2012年12月16日日曜日

JR東日本が再発防止策を検討~本庄の踏切事故

 11月24日、本庄市のJR高崎線の踏切で、踏切内の男性を助けようとした女性と男性の二人が列車に撥ねられて亡くなった。報道によると、この事故をうけて、12日JR東日本の冨田哲郎社長は、踏切事故の再発防止策を検討していると話した。

 JR東日本によると、事故当時、近くを走る列車に、踏切内の異常を知らせる非常ボタンは使われていなかったという。そのため、通行量の多い踏切周辺でチラシを配るなどして、非常時には踏切に入らず、非常ボタンを押すように呼び掛けるキャンペーンを検討。また、非常ボタンのない踏切では設置を進めるという。

 この日、冨田社長は、東京都内で会見し、「大変痛ましい事故。心からご冥福をお祈りする」と述べた。

 同じ12月12日、NHKのクローズアップ現代では、この事故を受けて、踏切事故から高齢者をどう守るのかというテーマで番組が放送された。
 この番組の中で、事故のあった本庄の踏切を見た芳賀繁立教大学教授(交通心理学)が、事故のあった踏切は、危険だと指摘していた。
 放送によると、この踏切は、ボルトがでっぱるなど路面が悪くお年寄りがつまずきやすい、車両の通行が多く歩車分離がなされていない、通行者から非常ボタンが遠く手が届かないので押せないなど、踏切の通行者にとって、危険であることが分かった。

 踏切路面の整備や歩道を車道とわけてカラー舗装するなどは、行政の仕事かもしれない。
 踏切の事故を防ぐために、事業者や行政には、注意喚起だけではなく、具体的な対策を講じてほしいと思う。

《参考記事》
繰り返される踏切事故~高齢者をどう守るか~」2012年12月12日NHKクローズアップ現代
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3287.html

「本庄の踏切事故 再発防止策検討」2012年12月13日朝日新聞2012年12月13日
 
http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000001212130004

2012年11月29日木曜日

埼玉県本庄市の踏切事故~早急に事故調査を


 報道によると、11月24日午後3時35分ころ、埼玉県本庄市銀座一丁目の踏切で男性(70歳)と、女性が列車に撥ねられて亡くなった。踏切は、JR高崎線の踏切で、列車は高崎発小田原行きの上り特別快速列車(10両編成)だった。

 本庄署は、列車の運転士の目撃情報から、女性が男性を助けようとして下りていた遮断機をくぐって踏切内に入り、事故に巻き込まれたとみて調べている。

 同署の調べによると、列車の運転士は走行中、前方で踏切内にしゃがんでいる男性を発見し、ブレーキをかけた。その直後に、女性が遮断機をくぐって男性にかけより、背後から男性の両脇をかかえて線路の外に運び出そうとしていたという。しかし、電車はブレーキが間に合わず二人を撥ねたという。
 運転士は、男性が物を拾っていたようだと話しているそうだ。同署は、女性は男性と面識はないようだが、女性が自転車で踏切の近くを通りかかった際に、男性を助けようとして、撥ねられたと見ている。
 
 現場を見てきた記者によると、この踏切は、第1種で、警報機・遮断機が設置されている。踏切の幅は4~5m、長さ7~8mで、非常ボタンが踏切の2か所に設置されているという。報道された写真を見ると、障害物検知装置も設置されているように見えるが、この装置が作動していたかどうかは確認していない。
 地図を見ると、踏切道には、6方向から道路が入ってきており、入ってくる車両が多い。また、路面にアスファルト舗装を修復したような跡があり、凸凹がある。歩行者用通路のカラ―舗装がされていないので、、車両が多いとき、歩行者は、車両のすぐ脇をとおらねばならず、踏切を通ったお年寄りは危険を感じていたという。

  当時、非常ボタンは押されていなかったそうだ。非常ボタンがあることやその役割があまり、踏切の通行者に知られていないのではないかと思う。もし、亡くなった女性が知っていれば、真っ先にボタンを押したかもしれない。
 
 また、障害物検知装置があったのなら、男性を検知していなかったのかどうか調べるべきだと思う。

 亡くなった女性は、救急車で搬送される途中、救急隊員に男性のことを心配していたという。男性は、間もなく死亡が確認され、女性も搬送されて病院で手当てを受けたが、亡くなった。

 なぜ、男性が踏切内に残されたのか、警報が鳴るのが短くないか、遮断機が下りてくるのが早くないか、センサーは働かなかったのか、など調べてほしい。そして、事故の再発防止に役立ててほしい。

 最後になりましたが、亡くなられたお二人のご冥福をお祈りいたします。

《参考記事》
「踏切の男性に駆け寄る姿目撃 60歳女性、助けようとして犠牲に」産経新聞2012年11月25日
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121125/dst12112501230001-n1.htm

2012年11月14日水曜日

シンドラー社製エレベーター、緊急点検へ

 
 
 10月31日、石川県金沢市の「アパホテル」のエレベーターで、従業員の女性が戸が開いたまま上昇したエレベーター(シンドラー社製)のかごと乗り場に挟まれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。

 この事故をうけて、国土交通省は、エレベーターの所有者に報告を求める形で、シンドラー社製のエレベーターを緊急点検するよう、特定行政庁に対して、通知した。

 点検は、すべてのシンドラー社製エレベーター(約8200台)を対象とし、緊急性の高いエレベーターから優先的に実施することにしている。特に事故機と同型の巻上げ機を有するエレベーター84台は20日以内に、点検を実施して報告するようもとめた。

 点検内容は、戸開走行の発生に関連すると考えられるブレーキ、制御器を中心に…方法を示し、詳細な点検を行うこととしている。

 また、国土交通省は、既設のエレベーター約70万台について、安全装置を二重にするよう、自治体を通じてエレベーターの設置者に求めていく方針。

 
 エレベーターの会社や設置者は、同じような事故が2度と起きないよう、安全対策や保守点検に努めてほしい。
 
《参考》 国土交通省ホームページ

 ■シンドラー社製エレベーターの緊急点検(概要)
  http://www.mlit.go.jp/common/000229887.pdf

 ■緊急点検通知文
  http://www.mlit.go.jp/common/000229888.pdf

 ■シンドラー社製エレベーターについて緊急点検する項目・内容
  http://www.mlit.go.jp/common/000229889.pdf

《参考記事》
「シンドラー社製エレベーター緊急点検 来週から 国土交通省」朝日新聞デジタル2012年11月9日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211090378.html
「既存エレベーターも対策 国交省、二重安全装置 要請へ」朝日新聞デジタル2012年11月6日
 http://digital.asahi.com/articles/TKY201211060728.html
「エレベーター、安全守るには」朝日新聞デジタル2012年11月12日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211120250.html

2012年11月13日火曜日

万里の長城遭難事故~もとめられる安全対策の検証

  11月5日、世界最大の建築物「万里の長城」で、日本人観光客4人と中国人添乗員の計5人が遭難し、日本人3人が死亡したと伝えられた。
 「万里の長城」は中華人民共和国にある世界遺産で、東は河北省、渤海湾の山海関から、西は甘粛省の嘉峪関にいたる。紀元前に、秦の始皇帝が、北方民族の侵入を防ぐため、修復、連結したといわれている。

 今回、日本人が参加したツアーは、一般の観光ツアーと異なり、長距離の山歩きをするトレッキングを目的としていた。旅行会社が参加者を広く募集してガイドが引率する「ツアー登山」だった。ツアー会社の説明によれば、7日間で100kmを歩く計画で、標高800mから1000m前後の山岳地帯を毎日15km前後、5~8時間かけて歩く行程だったという。
 参加していたのは、76歳から59歳の男女4人で、かなりの登山経験がある人だったようだ。引率は、現地の中国人ガイドと、企画した旅行会社の社員で中国人の添乗員だった。

 事故は、ツアーの6日目に起きた。歩きだして間もなく降り始めたみぞれが雪となり、次第に強くなり、午後4時ころには吹雪になった。強風に見舞われて、自力で下山できなくなり、現地ガイドが救援を求めて下山、日本人の参加者と添乗員の計5人は、簡易テントで救助を待った。しかし、3人の日本人が亡くなった。体温が奪われて身体の機能が低下する低体温症が原因だと見られている。
 現地では、3日夜から52年ぶりといわれる大雪に見舞われた。ツアーを企画した東京の旅行会社「アミューズトラベル」では、この時期、現地では夜間零度以下になることは把握していたが、セーターやフリース程度の服装で足りると判断していたという。また、現地社員がルートの下見をしていなかったことを認め、謝罪した。また、アミューズトラベルの担当者は、現地の中国人ガイドがどういう登山経験を持った人なのか会見では答えられず、今回のツアーが現地の旅行会社任せになっていた疑いがある。
 
  アミューズトラベルは、2009年にも、ツアー登山の一行18人が遭難するという事故をおこしている。ツアー客7人とガイド1人が亡くなった事故で、北海道の大雪山系トムラウシ山を、2泊3日で、約40キロを縦走する行程だった。しかし、暴風雨の中、下山を強行し、低体温症に陥った。
 2010年3月、観光庁はアミューズトラベル社に、対応策の検証などをもとめて厳重注意、同年12月には51日間の業務停止命令を出した。

 このトムラウシ山の事故を受けて、日本旅行業協会などの業界団体は登山やトレッキングのツアーに関して旅行業者向けのマニュアルを策定し、事故の再発防止に取り組んできた。
  だが、なぜ、今回、また遭難事故をおこしてしまったのか。ツアー会社の安全対策などを十分検証してほしい。
 最後になりましたが、亡くなられた方々のご冥福を祈ります。

《参考記事》
ツアー内容、現地任せ 主催者、09年に続く事故」朝日新聞デジタル2012年11月6日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211050642.html

2012年11月1日木曜日

あってはならないエレベーターの戸開走行事故

 報道によると10月31日午後2時55分ころ、金沢市広岡にある「アパホテル金沢駅前」で、清掃会社従業員の女性が、突然動き出した業務用エレベーターのかごと上部の枠に体を挟まれて亡くなった。

 報道によると、亡くなった女性は、帰宅するために4階から地下1階に下りるため、エレベーターを待っていた。扉が開いたので、乗りこもうとしたら、急にかごが上昇し、つまづいて上半身だけがかご内に転倒した。そのまま、上昇を続けたかごとエレベータ入口上部の枠に体を挟まれた。かごは、女性の上半身が中に入ったまま上昇したという。女性は、45分後に救出されたが、病院で死亡が確認された。

 シンドラー社製のエレベーターでは、2006年、港区で、エレベータの扉が開いたままかごが上昇し、下りようとしていた高校生がエレベータに挟まれて亡くなるという事故が起きた。この事故の後、高校生の遺族などの要請も受けて、国土交通省は安全対策としてエレベーターの二重ブレーキの設置を義務付けるなど、安全対策が強化された。
 しかし、二重ブレーキは新設のエレベーターについて適用されるもので、既存のエレベータには適用されない。そのため、全国に約70万台あるといわれる既存のエレベーターの安全対策をどうするのかが問題になっていた。国交省は、今年度、既存のエレベーター数千台について、改修費の3分の1を補助する取り組みを始めたばかりだった。

 国交省社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会と、消費者安全調査委員会は、情報を共有して、事故調査にあたるとしているとしている。

