石鹸、重篤な症例66人

報道によると、14日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会で、(株)悠香(福岡県)が販売した「茶のしずく石鹸」の中の小麦由来成分によるアレルギー症状を発症した例が、471人にのぼることが示された。化粧品販売会社の悠香が販売していた「茶のしずく石鹸」は、今年5月、自主回収を決め、販売した約4650万個のうち約150万個を回収したという。悠香と同じ小麦由来成分を使っていた10社も33商品を自主回収している。

厚生労働省が示した症例471人のうち、66人は、救急搬送や入院が必要な重篤な症例で、一時意識不明に陥った例もあった。また、日本アレルギー学会には、1000件を超す症例が報告されているそうで、被害件数は、増える可能性もあるという。症例は、全身の腫れや呼吸困難などで、小麦アレルギーのなかった人でも、アレルギーの原因物質が目や鼻の粘膜などに毎日少しずつ付着することで発症することがあるという。

症状は、問題の石鹸をやめると改善に向かうが、根本的な治療方法はみつかっていない。北海道など13都道府県で、被害弁護団が結成され損害賠償をもとめる訴訟が提起されている。
各地の消費生活相談センターには、14日現在、健康被害の相談が936件寄せられているという。
悠香が自主回収を決めたのは、今年5月で、2009年10月の日本アレルギー学会で被害の報告があってから、1年半余りたっている。その間にも、2010年9月厚労省には、医療機関から症例の報告があり、健康被害を把握している。

しかし、2010年10月以降、悠香がホームページなどで石鹸購入者に注意喚起する際に、症例がでたことが明記されなかったという。そのため、石鹸の危険性が購入者に伝わっていなかったのではないかと思われ、購入者が石鹸の使用を中止しなかったことが、被害が広がった原因とみられる。
今年5月に、悠香が自主回収を決め、商品名が公表されると、各地の消費者センターには、健康被害の相談件数が増え、約900件にのぼった。

石鹸の販売者が購入者に症例などを説明し、具体的に注意を喚起していれば、このような重篤な被害を出さなくてすんだかもしれない。また、厚労省ももっと早く対応すべきだと思う。販売者を信用して購入した消費者に対して、このような事実を正確に誠実に説明することが、会社に対する本当の信用や利益につながると思う。

なお、以下で、診療可能な施設情報や小麦アレルギー情報が掲載されている。
「小麦加水分解物含有石鹸『茶のしずく』を使用したことにより発症する小麦アレルギーに関する情報センター」http://www.allergy.go.jp/allergy/flour/003.html

《参考》(2011年11月16日追加)消費者庁ホームページ
「小麦加水分解物含有石鹸に関する情報」
http://www.caa.go.jp/safety/index10.html
《参考記事》
『茶のしずく石けんで66人重篤 アレルギー症状471人』朝日新聞2011年11月15日
http://www.asahi.com/health/news/TKY201111140569.html
『「茶のしずく石鹸」でアレルギー』NHKニュース 2011年11月15日 18時44分 

放射性物質の拡散、西日本や北海道にも

報道によると、東京電力福島第1原子力発電所の事故で、大気中に放出された放射性物質は、西日本や北海道にも拡散しているという解析結果が日米欧の研究チームによってまとめられ、アメリカ科学アカデミー紀要電子版に発表されることがわかった。
研究では、文部科学省は、汚染の広がりは、長野・群馬県境でとどまったとの見解をしめしたが、以西でも「わずかだが沈着している可能性がある」と指摘しているという。

アメリカ宇宙研究大学連合の安平哲平研究員らの研究チームは、汚染物質の拡散を20キロ四方で計算するシステムを使い、事故後の天候や雨を加味してシミュレーションし、文科省の測定値を補正して3月20日から4月19日までの沈着量を算出した。分布状況は、文科省の観測傾向と一致したが、岐阜県や中国・四国地方の山間部で、原発由来の放射性物質が沈着している可能性が示されたという。また、北海道にも広がりを見せている。
研究チームは、ただちに人体への影響がある量ではなく、除染が必要なレベルではないとするものの、放射性物質が最も多く放出されたとみられる3月19日までのデータがないため、解析の対象に含まれていないため、実際の沈着量は見積もりよりも多めの可能性が高いとしている。

もっとも拡散量が多かったとみられる時期のデータがないため、このシミュレーションの沈着量は少ない可能性があるという。場所によっては、放射性物質が集まり溜まっているところもあるかもしれない。政府は、全国の都道府県でより詳細な土壌の調査と分析をしてほしい。

《参考記事》
「福島原発のセシウム拡散状況、研究チームがシミュレーション」
2011.11.15 Tue posted at: 09:11 JST (CNN) 
http://www.cnn.co.jp/world/30004587.html

2011年11月5日土曜日

非常ボタン未設置の秩父鉄道踏切で衝突脱線事故

  報道によると、11月1日午前11時15分ころ、埼玉県長瀞町の知h支部鉄道樋口駅~野上駅間で、踏切内に止まっていた大型ダンプカーに普通列車が衝突、脱線し、4名が軽傷を負った。列車は衝突して先頭車両が脱線した。ダンプカーも衝突のはずみで、横転した。

 秩父署によると、大型ダンプカーが踏切内で動かなくなり、衝突するまでに1,2分あったとみられている。ダンプカーの運転手が非常ボタンを探しているうちに列車と衝突したという。
秩父鉄道では、2009年12月にも、深谷市長在家で、交差点で起きた事故のはずみで踏切内に乗用車が入り、脱輪、乗用車と普通列車が衝突するという事故が起きている。このときは、乗客250人にけが人はなかった。

 秩父鉄道によると、埼玉県内にある同社の踏切311か所のうち、運転士に踏切の異常を知らせる非常ボタンと障害物を検知するセンサーの両方が設置されている踏切は4カ所で、センサーだけは15カ所、非常ボタンだけは1カ所だという。
  同県内の 他の鉄道事業者の非常ボタンの設置状況は、西武鉄道は116カ所、東武鉄道は374カ所の踏切すべてに設置、JR東日本では、114か所のうち112カ所に設置されている。

 秩父鉄道は、単線の区間が多いため、非常ボタンやセンサーの設置されている踏切が少ない。しかし、秩父鉄道の周辺は宅地化が進み、人口や交通量が増えているところだ。鉄道事業者や行政は、周辺の環境の変化や踏切の利用状況の変化に応じて、踏切の安全対策を講じるべきだと思う。

 幸い、今回はけがをした人も軽傷だという。今後、悲惨な踏切事故を起こさないために、事業者や行政には早急に対策を検討してほしい。

《参考》拙ブログでは、以前にも、秩父鉄道の踏切事故について取り上げた。
「秩父鉄道の第4種踏切~事故をくりかえさないために 」2011年7月21日
http://tomosibi.blogspot.com/2011/07/4.html
《参考記事》
「鉄道事故:列車とダンプが衝突し5人けが--埼玉・秩父鉄道」毎日新聞埼玉2011年11月2日
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2011/11/02/20111102ddm041040207000c.html
「長瀞の踏切事故:09年に同様事故 非常ボタン、311カ所中5カ所のみ/埼玉」毎日新聞埼玉2011年11月3日
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20111103ddlk11040283000c.html

なお、運輸安全委員会では、事故調査を開始している。
同委員会ホームページ「鉄道事故インフォメーション」
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail.php?id=1804