 6年前に、同じような戸開走行事故を起こしていたシンドラー社製のエレベーター。高校生の大輔さんを事故で亡くした市川正子さんは、かねてから、息子さんのエレベーター事故の調査が不十分だと語っていた。事故調査が不十分であれば、事故原因や事故の背景の分析があいまいになる。それで、同じような事故を防ぐための十分な事故の安全対策を講じることができたのだろうか。

 市川さんや、パロマのガス湯沸かし器の事故で息子さんを失った上島さんらの活動が実って、消費者庁や消費者安全委員会が発足した。
 今度こそ、それぞれの事故調査機関には十分な調査活動を行って、事故原因を解明してほしい。そして、同じような事故が決して起こることのないよう、安全対策に生かしてほしい。

《参考記事》
「エレベータ急上昇、清掃員挟まれ死亡」朝日新聞デジタル2012年10月31日
http://digital.asahi.com/articles/OSK201210310076.html

2012年10月29日月曜日

阪急宝塚線の踏切で事故、73歳の女性が死亡

 報道によると、22日午後2時10分ころ、大阪府豊中市服部元町にある阪急宝塚線北ノ口踏切で、73歳の女性が、普通列車(8両編成、雲雀丘花屋敷発梅田行)に撥ねられ、搬送先の病院で亡くなったことがわかった。

 踏切は長さ8.6m、幅2.2mで歩行者専用、警報機・遮断機が設置されているという。女性は呼吸器系の病気を患っており、外出時には、酸素ボンベを乗せたキャスター付きの台車を引いていた。この日も台車を引いて踏切を渡っていたという。渡っている途中で遮断機が下りてしまい、踏切内に取り残されたとみられている。女性の夫によると、女性は踏切近くの服飾店に行く途中だった。

 女性が引いていた台車のキャスターが、レールの間に入って動かなくなったということがないだろうか。私の住む町の私鉄の踏切でも、レールの間に小学生の足が入ってしまい、抜けなくなるということがあったそうで、その後、ここの鉄道事業者は、レールに足が入らないよう、ゴムを敷いて隙間を細くした。
 
 遮断機が開いたと思ったら、すぐに閉まってしまう「開かずの踏切」などでは、上記のような方々は、踏切に入ったら渡るのに時間がかかるから、渡るのがこわいと思う。しかし、踏切を渡らなくては、線路の向こうの商店や施設に行かれないから、開くのを辛抱強く待って、開いたら、急いで渡らねばならないのだと思う。お年寄りが警報機の音にせかされて、急いで渡ろうとして転んだり、レールに車いすの車輪を挟まれたりすることもある。

 また、現場の地図を見ると、列車の来た方角は急なカーブになっており、列車の運転士からは、踏切を渡る女性が見えにくいかもしれない。安全に止まれる距離からは踏切の状況が見えないのであれば、カーブのもっと手前から、踏切の状況がわかるようにすべきではないだろうか。

 新聞のニュースだけでは、女性が亡くなった踏切の細かな状況は定かではないが、この女性のように台車を引いたり、車いすに乗った方やベビーカーを押して踏切を渡る方が、安全に渡れるよう、対策を講じてほしいと思う。

《参考記事》
「73歳女性はねられ死亡 阪急宝塚線」毎日新聞 10月22日(月)21時29分配信【石戸諭】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121022-00000091-mai-soci

2012年10月14日日曜日

東電原子力改革監視委員会、初会合開く

 10月12日、東京電力は、原子力部門の改革を監督する第三者委員会「原子力改革監視委員会」の初会合を開いた。 
  先月11日、東京電力は、社外の専門家による第三者委員会を立ち上げ、福島第一原発事故の反省を踏まえて、原発の安全対策を強化し、廃炉や除染技術を向上させることにした。
 第三者委員会のメンバーには、アメリカ原子力委員会(Nuclear Regulatory Commission、略称:NRC)の委員長だったデール・クライン氏のほかに、日立製作所の原子力技術者出身で経営コンサルタントの大前研一氏、元名古屋高検検事長で国会事故調査委員会の委員を務めた桜井正文氏らが参加している。

 この第三者委員会の初会合が、12日開かれ、検討テーマを提出した。報道によると、常に最悪の事態を想定して事故防止対策を講じる取り組みを強化することや、人材育成手法の見直しも重点項目に挙げられたという。
 また、東京電力の広瀬直己社長をトップとする特別チーム(原子力改革特別タスクフォース)は、津波や過酷事故の対して、「事前に対処は可能だった」と指摘した。今年6月の社内事故調査報告書をまとめた時点では、東京電力は「結果的に備えに甘さがあったが、できる限りのことは尽くした」としていたが、これを否定する認識を示した。

 原子力改革監視委員会の委員長に選ばれたデール・クライン氏は、日本経済新聞の取材に対して、福島第1原子力発電所の事故の責任は、東京電力にあると指摘、「安全文化を経営トップから組織の隅々まで浸透させねばならない」と答えている。
 クライン氏は、原発事故の安全対策や事故対応について、「規制当局と東京電力は、大きな過ちを犯した」と強調し、「違った対策をとっていれば事故は防げたという事実を受け入れることが重要だ」と指摘した。今後策定される再発防止策の効果を検証するとともに、社員一人一人が「安全に責任を負っている自覚を持つべきだ」とも訴えている。
 
 クライン氏は、また、日本の経産省が、NRCがアメリカ同時多発テロ後策定した安全指針「B5b」()を導入していれば、福島第1原発事故は防げたと断言しているともいう。官民挙げた過酷事故への備えが必要だとしている。
 アメリカでは、電力会社が、事故や運転の情報を共有する業界団体、アメリカ原子力発電運転協会(Institute of Nuclear Power Operations、略称:INPO)がある。INPOは、規制当局の基準を上回る安全策をとりいれているという。クライン氏は、日本にもINPOのような組織が必要だと提案している。

 原子力発電の規制にかかわる官庁や東京電力が国民から信頼を回復し、同じような事故を二度とおこさない組織をつくっていくには、さまざまな改革が必要なのだと思う。時間をかけて、改革に取り組んでもらいたいと思う。

《参考記事》
「東電原子力改革委が初会合 危機対応 米国流を導入」日本経済新聞2012年10月13日朝刊
「原発事故『対処可能だった』東電タスクフォースが見解」朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/TKY201210120529.html
「原発テロ対策『B5b』松永前経産事務次官『記憶にない』」2012.5.16 19:49 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120516/dst12051619500011-n1.htm

2012年10月1日月曜日

消費者事故の調査機関、発足へ

 10月1日、身の周りで起きる製品事故や食品被害の原因を調査する「消費者安全調査員会」(消費者事故調)が発足する。食品による窒息事故やエレベーター事故など、これまで調査機関を持たなかった消費者事故に対応する。刑事責任の追及とは別に、原因を究明して事故の再発防止に役立てるのが目的。

 常設の機関としては、航空、鉄道、船舶の事故を調べる国土交通省の運輸安全委員会がある。新設される消費者事故調では、エレベーター事故、プール事故、公園遊具による事故、誤飲窒息、健康食品中毒、医療・介護施設での事故、エステトラブルなど、運輸安全委員会が担当する対象を除くすべての消費者事故を扱う。

 「消費者安全調査委員会」の委員は、首相が任命、専門家らでつくる「事故調査部会」の調査報告に基づいて事故原因を特定、関係省庁に意見を述べ、首相に措置を求めて勧告できる。
 また、事故現場に立ち入り、証拠を集め、関係者に事情を聴取し、資料の提出を求めることもできる。調査を拒めば、罰則が科すこともできる。被害者や遺族が、事故を調査してほしいと申し立てられる仕組みも整えられた。事務局の機能は、消費者庁消費者安全課に設置される「事故調査室」が担う。

 
  事故の原因を、事故の背景要因までふくめて解明し、事故調査の結果を公表し、事故の教訓を事故の再発防止と安全のために生かす。それが、理不尽に命を奪われた方がたの尊い命をを生かすことだと思う。

 
《参考記事》
「消費者事故調きょう発足 原因究明、問われる実力」日本経済新聞2012/9/30 18:14
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG21051_Q2A930C1CR8000/
「消費者事故調あす発足 エレベーター、食品窒息事故…再発防止」
産経新聞 9月30日(日)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120930-00000062-san-soci

2012年9月22日土曜日

危険な通学路、全国に6万か所

 今年4月、京都府亀岡市で、通学中の小学生や保護者10人が死傷するという痛ましい事故が起きた。その後も、通学路などでの事故が相次いだため、文部科学省、国交省、警察庁は協議会を設置、安全対策について検討を進めた。

 報道によると、9月20日に開かれた協議会の会合では、全国の約2万校の公立小学校などで、通学路の安全性について緊急点検を行った結果が報告された。その結果、安全対策をとる必要がある場所が、約6万か所に上ることがわかった(8月末現在)。

 具体的な問題点として、
・交差点に横断報道がない
・学校の近くは交通量が多いにもかかわらず、歩道が狭い
・信号機のない見通しの悪い交差点がある
・住宅地の生活道路で制限速度を30km以下にする速度規制がなされていない
などといった状況が報告された。

 この報告を受けて、文科省は、全国の自治体に対して、今回の調査で指摘された通学路の改善を要請した。今年12月までに、改善措置について報告するようもとめることにした。

 私が知っている道路にも、通学路であるにもかかわらず、歩道が狭くガードレールがないところもある。また、踏切が通学路になっているのに歩道が狭かったり、車で出勤する会社員の車が多いため、集団登校する児童がなかなか横断できないところもある。このようなところは、児童の横断のために押しボタン式でよいから信号も設置すべきだ。
 スピードを出して、幹線道路の混雑を避けるために生活道路を通りぬけする車が多いところもある。そんなところでは、車がスピードを出して狭い道路を通りぬけて行く。通学路の指定がなくても、児童や生徒、お年寄りが、昼間や放課後行き来する幹線道路から横に入った道路では、速度制限をすべきだと思う。
 今回の緊急点検にもとづいて、国交省や自治体、警察は協力して早急に対策を講じてほしい。そして、幼い子供やお年寄りが、安心して歩ける道路にしてほしい。

《参考記事》
「“危ない通学路”全国に6万か所」NHKニュース 9月20日 17時20分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120920/k10015161821000.html

危ない通学路、全国6万カ所 文科省「交通事故対策を」 朝日新聞デジタル 2012年9月21日
http://www.asahi.com/national/update2/0921/TKY201209200755.html

2012年9月13日木曜日

秩父鉄道脱線事故:事故調査報告書まとまる

 今年8月31日、運輸安全委員会(以下、JTSBと略)は、昨年起きた秩父鉄道の事故についての鉄道事故調査報告書 を公表した。

 同報告書によると、平成23年(2011年)11月1日午前11時14分ころ、秩父鉄道の秩父本線三峰口発羽生駅行きの上り普通列車(3両編成)と、大型ダンプが樋口№3踏切で衝突した。列車の運転士は踏切の約200m手前で大型ダンプが踏切道上で停止しているのを発見し、汽笛を吹鳴したが、間に合わず、同ダンプと衝突、1両目の車両の全4軸が脱線し、踏切から約30m行きすぎて停止した。
 列車には、乗客約40名と運転士が乗車、乗客4名と運転士が負傷した。ダンプの運転手は、降りていたため、けがをしなかった。列車は1両目の前面などが損傷、ダンプは大破した。

 列車の運転士は、半径600mの右曲線を約78kmで運転していたところ、右カーブを通過し終えるあたりで、踏切が見えるようになり、見え始めてすぐの約200m手前で、踏切にダンプが停止しているのが見えた。運転士は、ダンプの運転手が列車に向かって手を振っていることや踏切動作確認灯が点灯していることを確認していた。

 ダンプの運転手は、事故当日の朝、同ダンプがアクセルを踏んでもエンジンの回転数はあがるが、速度が上がらない現象に気付き、荷物を下ろした後、ダンプを会社の整備工場で点検することになっていた。
 ダンプの運転手が、会社の整備工場に向かう途中、同踏切の途中でアクセルを踏んでもダンプが前に進まなくなった。会社が踏切の近くにあるので、ダンプを降りて社員の助けを求めに行こうとしたら、踏切の警報が鳴りだしたので、助けを求めるのをあきらめた。非常ボタン(踏切支障報知装置)を探したが見つからず、ボタンを探している途中で、列車が来るのが見えた。止まれの意味をこめて列車に向かって手を振った。
 遮断かんは、ダンプの後部は降りていたが、前部はダンプにぶつかっていた。また、運転手は、ダンプに備えられていた発炎筒を使うことは思いつかなかったという。

 この踏切には、警報機と遮断機が設置されているが、踏切障害物検知装置と踏切支障報知装置は設置されていなかった。
 秩父鉄道は、交通量の多い箇所や過去の事故の状況などを考慮して、踏切支障報知装置などの設置を計画することを基本としているが、平成23年度までの設置数は、踏切311か所中20か所(うち、踏切障害物検知装置と踏切支障報知装置両方とも設置されているのは19か所)と少ない。
これらを設置するのは、鉄道会社の任意であるとはいうものの、埼玉県内の他の鉄道会社はほとんどの踏切に設置している。自治体などの支援も得て、踏切の安全対策を進めてほしい。

 また、報告書によると、道路と踏切との交角は31度で、踏切道を渡る際には、自転車などは車輪が線路にはさまって、走りにくいこともあるかもしれない。京王線東府中の踏切のような、道路と急な角度で交差する踏切は、歩きにくかったり、車輪がレールの中に入り、危険だと思う。

 
 そして、最後に報告書では、列車脱線事故の「原因」として、
「本件ダンプが本件踏切を通過中にアクセルを踏んでも前に進まなくなり停止していたところを本件運転士が発見し、非常ブレーキを使用したが間に合わず、本件列車が本件ダンプと衝突したことにより、1両目の前台車全2軸が右へ、後台車全2軸が左へ脱線したものであると考えられる。」としている。
 脱線の原因としては、上のように言えるかもしれないが、ではなぜ、ダンプが動かなくなったのか、踏切道の路面や交差角などに問題はなかったのかといったことも、調べる必要があるのではないだろうか。                                                                                                                             
 事故の調査を、事故の再発防止に役立てるため、もっと事故原因に迫った調査が必要ではないかと思う。

《参考》
「鉄道事故調査報告書 Ⅰ 秩父鉄道株式会社秩父本線樋口駅~野上駅間列車脱線事故(踏切障害に伴うもの)」運輸安全委員会 平成24年8月31日
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/report/RA12-6-1.pdf

《参考》拙ブログでは、以下で扱った
「非常ボタン未設置の秩父鉄道踏切で衝突脱線事故」
http://tomosibi.blogspot.jp/2011/11/blog-post.html

2012年8月31日金曜日

「震災関連死」~10都県で1632人に

 
 復興庁が公表した調査によると、福島県内では、「震災関連死」のうち、避難所に移動する際の疲労が、原因の過半数を占めていることがわかった。

 今年3月末時点で、東日本大震災をきっかけとした「震災関連死」と認定された人は、10都県で1632人にのぼった。このうち、福島県は761人、岩手、宮城両県は829人で、3県合計で97%を占めた。復興庁は、この3県の18市町村から1263人を選んで、原因を分析した。

 原因別で、もっとも多かったのは、「避難所生活などでの肉体的疲労・精神的疲労」で、福島県は433人(59%)、岩手宮城両県は205人(39%)だった。
 特に、福島県では、「避難所などへの移動中の肉体・精神的疲労」の380人(52%)と、岩手・宮城両県の21人に比べて非常に多いことがわかった。

 原発事故の後、避難指示が拡大され、移動を繰り返さなくてはならなかったことが、大きな負担になったとみられている。復興庁は、「福島県は他県に比べ関連死者数が多い。原発事故に伴う避難などによる影響が大きい」と分析した。また、東京電力福島第一原発事故のストレスが直接の原因とされたのは福島、岩手、宮城の3県で34人に上っているという。

 原発事故の後、事故の情報が乏しい中、避難を余儀なくされ、避難所の寒さや食料不足に耐えねばならなかった。その上、避難生活が終わり故郷に帰るという展望も持てないまま、疲労を重ねて行けば、体調もくずしかねない。

 避難されている方々が一刻も早く帰郷できることを願うばかりだ。すぐに帰郷できないのならば、安心して生活できるよう、国や東京電力は、避難されている方々に仕事やゆったりとした温かな住まいを提供すべきだと思う。

《参考記事》
「原発事故の心労死34人 震災関連死 避難生活も負担に」朝日新聞デジタル2012年8月21日

徹底した事実の解明を~大津市の中学生の自殺

 
 昨年10月、滋賀県大津市で、いじめを受けていた市立中学2年生が自殺した。
 その後、学校が行った全校生徒に対するアンケートで、同中学校の生徒15人が、自殺した男子生徒が自殺の練習をさせられていたと聞いたと答えていた。
 しかし、男子生徒がいじめを受けていた状況を調査する必要がありながら、大津市教育委員会は、昨年11月の会見では、このアンケートの事実は公表せず、調査も打ち切った。

 市教育委員会は、男子生徒に対するいじめがあったことを認めたが、「いじめと自殺との因果関係は判断できない」として、最終的な判断は民事訴訟の結論を待つ構えもみせている。
 大津市は、再調査をするため、第三者委員会を設置し、委員は遺族側から推薦を受けた尾木直樹法政大学教授ら3人と、大津氏が関係団体に推薦を依頼した専門家ら3人が決まった。
 報道によると、大津市がまとめた第三者委員会についての要綱案では、第三者委員会の調査目的を「自殺の原因を考察すること」などとした。遺族側は、第三者委員会でいじめと自殺との因果関係を明らかにすることを希望したが、市教育委員会側は「裁判所が判断すること」として、最終的な判断については、民事訴訟の結論を待つ構えのようだ。

 協議の結果、要綱案には「いじめの事実を含め、学校で起きたことを明らかにし、自殺の原因を考察する」と明記、いじめの事実解明や学校の対応などを調査するとした。
 また、要綱案では、いじめや自殺の再発防止に向けた提言をまとめることも盛り込まれたという。

 なぜ、自分の大切に育ててきた子が、死を考えるまでに至ったのか、なぜ死ななくてはならなかったのか、ご両親は事実を知りたいと思うにちがいない。
 NPO法人「ジェントルハート」が一昨年、学校で事故にあった本人や子どもが自殺した遺族らに行ったアンケートによると、学校や教育委員会の事実調査が「適切」「ほぼ適切だと思う」と答えたのは、合計7.9%だったという。一方、第三者による調査委員会や調査機関を「必要」「条件が整えば必要」と答えた家族は合計76%にのぼった。

 大切な子どもたちの死を無駄にしないために、事実関係を調査し、二度と同じようなことのないように、いじめと自殺を防ぐ対策を講じてほしいと思う。

 
 
《参考記事》
「弁護士、いじめ経緯調査…大津第三者委」(2012年8月27日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120827-OYO1T00221.htm?from=main1
「いじめ調査、成果に差 自殺解明、各地で第三者委設立」(2012年8月25日朝日新聞デジタル)
http://digital.asahi.com/20120825/pages/national.html
「大津中2自殺 『原因を考察』明記 市第三者委要綱案」(2012年8月21日京都新聞)
 
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20120821000019
「『自殺の練習させられた』生徒が指摘、教委調査せず」2012/07/04 02:00   【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201207/CN2012070301005696.html

2012年8月15日水曜日

二重ローン対策~被災ローン減免制度の周知を

 昨年の東日本大震災後、津波などによって消失した住宅のローン等が残ってしまう問題、「被災ローン」問題が、被災された方々の生活再建にとって大きな負担になっていることが指摘されていた。
 昨年、被災地での法律相談などを通じて、この債務問題が被災者の大きな悩みであることを知った日本弁護士連合会ではこの問題の解決策を各方面に働きかけた。2011年7月、この働きかけを一つの契機に、金融庁、金融機関、最高裁、有識者などからなる研究会が発足した。
 
 研究会での検討の結果、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」が制定され、2011年8月から運用が開始された。
 この制度は、
①被災者の資産事情に応じ、一定の弁済をすれば、残額は免除される
②手元に義援金や支援金のほか500万円の資産を残して、生活再建できる
③保証人も利用できる
④破産などの法的手続きが不要
⑤信用情報に登録されない
⑥利用無料――など
被災者にとってたいへん有益な制度のはずである。

 しかし、この制度を運用する一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会の発表によると、2012年7月末までに、成立に至った件数は43件にすぎないことがわかった。
 被災後1年間に、被災3県に本店を置く地銀・信金・信組で返済条件変更(リスケジュール)された債務は1万6423件にのぼり、重い債務を背負ったほとんどの被災者は、返済条件を変更するリスケジュールをしており、ローンを先延ばしされていることがわかった。つまり、ローンは減免されることなく、元金も利息も満額支払うことになる。

 一方、日銀の金融経済概況によると、被災者への貸し出しは低調だが、預金残高は義援金や支援金などの入金で高い伸びを示し、一部金融機関の収益はV字回復をしているそうだ。
 被災された方々の中には、本来ならば、生活再建に充てられるはずの義援金や生活再建支援金を債務の返済に充てている方も見られるという。全国から寄せられた善意の義援金や、特例法で注入された公的資金が、被災地金融機関の収益の改善に消えているといってもよい。
 
 金融機関は債務者の身近な相談窓口として、また、公的資金を注入された金融機関は社会的責任として、被災者に上記のような減免制度があることを知らせ、積極的に利用することをサポートすべきではないかと思う。
 金融庁は、今年7月24日付で、金融機関に対して被災者に対する被災ローン減免制度の紹介等を求めた。金融庁は、今後も、金融機関が積極的に減免制度を活用しているか監督、指導すべきだ。
 
 被災された方々が平穏な生活をとりもどし、被災地を復興するためにも、①この制度の広報を徹底し、②被災地金融機関は周知活動し、③被災地自治体が積極的に関与するなどの対策が必要となる。
 被災された方々の一刻も早い生活の再建を願うものとして、今後も、このような制度が活用されているかどうか、監督官庁が積極的に金融機関を指導しているかどうか、注視していきたい。

《参考》
「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」
2011年7月 個人債務者の私的整理に関するガイドライン研究会
http://www.kgl.or.jp/guideline/pdf/guideline.pdf

《参考記事》
<私の視点>「二重ローン対策 被災者に減免制度知らせよ」
(津久井進日弁連災害復興支援委員会副委員長)2012年8月11日付朝日新聞オピニオン欄

2012年7月31日火曜日

被曝隠し対策、防護服に「確認窓」

報道によると、2011年12月、東京電力が福島第一原子力発電所事故の収束作業を請け負った建設会社が、警報機付き線量計(APD)を厚さ数ミリの鉛のカバーで覆って被曝線量を少なく見せかけていた問題で、東京電力は、胸の部分にビニール製で透明な「確認窓」のある防護服を導入すると発表した。10月から導入する。線量計に鉛カバーをつけるなどの不正があった場合に、外部から確認できるようにするものだという。

原発作業員は、年間の被曝の限度が決められていて、一定量被曝すると雇い止にされることがある。そのため、下請けの建設会社は放射線を遮る鉛のカバーで作業員の線量計を覆わせていた。
この問題は、厚生労働省が労働安全衛生法違反の疑いがあるとみて、調査を進めている。また、福島労働局などは、7月21日に第一原発内の関係先をたち入り検査した。

新たな作業服は、1日の被曝量が3ミリシーベルトを超える作業に携わる者に着用させるとしている。又、同様の不正がないかどうか、同原発で作業を請け負っている他の業者を調査することも決まっている。

政府や東京電力は、作業員の被曝の実態を解明して、今後の安全対策を講じてほしい。

《参考記事》
「被曝隠し対策、防護服の胸元透明に 東電10月から」2012年7月31日朝日新聞デジタル
ttp://digital.asahi.com/articles/TKY201207310774.html

2012年7月29日日曜日

「命の現場」の視点~柳田邦男氏のことば

今月16日、名古屋市内で、今後のエネルギー政策について、政府の第3回意見聴取会が開かれた。発電量に占める将来の原発比率について、政府が国民の意見を直接聞くものだが、発言者の中に中部電力の現役の原発担当の課長が含まれていた。

報道によると、中部電力の課長は、個人としての意見と断りながら、
「福島第一原発事故で放射能の直接的影響で亡くなった人は一人もいない」「原発をなくせば経済や消費が落ち込み、日本が衰退する」と述べ、「(政府)は、原子力のリスクを過大に評価している」とのべたという。
たしかに、直接放射能に影響で誰かが亡くなったという報道は見聞きしない。しかし、直接的な死者数では、今回の原発事故の影響をとらえることができないのではないだろうか。
原発事故によって、大量の放射性物質が放出されたために、周辺の住民や病院の患者や福祉施設に入所する人たちが、緊急に避難させられた。そして、県や自衛隊や警察による搬送中だけでも、高齢の重症患者15人が亡くなっているという。

又、復興庁の震災関連死に関する検討会の調査では、福島県内の災害関連死者数は、今年3月末現在で761人にのぼる。そして、その多くが原発事故による避難者とみられている。
避難所への移動中の肉体的・精神的疲労や避難所における生活の肉体的・精神的疲労が、死亡原因として圧倒的に多いことがわかっている。
このような死亡者数という明らかになった数字だけでは、その被害の実態は把握できないだろうと思う。住み慣れた町や村を離れて、遠くの慣れない土地で暮らすストレスや将来への不安ははかりしれないものだ。
発言した中部電力の課長には、この被害の現場に身をおいて問題を直視しようとする発想がないと、柳田邦男氏は指摘する。柳田氏は、政府の福島第一原発事故調査委員会やJR福知山線脱線事故調査報告書の検討会の委員の一人として、事故調査にあたってきた。
事故から1年以上たっても、避難生活を余儀なくされている人は、約16万人にのぼるという。柳田氏は、その避難している人の一人がもし自分の親だったらと、被害に遭っている人々に寄りそう潤いのある目を、官僚や公共性の強い企業人には持ってほしい、そうしないと国民の命を守ることはできないと訴える。
そして、柳田氏は「原発はプラントの安全性だけで成り立つのではない、地域の人々の命や生活の安全を不可欠の条件とする社会システムなのだという意識」が、電力会社には希薄なのではないかともいう。
住民や被害者の視点から、原発の安全性を徹底的に検証してこそ、政府や電力会社は国民の信頼を得られるのだと、気づいてほしい。
《参考記事》
○「『命の現場』の視点で検証を 柳田邦男」毎日新聞 2012年07月23日 東京朝刊6面
○「死因最多は『避難生活の疲れ』 震災関連死の調査公表」2012年7月13日03時00分朝日新聞http://digital.asahi.com/articles/TKY201207120671.html
○「また電力社員が発言 名古屋聴取会」2012年7月17日 東京新聞朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012071702000092.html

2012年7月27日金曜日

中国高速鉄道事故~事故の記憶の風化を防げ

2011年7月23日夜、中国浙江省温州市で、北京発福州行きの高速鉄道が、雷雨のため高架上を徐行運転していた杭州発福州行きの高速鉄道に追突した。高速鉄道は前の列車と合わせて6両が脱線し、後ろの列車は4両が高さ2~30mある高架橋から転落した。

中国政府の発表では、死者は40人、負傷者は172人とされている。報道によると、中国政府は、事故の調査結果の中で、運行システムに安全上の問題があったことをみとめた。また、鉄道建設を急ぐあまり、工期を短縮し、安全にたいする責任が徹底されていなかったと指摘しているという。

しかし、現場からは事故の痕跡が消され、そばの空き地は自動車教習所にかわり、追悼式典なども行われないなど、事故の記憶が風化されようとしているようだ。
温州南駅操車場には、事故を起こした車両の残骸が積まれて放置され、車両の中には、事故当時の新聞や弁当箱などが散乱しているままだという。
十分な「事故原因の検証」のためとして、事故現場から運ばれたものの、検証もされずに放置されているのかもしれない。

泥まみれの事故車両の残骸に、事故の記憶を押しこめて、事故原因の検証を行うことなく、鉄道建設を押し進めるなら、また同じような事故が起きる。しかし、それは、事故の被害者や遺族がもっとも恐れることだ。中国政府には、二度と悲惨な事故を起こさないよう、安全な鉄道をめざしてほしいと思う。

《参考》 昨年の拙ブログ記事
「中国高速鉄道事故~徹底した事故調査と情報の公開を」
《参考記事》
「中国、車両放置・追悼式せず…高速鉄道事故1年」(2012年7月23日08時16分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120723-OYT1T00213.htm

2012年6月30日土曜日

JR越後線第2下原踏切~新潟地裁の判決

  2010年8月、JR越後線の第2下原踏切で、近くに住む小学校5年生の男児が警報機・遮断機のない踏切で、列車に撥ねられて亡くなった。
2010年8月 事故直後の第2下原踏切 路面が悪く停止線もない
2010年8月 事故直後、踏切線路わきにあった背の高い草は刈られた
線路に近付いて、列車のきた西中通方面を見る

  この踏切は、音声で注意を促す装置が壊れていたり、停止線が書かれていない、男児のいた方からは草が高く伸びていて列車の見通しが悪いなど、列車の接近が分かりにくかった。また、この踏切では、平成4年にも畑仕事から帰る途中の女性が撥ねられて亡くなるという事故が起きており、付近の住民から、安全対策をのぞむ声があった。
 
  2011年7月、亡くなった男児の両親は、JR東に対して、踏切に列車の接近を知らせるなどの設備があれば男児は亡くなることはなかった、踏切の保安設備に瑕疵があったとして、損害賠償を求める裁判を起こした。
 報道によると、 この裁判の判決が、6月28日、新潟地方裁判所(三浦隆志裁判官)で言い渡されたが、判決では、「警報機などがなくても、踏切としての機能を全うしえた」として、原告の請求を棄却した。

  判決では、「汽笛などから列車の接近を知ることができた」、現場の見通しが悪いことについては「線路の手前まで進めば列車を目視することは十分可能」とした。
生い茂った草で列車が見えなくても、踏切の中に入り、線路に近付けば列車が見えるとしたことは、驚くべき判決だといえる。

  おい茂った背の高い草で列車が見えないからと言って、線路の手前まで近付いて安全確認しようとして、もし列車がすぐ近くまで来ていれば、列車に撥ねられてしまう。そんな危険な安全確認を、親は子どもにしなさいと言えるわけがない。裁判官は停止線(事故当時はなかった)から中がわに入り、踏切の中に入るということが、危険だと想像できないのだろうか?

  また、最近は、ロングレールなどの使用で、列車の走る音が静かになった。がたんがたんというレールのつなぎ目の音が少なくなったので、ホームにいても列車の接近に気付かないこともある。
だから、音だけで、列車の接近を判断するのではなく、確実に接近を知るために、踏切には何らかの警報器が必要だと思う。

  一方、男児が亡くなった事故から、約一年後の2011年7月、事故のあった第2下原踏切に警報機と遮断機が設置され、停止線も引かれた。線路に対してななめだった踏切道も、線路に対して直角につくり直され舗装された。
2011年7月、警報機や遮断機が設置され路面も整備された
2011年11月30日撮影
  国土交通省の省令では、踏切道の安全の確保について、
「第40条踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という)の安全かつ円滑な通行に配慮したものであり、かつ、第62条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。」
62条 第1項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。 」(「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」平成13年国土交通省令第151号)と定めている。
  つまり、少なくとも、踏切には通行人に列車の接近を知らせることのできる設備を設置しなくてはならないということだ。

  危険な踏切道において、鉄道と道路通行者の安全を確保するためには、列車の運転士に対しても、通行するものに対しても、二重三重に事故を防ぐための対策がとられなくてはならないと思う。

  第2下原踏切の周辺は、宅地化が進み、近くには集会所や商店などがある。踏切は生活道として、住民や児童・生徒が日常的に使っている。そういった鉄道の周辺の変化を、鉄道事業者は把握して、踏切の安全対策をもっと早く検討・実施すべきだったのではないだろうか。
そして今回の裁判では、裁判官は、踏切の危険性を知りながら、事故で男児が死亡するまで踏切保安設備の設置と改善を図らなかった鉄道事業者の怠慢を裁くべきだった。

  新潟県内には、JR東新潟支社の踏切が850カ所か所ある。そのうち、警報機・遮断機のない第4種踏切はまだ71カ所あるという。国交省の調べでも、第4種踏切は、警報機・遮断機のある第1種踏切に比べて事故の起きている割合が高い。早急に、安全対策を講じてほしいと思う。

《参考》
拙ブログでは、第2下原踏切の事故について、以下のページでとりあげた
「踏切事故の現場をたずねて~新潟県柏崎市JR越後線第2下原踏切 」
http://tomosibi.blogspot.jp/2010/11/2.html
小学5年生が亡くなった警報機・遮断機のない踏切~柏崎市JR越後線
http://tomosibi.blogspot.jp/2010/09/5jr.html

《参考記事》
「柏崎の踏切男児事故死:損賠訴訟 JRへの損賠請求棄却−−地裁判決 /新潟」
毎日新聞 2012年06月28日 地方版
http://mainichi.jp/area/niigata/news/20120628ddlk15040016000c.html

「踏切に欠陥認めず JR事故訴訟」朝日新聞新潟版2012年06月28日
http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000001206280004

2012年6月19日火曜日

JR東大糸線豊科踏切、警報機・遮断機設置へ

  2008年3月30日、JR東大糸線豊科駅近くの保健所裏踏切で、自転車で踏切を渡っていた男性が特急スーパーあずさに撥ねられて亡くなった。事故の原因は分かっていない。男性が列車の接近に気がつかず踏切内に入ったとされている。特急の運転士が男性に気がついて、非常ブレーキをかけたが、間に合わず、男性を撥ねたという。

 事故のあった3月、JR東はダイヤ改正で、スーパーあずさの大糸線乗り入れを始めた。しかし、住民の中には、スーパーあずさの乗り入れが十分周知されていなかったのではないだろうか?走る音も静かで、車体の色も薄紫のあずさは風景に溶け込んで美しい。しかし、踏切を通行する人は、この列車の接近に気付きにくかったのではないだろうか?また、列車の来た方向には、電柱やフェンスがあって、列車が来るのが見えにくかったのではないかと感じた。

 事故の後、踏切の路面が整備され、停止線が書かれるなど、踏切道として改善された。
踏切からスーパーあずさの来た方向を見る。   (2009年4月5日撮影)
   この事故から4年3カ月たって、ようやく保健所裏踏切に警報機、遮断機が設置されることになった。亡くなった男性の遺族が、踏切に行ってみたところ、設置工事をしていることがわかった。
 線路わきで警備をしている警備員にたずねたところ、「この踏切は危険だから、遮断機や警報機をつけることになった」と話していたという。

 鉄道事業者から踏切事故の遺族に、踏切が改善されるという連絡が来るわけではない。いつも、現場の踏切がどうなったかと、注意して見ていないと、改善されたかどうかは、わからない。
 しかし、大切な人が亡くなった場所に何度も行かれる人ばかりではない。遺族が、踏切から遠くへ転居してしまうこともあるし、何よりも大切な人が亡くなった悲惨な事故の現場には、なかなか足を運べるものではない。辛い記憶がよみがえるからだ。
 だから、踏切が改善されたかどうか、何度も足を運ぶことは辛いことである。でも、遺族は大切な人が亡くなった事故の原因等が分析されることで、少しでも、同種の事故の再発防止に役立ったかどうかを知りたい。

 事故調査がされないので、どんなことが原因で踏切内にいて亡くなったのかもわからないのに、踏切内に止まっていたことだけで、踏切通行者が列車の往来を邪魔し、危険だとされ、列車往来危険罪で書類送検されることもある。しかし、それは、一方的すぎないかと思う。

 下のような踏切の写真をみると、路面が悪いことがわかる。線路があるので踏切の中央は盛り上がっているし、自転車で路面の悪いところにつまづいて、動けずに立ち止まっていたら、列車が来てしまったのかもしれない、などと想像することもできる。

 この踏切は危険だから、遮断機や警報機を設置するというなら、もっと早く鉄道事業者に対策をとってほしかったと、恨みがましく言いたくなる。
 2008年には、3月、5月、6月と、JR東中央線でスーパーあずさが関係する踏切事故が続いた。いずれも、遮断機のない踏切で、通行者が列車の来る直前に踏切に入ってきたとされている。しかし、なぜ、同じような事故が続いたのか、航空・鉄道事故調査委員会(運輸安全委員会の前身)では事故調査はされていない。

   鉄道事業者は一方的に通行者に事故の原因を求めるのではなく、踏切事故の原因を十分調査して、同種の悲惨な事故を防ぐ対策に積極的に取り組み、安全な鉄道をめざしてほしいと思う。

2008年3月 事故直後の保健所裏踏切、 路面が凸凹している。警報機・遮断機はない
(写真提供:市民タイムス)

路面が整備され、ポールも設置された保健所裏踏切  (2009年4月5日撮影)

遮断機や警報機を設置する工事がすすんでいた 警報機にはまだ、カバーが付いている。
遮断棹はまだ付いていなかった。  (2012年6月10日遺族撮影)

2012年6月8日金曜日

東京都、スカイマークに抗議~苦情受付窓口で

  
報道によると、東京都は、航空会社のスカイマークに対して、同社が乗客に対して、機内で苦情がある場合には、自治体が運営する消費生活センターに連絡するよう呼びかけていることについて、「会社に代わって苦情を受け付けるかのような記述は、到底容認できない」などと抗議する文書を送った。

同社は、機内でのサービスの考え方について、5月18日から機内の座席前のポケットに「サービスコンセプト」という文書を入れて、乗客に理解をもとめていた。この文書の中で、同社は、客室乗務員は保安要員だとして、サービスの簡素化について理解をもとめようとしていたが、
「機内での苦情は一切受け付けません。ご不満のあるお客様は、『スカイマークお客様センター』あるいは、『消費生活センター』などに連絡されるようお願い致します」と記していたという。

これに対して、6月5日、東京都の消費生活センターは、「消費者からの苦情は、企業みずからが責任を持って対処すべきだ」として、スカイマークに抗議する文書を送った。
この中で、東京都は、
「全国の自治体が設置している消費生活センターが、会社に代わって苦情を受けつけるかのような記述は到底容認できない。」として、機内の座席に置いてある文書をすみやかに回収すること、スカイマークが責任をもって対処すること、新聞への掲載などを通して周知することなどをもとめている。

これに対して、同社は、問題の文書をすべて回収し、「消費生活センター」という文言を削除して、文書の内容を見直すことにした。東京都は、「誤解を解くため、スカイマークには文書の修正だけでなく、誤った点を都民や国民に広く知らせてほしい」としている。
一方、6日、福嶋浩彦消費者庁長官も、「自社のサービスへの苦情を公的機関に振り向ける姿勢は容認できない」と話し、同社に回収を要請した。

本来、企業がまず、みずから、その場で対処すべき利用者からの苦情を、公的機関に押し付けるような同社の姿勢には驚いた。
同社がこの文書を回収し、文書をつくり直すのは当然のことだ。そして、利用者の安全と信頼にこたえるよう、同社は経営姿勢や安全対策を点検すべきだと思う。

《参考記事》
「東京都 スカイマークに抗議文 」NHK 65 2027  http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120605/k10015628361000.html
「スカイマーク 抗議受け文書見直し」NHK 66 2250http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120606/k10015658011000.html
「スカイマークが文書回収へ / 苦情窓口めぐる抗議受け」 佐賀新聞2012年06月07日 01時53分 
「スカイマーク 国交省に改善計画書」NHK 6月5日 23時45分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120605/k10015630961000.html

2012年6月7日木曜日

広島・長崎二重被曝~急がれる実態の把握

報道によると、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館の調査で、アメリカの原爆投下により、広島と長崎で二重に被爆した可能性のある人が307人いることがわかった。

 同館は、同館に寄せられた被爆体験者の手記約13万3千人分をコンピューターで分析した結果、これまで、被爆地として広島と長崎両方を挙げた人が約160人いるとしていた。
しかし、今回、同館が、新たに寄せられた手記を分析、精査した結果、二重被曝の可能性がある人が307人にのぼることがわかった。今後も詳しい調査をして、数を確定するという。

 広島と長崎は直線でおよそ300km離れている。二つの都市に共通する点は、造船所や兵器工場などが多く、戦前は、日本の重要な軍事拠点であったことである。
 そのため、戦前、物資が欠乏してくると、これらの工場で働く人々は、この二つの都市の間で転勤や出張をしたり、避難したりしていた。また、長崎の学校に入学などしていた人が、広島に帰省する、または広島で被爆後、長崎の学校などに戻るなど、両市は行き来をする人が多かった。

 同館によると、原爆投下後に、両市に入ったのは、負傷者の救護活動や遺体の処理などにあたった軍人や看護師などがめだつということだ。また、両市に工場があった造船所の関係者の中には、両市で被爆した人も複数いるという。

 当時18歳だった男性は、軍医を目指して長崎で夏休みも勉強していた。1945年8月9日長崎に落とされた原爆で被爆し、同月13日、実家のあった広島市に帰省した際に、入市被爆したという。また、当時14歳だった男性は、長崎航空機乗員養成所の予備練習生だった。帰省していた岡山県から養成所に戻る途中、広島駅で原爆投下直後の惨状を目の当たりにして、救助活動にあたり放射線をあびた。同月8日午後、長崎の戻り、長崎に投下された原爆で被爆した。
 体験記の中には、二重に被爆したとみられる人のケースが数多くあり、同館の担当者は「この7年間で体験記が約2万人分増えたために新たな事実がわかった。原爆投下から67年たち、被爆者たちの体験を語り継ぎたいという思いの表れだと思う。」と話している。

 手記を寄せていない被爆者の方や、すでに亡くなっている方の中には、広島・長崎両市で被爆した人が数多くいるにちがいない。二重に被爆した人の実態はいまだによくわかっていないと聞く。
急いで調査をすすめて、実態を把握してほしい。そして、原爆の実態を知らない人たちに伝えていくことが、核兵器をなくすことに繋がっていくと思う。

《参考》
「ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆」 山口彊著 (朝日文庫、2009年)
《参考記事》
広島長崎で二重被爆、倍の307人か 13万人手記分析」 朝日新聞デジタル2012年6月2日

2012年6月4日月曜日

エレベーター事故から6年~徹底した事故調査を

6月3日、東京都港区内で、6年前エレベーター事故で当時16歳の息子さんを亡くした市川さんら主催による講演会が開かれた。作家で評論家の柳田邦男さんが「安全な社会づくりを目指して」と題して、講演を行った。
 柳田邦男さんは、政府の東京電力福島原子力発電所における検証委員会の委員やJR西日本福知山線列車脱線事故調査報告書検証チームのメンバーとして、さまざまな事故調査に関わってきた体験や、事故や災害、公害などを通して、この国の命の問題を考えてきた。

 柳田さんは、「一人の人が死ぬということは、大変な事件なのだ。事故で100人死んだから大変な事故なのではない。一人が死ぬという大変な事故が同じ場所で同時に100件起きたということなのだ。」「被害者の視点、命を奪われた者の立場に立つなら、被害者が100人であれ一人であれ、そこで命を絶たれ、人生を断ち切られるという意味において、何の差もない。それなのに、身近な生活空間で起きる事故については、メディアは事故発生直後はある程度のスペースを割いて報道するが、じきに沙汰やみとなり原因究明に力をいれない。」
 「行政がこの種の事故の対応に本腰を入れて取り組むには、身近なところで起きる事故を総合的にとらえ事故原因を究明し、明らかになった問題点から安全対策を勧告・提言等をする中立の専門的事故調査機関をつくる必要がある。」と語った。そして、被害者や遺族の立場に寄りそう柔軟な姿勢が必要だと話した。

 事故で息子の大輔さんを亡くした市川正子さんは、法的な権限を持ち、監督官庁から独立した中立公正な事故調査機関の設置を訴えた。「事故の本当の原因は何なのか、なぜ事故を防げなかったのか、事故を徹底究明し、その教訓をいかしてほしい。そのためには事故調査機関が必要」と語った。
 会場では、大輔さんの写真や野球道具など、思い出の品も展示され、かつての同級生や野球部員らが訪れた。

 
 市川さんの民事訴訟を担当する弁護士が、事故とその後の経緯や事故を起こしたエレベーターの問題点などを説明・報告した。

 市川さんによれば、エレベーターの事故から6年がたつが、事故を起こしたエレベーターの会社や保守管理会社から、事故について何の謝罪もないどころか、事故原因についての説明もないという。
 エレベーター会社や保守管理会社の担当者を起訴した刑事裁判の公判が開かれ、また専門家による事故調査が進み、事故原因について、解明が進むことを願いたい。

 
《参考記事》
「高2死亡エレベーター事故から6年 柳田邦男さん「安全な社会」テーマに講演会」東京新聞
2012年6月1日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20120601/CK2012060102000077.html

2012年5月31日木曜日

津波浸水予測の学校、4割が避難訓練実施せず

報道によると、5月29日、文部科学省が行った調査の結果、東日本大震災で被災した3県(岩手、宮城、福島)で、自治体のハザードマップなどで津波の浸水が予測されていた地域の学校のうち、4割の学校が、東日本大震災前に、津波に対する避難訓練を行っていなかったことがわかった。また、学校保健法で策定が義務付けられている危機管理マニュアルにも、避難行動を明記していなかったことがわかった。防災について、日常的に検討・協議していなかった学校も、3県全体の4割に上るという。

 文科省は、今年1月~2月、3県の全小中学校・高校と幼稚園合わせて3160校を対象に、大震災への対応について調査した。83%の2617校から回答を得た。

 津波に関する調査では、津波の浸水が予測されていた地域の学校と、実際に津波が到達した学校計149校について分析した。その結果、死亡者や行方不明者がいた学校は30校(20.1%)で、下校中に巻き込まれたケースがもっとも多かったという。避難した場所は「校舎の上階や屋上」(35.4%)がもっとも多く、次に「裏山などの高台」(31.9%)が多かった。

 火災や地震を想定した避難訓練は、3県ともほとんどの学校で行われていた(火災想定98%、地震想定94%)のに対し、津波に対する避難訓練の実施率は6割にとどまり、危機管理マニュアルに明記していたのも6割にとどまった。
 産経新聞が全国の教育委員会に行った調査では、災害マニュアルに津波対策を盛り込むことを検討している教育委員会が多く、上記の学校でも、見直しが進んでいるのではないかという。

 文科省は、今回の調査結果をふまえて、防災教育のあり方を検討してきた有識者会議で、7月までに最終報告をまとめる。

 自治体のハザードマップなどで、津波で浸水が予想されていたにもかかわらず、被災地の学校で避難訓練が実施されていた割合が低かったことは、残念でしかたない。自治体のハザードマップなどがどのように活用されていたのか、定かではないが、各学校や教育委員会は幼い多くのいのちを預かるのだから、火災訓練同様、津波に対する避難方法などについて、検討されていてもよかったと思う。

 
《参考記事》
「津波予測の学校、4割が避難訓練せず 防災意識低く 文科相が被災3県調査」産経新聞2012.5.29 22:32
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120529/dst12052922320026-n1.htm

2012年5月29日火曜日

高速ツアーバス事故~陸援隊、事業許可取り消しへ

ゴールデンウィークの4月29日、関越道で、高速ツアーバスの運転手が居眠りをして、高速でバスがガードレールにぶつかった。その後、そのまま防音壁にぶつかり、防音壁はバスにめり込むかたちになったため、バスの左側に乗車していた人々が7名亡くなり、38名が重軽傷を負った。その悲惨な事故から、1か月がたつ。

 国交省は、29日までに事故を起こしたバス運行会社・陸援隊について、行政処分の中でもっとも重い事業取り消し処分を下す方針をかためた。
28日、群馬県警は、事故を起こしたバス運転手に会社の名義を貸して、違法に営業をさせていたとして、道路運送法違反の名義貸しの疑いで、陸援隊・社長を逮捕した。

 又、バスの運転手も道路運送法の無許可営業の疑いで再逮捕した。陸援隊については、このほかに、国交省の監査で、日雇い運転手を雇っていた、運転手に長時間運転をさせていたなどの法令違反があったことがわかった。国交省は、これらの法令違反と、今回の事故を重く見て、事業許可取り消しもやむなしと判断、陸援隊の主張も聴いた上で、決定を下す方針だ。

 全長約12mのバスは、左前部から防音壁のコンクリート製基礎部分(高さ約1m)にめりこみ、約10.5mまで防音壁全体が入り込んでいた。
事故については、防音壁と防護柵(ガードレール)との間に隙間があったことが、被害を大きくしたのではないかという指摘が当初あった。

 しかし、バスが時速90kmという高速でガードレールにぶつかった衝撃で、ガードレールが外側に傾き、大きな隙間があったように見えていたと判明、東日本高速道路会社は「構造上の問題はない」と県警に報告した。

 2007年2月には、スキー客ら27人が死傷するというバスの事故が起きた。2010年9月、貸切運転手へのアンケートを参考に、総務省は国交省に対して、運転手一人が安全運航できる乗務距離について基準を見直すよう改善を勧告していた。しかし、国交省は運転手一人の1日の最大運転距離の基準「670km」を変更しなかった。

  今月27日、陸援隊が開いた被害者説明会で、今の気持ちを語ったという遺族の一人は、「加害者側にやっと思いを聞いてもらえた」と語る一方、出席した関係者の態度には誠意は感じられず、質問に対する答えも納得のいくものではなかったという。

 事故の原因を徹底的に究明してほしい、そして二度と同じような悲惨な事故を繰り返さないよう、安全対策を考えてほしい。
 バスの運行に関わる人たちには、バスを利用する人の命を大切に考え、安全なバスツアーの基準や安全対策を再度検討してほしい。

《参考記事》
「陸援隊、バス事業許可取り消しへ 国交省方針」 朝日新聞デジタル 2012年5月29日16時39分

「高速ツアーバス事故から1ケ月」(チューリップテレビ 2012年05月29日 19時14分)
http://www.tulip-tv.co.jp/news/detail/?TID_DT03=20120529191635

《参考》5月30日追記
国土交通省: 関越自動車道における高速ツアーバス事故を受けた安全性向上の取り組み
関越道における高速ツアーバス事故を受け、高速ツアーバス関連事業者に対する重点的な立入検査等の実施、過労運転防止対策の強化、貸切バス事業者に対する安全規制の強化等に取り組んでいる。
http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002069.html
  

2012年5月28日月曜日

新潟トンネル爆発事故:ガス対策徹底せず

報道によると、5月24日午前10時ころ、新潟県南魚沼市にある国道253号の八箇峠のトンネルで、爆発が起きた。トンネル外部にいた作業員3人が重軽傷を負い、入口から1,300mの内部で作業中だった4名が亡くなるという痛ましい事故が起きた。
爆発は、トンネル内部に可燃性ガスが充満し、何らかの原因で引火した可能性があると専門家は指摘する。

昨年12月、トンネル工事が休止された。今回、休止後初めて、作業員がトンネル内に入り、換気設備の点検を行っていたところ、爆発事故が起きた。作業員は事故当日、ガス測定器を持たずに、換気設備の点検作業を行っていた。工事を請け負っていた業者によると、換気設備は、「防爆構造」ではなく、通常の設備だったという。

この工事を発注した国土交通省北陸地方整備局によると、「施工業者に可燃性ガスが発生する危険性は伝えた」と説明しているが、施工業者は、事故後にこのことを確認したと答えている。ガス発生の危険性が十分伝わっていなかった可能性がある。

当初のトンネル工事のルートでは、ガスが出ることが確認され、この工事のルートが変更された。しかし、変更後の工事でも、ガスについては十分注意することがもとめられていた。
専門家は、「新潟はガスが出やすい。濃度を測るなど、『出るかもしれない』というリスク管理はすべきだったのではないか」と話しているという。

業者は、工事休止前には、濃度を確認しながら、工事を進めていたという。労働安全衛生法では、毎日の作業開始前にガス濃度を測ることを義務付けていると聞く。工事を再開するにあたり、トンネル内のガスの濃度を確認することが必要だったのではないか。
新潟県警は、27日、業務上過失傷害の容疑で、工事を請け負っていた佐藤工業北陸支店など関係先を家宅捜索した。

《参考記事》
「ガス対策、作業員に徹底せず 新潟爆発、佐藤工業を捜索」
朝日新聞デジタル 2012/05/28 11:03
http://digital.asahi.com/articles/TKY201205270392.html

2012年5月21日月曜日

コンプリートガチャ、規制対象へ~罰則も

18日、消費者庁は、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で行われているゲームの商法「コンプリートガチャ」(コンプガチャ)について、景品表示法で禁じている「カード合わせ」にあたるとの見解を発表した。
同法の運用基準改正案を公表し、意見公募(パブリックコメント)を経て、7月1日から運用する方針。措置命令の対象となり、従わない場合は罰則となる。

カード合わせは、文字や絵、符号が書かれたカードを複数組み合わせて当選を判断し、景品を提供する手法。景品表示法に基づき、射幸心をあおるとして禁止されている。
コンプガチャは、ゲーム上で、「ガチャ」と呼ばれる有料電子くじを引いて数種類のアイテムをそろえると、別の希少なアイテムがもらえる仕組みである。子どもなど低年齢層が、希少なアイテムを得ようとのめりこんで、時に数十万円といった高額な請求をうけた親から、各地の消費者センターなどに相談がよせられていた。

改正案では、カード合わせにあたる手法としてコンプリートガチャを想定した項目を追加した。携帯電話ネットワークやインターネット上のゲームで「偶発性を利用してアイテムなどを有料で提供する場合に、特定アイテムを全てそろえたプレイヤーに別のアイテムを提供する」という手法を禁止するとした。

この問題をめぐっては、5月はじめ、消費者庁が規制に乗り出すことを決めていた。グリーやディーエヌエーなど携帯ゲーム各社は、5月末までにコンプガチャを廃止すると表明している。グリーやディーエヌエーは、業界で作成中のガイドラインに今回の消費者庁の指針や意見を反映させるとしている。

しかし、電子くじ「ガチャ」でアイテムが出る確率は依然として不透明だという。消費者庁は「確立の不表示はただちに景表法違反にあたらない」としているが、ゲーム内の表示を改善するなどの取り組みがもとめられている。

《参考》
消費者庁
「カード合わせ」に関する景品表示法(景品規制)上の考え方の公表及び景品表示法の運用基準の改正に関するパブリックコメントについて
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120518premiums_1.pdf

《参考記事》
「コンプガチャ:「カード合わせ」の違法と発表...消費者庁」毎日新聞 2012年05月18日 20時29分
http://mainichi.jp/select/news/20120519k0000m040059000c.html

2012年4月30日月曜日

倉敷踏切事故から3年~事故を繰り返すな

2009年5月11日午後1時40分ころ、倉敷駅構内の寿町踏切で、自転車を押して渡っていた女性(83歳)が、遮断機まであと1,2mというところで踏切内に取り残されて、列車に撥ねられ亡くなった。

2010年5月、女性の遺族が、女性が亡くなったのは列車の運転士が安全確認を怠ったためだとしてJR西日本に損害賠償をもとめる裁判を起こした。
この裁判で、事故当時、列車を運転していた運転士が、踏切で自転車の女性を踏切の障害物検知装置が感知し、運転士に踏切の異常を知らせる特殊信号発光器が2度発光していたのを見落としていたことが、裁判でわかった。JR西日本の準備書面によると、踏切の手前約720mと400mの地点で、線路わきにある特殊信号発光器が発光していたということである。
また、運転士は、駅に入るため、時刻表などの確認をしていて、特殊信号発光器を見落とすこともあると証言した。

運転士が特殊信号発光器を見落とす可能性があり、通行人が踏切に取り残されているのに、踏切の手前で列車を安全に止めることができないなら、運転士が発光器を見落としても、列車が踏切の手前で安全に止まれるように、列車の運転と連動するようにすべきである。
特殊信号発光器の視認性が悪いのなら、センサーで感知したら、運転席にブザーなどの音で知らせ、自動的に列車が停止するようにできるのではないか。


倉敷駅構内寿町踏切 北側から見る
2012年4月26日撮影

倉敷駅構内寿町踏切 南側から見る
2012年4月26日撮影
2011年12月、倉敷駅の北側に大規模なショッピングモールができ、駅北側と南側の旧国道を結ぶ県道が通る寿町踏切は交通量が増え、踏切内に取り残される車両なども増えたという。
このショッピングモールの完成に合わせて、踏切も改善された。歩道が広げられ、赤いブロックで車道と分けられた。遮断機も車両と自転車や歩行者は別に設置された。また、列車の来る方向が分かるように、方向指示器も設置され、踏切が開くのを待つ間、イライラを幾分か減らせることになった。

交通量が多く遮断時間が長いことから、倉敷駅周辺の高架化し踏切を除却することは、昭和63年ころから検討されてきたそうだが、莫大な費用がかかることから、いまだ実現にいたっていない。

鉄道の高架化には、莫大な費用と長い年月がかかる。15年~20年という歳月の間、事故がないように、できるところから早急に安全対策を講じてほしい。今ある歩道橋をもっとゆるいスロープにすれば、自転車を利用する通行人が楽にのぼれるだろうと思う。
また、歩道橋にエレベーターが設置されていれば、ベビーカーに子どもを乗せた人や高齢者や体の不自由な人も、長い踏切を横断しないで済む。

高架化が進まないのであれば、踏切の横に地下道をつくるといった、すぐにできる対策を講じることも必要だと思う。

《参考》
昨年、拙ブログで、寿町踏切をとりあげた
「踏切事故の現場をたずねて~倉敷市寿町踏切事故から2年」
http://tomosibi.blogspot.jp/2011/05/2.html

《参考》
倉敷市鉄道高架推進室
「倉敷駅付近連続立体交差事業」
http://www.city.kurashiki.okayama.jp/dd.aspx?menuid=1249

チェルノブイリ事故から26年~新シェルターの建設へ

  4月26日、旧ソビエト連邦ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で、放射性物質を封じ込めるため、新しいシェルターの組み立てが始まった。

 チェルノブイリ原発を覆う「石棺」が老朽化したため、汚染された水や粉じんが漏れ出ていた。その対策として、3年でシェルターの完成を目指す。そして、原子力発電所の解体や、溶け出した核燃料を取り出すには、100年近くかかるという。
 事故から26年がたつ4月26日、新たなシェルターをつくる工事が始まった。シェルターはかまぼこ型で、鉄骨の骨組みにパネルを組み合わせる。高さ105m、幅257mになるという。 
 
 
 隣接する敷地で組み立てられ、その後、特製のレール上を滑らせて、事故を起こした4号炉にかぶせる。耐用年数は100年といわれる。完成は、2015年となる予定で、原発の解体はその5年後に始め、約10年で終わる計画だという。高熱で溶けた核燃料などの物質を摘出するには、今から30年後に着手し、60年ほどかかるという。

 シェルターの建設費は、はじめの予想の2倍近い約15億ユーロ(約1620億円)で、欧州復興開発銀行の基金などでまかなわれる。東京電力福島第一原発の事故をきっかけに、チェルノブイリ原発が再び注目を集め、欧州連合やロシア、米国などが拠出を増やし、シェルターの建設が始まった。

 事故を起こした原発の解体や溶けた核燃料をとりだすには、なんと長い年月がかかることだろう。
 しかし、ウクライナの首相は、原発の価格は太陽光発電の50分の1だとして、その経済性を理由に、原発の利用を続けるとしている。

 
《参考記事》

「チェルノブイリ原発、新たな『石棺』着工 老朽化対策で」 朝日新聞4月26日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201204260516.html

2012年4月29日日曜日

JR西福知山線脱線事故から7年

7年前の2005年4月25日、JR福知山線尼崎駅近くのカーブで、快速電車が転覆脱線、線路横のマンションに激突し、107人が亡くなり562人が負傷した。あれから、7年がたったが、大切な家族を失った遺族や、友人、負傷した方々の苦しみや悲しみは、いまだに癒えることはない。

 事故のあったあの日と同じように、晴れた25日の朝、事故現場には、遺族や被害に遭われた方々、JR西の社員らが訪れた。事故のあった時刻の直前、現場カーブでは、満員の通勤客を乗せた快速電車がゆっくりと通過し、長い警笛を鳴らしたという。

 報道によると、現場近くのホールで、JR西日本主催の追悼慰霊式が行われ、事故の遺族や負傷された方々1100人が参加した。今年は、遺族らによる「慰霊のことば」は希望者がなかったという。

 午後は、遺族や負傷者らが主催する「追悼と安全のつどい」が開かれた。遺族とJR西日本は共同で、より安全な鉄道を目指して、検討会を重ねてきた。今年3月には、「安全フォローアップ会議」を立ち上げ、初会合を開いた。また、今回の「つどい」では、参加者からフォローアップ会議に対する意見や要望も募った。
 会場からは、日航ジャンボ機墜落事故で次男を亡くした美谷島邦子さんが、長い年月空の安全をもとめて活動してきたことをふまえ、被害者と企業の対話から、安全が生まれることを訴えていた。

 また、事故で妻と妹を失い、娘さんが大けがをした浅野弥三一さんが、「遺族だけで閉じこもらず、体験したことを社会に発信し、事業者の姿勢を変えていく。その先頭に自分たちは立つべきだ。」と語っていたのが強く印象に残った。

 最後になりましたが、事故で負傷された方々が少しでも早く回復され、日常の生活に戻れることをねがっています。
そして、亡くなられた方々のご冥福を心より祈ります。

《参考記事》
「JR宝塚線脱線事故から7年 現場近くで追悼慰霊式」朝日新聞4月25日

2012年4月11日水曜日

JR福知山線脱線事故の負傷者ら、しおりを作成~安全への願いを込めて

 4月25日で、乗客乗員107名が亡くなり、562名の方が負傷したJR福知山線脱線事故から丸7年になる。
 7日、事故の被害者らでつくる「負傷者と家族の会」は、安全への願いを込めた「空色の栞」を作成した。8000枚になる栞は、25日ごろ、沿線の駅周辺や追悼イベントなどで配布する予定だという。

 栞は、毎年この時期につくられ、配布される。事故の日、1両目に乗っていて負傷した福田裕子さんがイラストを書いた。
 福田さんは「時間がたっても寄りそってくれる人がいることを伝えたかった、手にとった人が事故を身近に感じてくれればありがたい」と語っている。

 脱線事故のあった日、朝から天気がよく、空が青かった。その青さが忘れられない。朝、学校へ出かけた人、勤務先へ行く予定だった人、休日で友人と出かけた人、多くのつつましく生きていた人たちを奪った事故を忘れないようにしようと思う。

《参考記事》
「空色の栞、安全の願い込め JR脱線事故の負傷者ら8000枚作成」2012.4.7 22:34
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120407/waf12040722380018-n1.htm

被害者に寄りそう支援へ~公共交通事故被害者支援室を開設

  4月6日、国土交通省は、航空、鉄道など、公共交通における事故の被害者などへの支援を確保するため、『公共交通事故被害者支援室』を開設した。

これは、平成21年から、「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」において検討され、平成23年6月にまとめられた検討会の提言にもとづいて設置されたものである。
国土交通省によれば、『被害者に寄りそう』ことを基本とし、
①万が一、公共交通における事故が発生した場合の情報提供のための窓口機能
②被害者等が事故発生後から再び平穏な生活を営むことができるまでの中長期的にわたるコ―ディネ-ション機能
などを担うことを目的としたものである。被害者等と直接に向き合う業務を遂行するため、関係機関等の協力を得ながら、被害者等支援に関する基本的な知識や心構えの習得を行い、同室の機能を充実させていくとしている。

これまで、事故が起きた際の被害者等への支援は、航空事業者等一部の交通事業者にとどまっていた。しかし、事故を起こした事業者だけに被害者等支援を担わせるのではなく、国の役割を明確にして、縦割り行政の弊害をなくしていくとしている。

航空については、国際民間航空機関(ICAO)の定めるガイダンス等を基に、計画作成のためのガイドラインを国交省で策定し、事業者の自主的な取り組みを促進していくとしている。航空以外の鉄道や海運等については、段階的に引き続き検討していく。
組織・体制については、被害者等への支援を確保するため、常設の窓口機能をはたす組織を総合政策局に設置し、この組織を核として全国的に、具体的な活動が行える体制を整備していく。
省内の作業グループにおいて作業に着手、今後3年をめどに、支援体制の充実を図るという。

支援室では、当面の業務として、・支援員に対する教育訓練の実施、・支援員の業務マニュアルの策定の検討、・外部の関係機関とのネットワークの構築、・交通事業者による被害者等支援計画の策定促進、・窓口業務の試行的実施とその検証、などを行う。
大きな事故が起きた時、被害者や遺族は、大切な人がどこの病院に搬送されているのかなど、十分な情報もえられないまま、たくさんの病院をまわって、被害に遭った家族や友人を捜すことがあった。また、通院も、加害企業の被害者担当社員に付き添われて行くことがあった。そんなとき、なぜ加害者と行かねばならないのかと、やりきれない思いがしたこともあったと思う。

十分な事故の情報が得られないと、自分が亡くなった人を死に追いやったように思ったりする。「あの時、自分があの列車が便利だとすすめなければあの子はあの列車に乗らなかった」と、自分を責めたりしてしまう。「あの時、一声かけていれば、あの人があの危ない踏切で事故に遭わなかった」と自分を責めてしまう。
そうではない、残されたあなたが悪いのではないと言えるように、必要以上に自分を責めないで済むように、事故がなぜ起きたのか、なぜ事故を防げなかったのか、どうしたら二度と同じような事故を起こさず、犠牲を出さなくて済むのか説明できるように、事故の調査をしてほしい。そして、大切な人を亡くして悲しみにくれている人に、分かりやすく説明してほしい。それが、支援の第一歩ではないかと思う。

《参考》
国土交通省総合政策局「公共交通事故被害者支援室の設置について」平成24年4月6日
http://www.mlit.go.jp/common/000207511.pdf

2012年3月20日火曜日

駅の視覚障害者、転落防止に声かけを~盲学校の生徒らがよびかけ

報道によると、18日の「点字ブロックの日」、JR大宮駅で、埼玉県立盲学校の生徒らが、ホームなどで、視覚障害者が危険だと感じたときは、迷わず声をかけてほしいと、街頭で呼びかけた。生徒は、6日川越駅で亡くなった視覚障害者の男性の母校の生徒らで、同校卒業生の男性は、「声をかけてもらえば、転落防止につながる。勇気をふりしぼって声をかけてほしい」と語っていた。

 3月6日、埼玉県川越市の東武東上線川越駅で、視覚障害者の男性がホームから線路に転落し、走ってきた電車にひかれて亡くなった。警察によると、目撃者などの話から、男性は、点字ブロックから線路寄りの幅1mのところを白い杖をついて歩いていたところ、足を踏み外して線路に転落したとみられている。
 川越駅には、点字ブロックはあるが、ホームドアはないということである。しかし、多くの点字ブロックは、どちらが線路側なのかわかりにくいという。
 

 昨年1年間に、東京都内では視覚障害者の方がホームから転落して亡くなる事故が3件起きている。このため、東京視覚障害者協会では、これまでも鉄道各社に対してホームドアを設けたり駅員をホームに配置したりするなどの要望をしているという。
 ホームドアなどを設置するのは費用や技術的な問題など、すぐには解決できない問題もあると思う。しかし、ホームからの転落を防止するため、駅員をホームに配置するなどといった対策はすぐできるはず。事業者には、できる対策から取り組んで、事故の防止に努めてほしいと思う。

《参考記事》
「駅の視覚障害者 迷わず声かけを」NHKニュース3月18日 14時50分 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120318/k10013803601000.html

「視覚障害者 線路に転落し死亡」NHKニュース3月6日 18時50分 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120306/t10013524401000.html

谷亮子議員「必修柔道、安全に」~参院予算委で

報道によると、19日、女子柔道の五輪金メダリストで参院議員の谷亮子氏(民主党)は、4月から始まる武道の必修化について、国の安全対策を求めた。

 今年4月から、中学校では、武道が男女とも必修になる。しかし、現場では柔道の事故対策について、不安の声が出ているのをうけて、同議員は、「事故の被害者の会にも参加した。安全の指導に国家資格制度も取り入れたい」と提案した。
 平野文部科学相は「学校で安全確保を再点検し問題点があれば計画を見直すなど、あらゆるリスクをなくすよう努める。国家資格も検討してみたい」と応じた。

 武道の中でも、柔道の危険性を指摘する声がある。中学の学校活動で起きた柔道の死亡事故は、1986年からの28年間で39件。死亡事故の発生率は、野球やサッカーと比べて9倍という研究結果もあるという。
 柔道は、子どもたちが好きなスポーツの一つといってよいと思う。五輪選手らの活躍に憧れ、練習に励む子どもも多いと思う。そのような柔道が、誰でも安全に学び楽しめるものであってほしい。

《参考》
拙ブログでは、昨年12月、横浜市奈良中柔道事故について取り上げた
「柔道事故で賠償命令~部活動で高次脳機能障害 」
http://tomosibi.blogspot.jp/2011/12/blog-post_27.html

《参考記事》
「谷議員『必修柔道、安全に』 参院委、指導資格制を提案」 朝日新聞2012年3月20日
http://www.asahi.com/politics/update/0319/TKY201203190605.html

〈ニュースがわからん!〉「中学の武道必修化」朝日新聞2012年3月20日03時00分
http://digital.asahi.com/articles/TKY201203190676.html?ref=comkiji_kanren

「『柔道』授業 事故防止へ指導手引書」TBSニュース(09日11:31)
http://news.tbs.co.jp/20120309/newseye/tbs_newseye4972991.html

2012年3月18日日曜日

白倉踏切に非常ボタン設置~電動車いすの踏切事故

 2009(平成21年)年4月13、高知県佐川町のJR土讃線の白倉踏切で、電動車いすに乗って踏切を横断していた女性(86歳)が、踏切内に取り残され、特急列車に撥ねられて亡くなった。

 事故の後、女性の遺族が、JR四国の安全対策に落ち度があったとして、JR四国に対して、損害賠償をもとめる裁判を起こした。
 白倉踏切には、警報機・遮断機があるが、踏切内に閉じ込められるなどの異常を運転士に知らせるための非常ボタンが設置されていなかった。事故のあった白倉踏切のとなりにある、人のほとんど通らない車両の通れない踏切には非常ボタンが設置されている。
 しかし、女性の遺族は、国道に面した交通量の多い白倉踏切には、非常ボタンが設置されていない、警報機がなり始めてから遮断機が下りるまでの時間が他の踏切に比べて短いなどの問題点があると指摘していた。

 おととし、9月、JR側が安全対策を推進することなどを条件に、女性の遺族と和解が成立。JR四国は、裁判所に列車の運転士に踏切の異常を知らせる非常ボタンの設置を促されていた。
 JR四国は、これをうけて、平成23年度の事業計画に現場の踏切に非常ボタンを設置することを盛り込み、今年2月、工事が終わり、運用が始った。

 踏切事故で亡くなった女性の長女は、「非常ボタンのない踏切がひとつ減ったという点では評価できる。しかし、今回非常ボ タンは遮断機の外側に設置されているうえ、車いすに乗った状態で押せるかどうか分からない高さに設置されていることが残念だ。鉄道会社には事故原因を究明したうえで今後、安全対策を徹底してほしい」と話す。
 非常ボタンが遮断機の外側にあっては、踏切内に閉じ込められた通行者が押せないかもしれない。また、地面から150㎝と高い位置にあるため、子どもや車いすに乗った人が自分で押すことができないかもしれないと遺族は説明する。

 JR四国によると、1326か所ある踏切のうち、全体の64.8%にあたる860か所に非常ボタンが設置されているという。迅速に運転士に踏切の異常を知らせて、安全に列車を停車させることができるよう、 JR四国には、非常ボタンやセンサーなど、踏切の安全対策を進めてほしいと思う。

《参考》
拙ブログでは、白倉踏切の事故を以下のページでとりあげた
「踏切事故の現場をたずねて~高知県佐川町白倉踏切」2010年4月26日
http://tomosibi.blogspot.jp/2010_04_01_archive.html
《参考記事》
「死亡事故踏切に非常用ボタン」2012年2月17日NHKニュース(高知)
http://www.nhk.or.jp/lnews/kochi/8016756831.html

2012年3月15日木曜日

竹ノ塚踏切事故から七年~高架化工事着工へ

 竹ノ塚駅の開かずの踏切の事故から、7年がたとうとしている。

 踏切の遮断機を上げ下げしていた保安係が、準急列車がくるのを忘れて、警報音を消したまま、遮断機を上げた。そのため、歩行者やオートバイなど多数の通行人が踏切内に入り、そこへ、準急電車が時速90㎞で踏切に進入し、通行人を撥ねた。2名が死亡、2名が重傷を負った。その中に私の母もいた。
 
 

 事故当時、竹ノ塚踏切では、日比谷線、半蔵門線の乗り入れ等で通過列車が1日900本以上に増加し、ラッシュ時には、1時間のうち57分も踏切がしまったままという状態で、交通渋滞が多発していた(「開かずの踏切」)。

 事故後、当時の航空・鉄道事故調査委員会は、竹ノ塚踏切事故を、鉄道事故の調査対象の規定である「死傷者5名以上」にあてはまらない、「鉄道局の要請」がないという理由で調査しなかった。

 刑事裁判では、踏切保安係が禁固1年6月の刑が決まり、元駅長や本社の運転化課長補佐などは不起訴となった。遺族は、この不起訴を不服として検察審査会に申し立てをし、審査会は「不起訴不当」の議決をしたが、検察は再び元駅長らを不起訴とした。

 東武鉄道は、事故から4ヶ月後に社内調査報告書を公表し、事故が起きた背景に現場の状況を把握する社内の体制が不十分だったことをあげたが、会社の組織的な問題点を十分明らかにしたとは思えなかった。

 2008年10月、航空・鉄道と船舶の事故調査をいっしょに行う運輸安全委員会が発足した。その際、運輸安全委員会は、鉄道事故の調査範囲を拡大した。あらたに、「鉄道係員の取り扱い誤りまたは車両若しくは鉄道施設の故障、損傷、破壊等に原因があると認められるもので、死亡者を生じたもの」を調査対象に加えた。この規定によれば、「東武伊勢崎線竹ノ塚踏切事故」のような死傷者が5名未満の事故でも事故調査の対象になる。
 この結果、ホームや踏切で死亡者が1名であっても、事故調査されることになり、JR舞子駅の転落事故やJR飯山線踏切事故のような事故も、運輸安全委員会で調査され、事故調査報告書が公表されることになった。

 しかし、調査してみなければ、直接原因や背景原因はわからない。ホームや踏切などの死亡事故はすべて調査すべきだと思う。

 踏切事故で毎年100名以上の方が亡くなっており、踏切事故は鉄道事故の約三分の一をしめる。
 国交省鉄道局が毎年公表する「鉄軌道輸送の安全に係る情報(平成22年度)」によると、平成18年度から、22年度までの5年間に、踏切で命を落とした人は全国で、612人にのぼる。開かずの踏切など、交通量の多い踏切では、列車と車が衝突する事故も多発しており、先日もJR西明石駅の踏切で衝突事故が起きた。
 
 また、警報機や遮断機のない危険な踏切で亡くなる方の割合は、警報機・遮断機のある踏切より高いことも、上記の統計でわかった。
 危険な踏切を放置していては、事故は無くならない。鉄道の高架化に取り組むのが時間のかかることならば、できることから取り組んでほしい。個々の踏切の実情にあった対策があるはずだと思う。自治体や事業者など、各方面の事故防止・安全性向上の取り組みを期待したい。

《参考》
 3月15日、竹ノ塚駅付近鉄道高架化促進連絡協議会(足立区、足立区選出議員、地元自治会、PTA、商店街などで構成)の主催による献花式が行われる。
  
   1 日時:平成24年3月15日(木)

       16時50分から(16時45分集合)

   2 場所:竹ノ塚駅南側の大踏切(第37号踏切)東側

   3 内容:黙祷、 献花

2012年3月4日日曜日

宮城県石巻市大川小学校で追悼法要~東日本大震災から1年を前に

 昨年3月11日、東日本を襲った大震災と津波で、石巻市の大川小学校では、全校児童の7割近くの児童74人と教職員10人が死亡・行方不明となった。 

 報道によると、震災からもうすぐ一年になるのを前に、3日朝、大川小学校の校舎前で、亡くなった児童のために追悼法要が営まれ、遺族ら百数十人が出席した。神奈川県や宮城県内の僧侶20人以上が読経し、焼香が行われた。

 大川小学校でなぜ地震の発生後避難が遅れ、多数の児童が津波の被害にあったのか、石巻教育委員会は遺族に説明会を開き、今年1月には学校側の責任を認めた。しかし、遺族からは疑問の声が出ているということで、今月第4回の説明会が予定されているという。
 
 
 大川小は、北上川沿いの低地にあり、追波湾から南西に約4km、標高約1.5mのところにある。同じ石巻市内の他の小学校が近くの裏山などに避難したのに対して、大川小は裏手にある小高い山に避難しなかった。マニュアルには、「近隣の空き地・公園等」とあるだけで、具体的な避難場所は書かれていなかったという。
 
 なぜ、これほどまでの犠牲を生んでしまったのか、それが明らかにされ、どうすれば多くの児童を助けることができたのか、真摯に検討され説明されなくては、また同じような悲劇が繰り返されてしまう。それは、何としても避けてほしいことだ。

《参考記事》
「 大川小で追悼法要 遺族ら百数十人出席」朝日新聞2012年3月3日http://www.asahi.com/national/update/0303/TKY201203030212.html

ひな人形、娘もきっと見てる 大川小で飾り付け 石巻」 朝日新聞2012年2月26日 

2012年2月29日水曜日

JR阪和線杉本町駅東口、完成まぢか

悲惨な踏切事故が相次いだ杉本町駅に、ようやく駅東口が完成し、東西にエレベーターが設置される。
 3月11日(日)始発から、運用が開始される予定で、3月9日(金)には完成を祝って、記念式典が行われる。(詳細については「JR杉本町駅東口設置推進の会」ホームページ)
 駅西側にしか改札口がない杉本町駅から、開かずの踏切を通らずに駅の東側に出ることは、駅を利用する大学の先生方や学生、地元住民の方々をはじめ、多くの方がたの願いだった。

 駅の東側に改札口がないため、どうしても踏切を渡って西口にまわらねばならない。しかし、ラッシュ時は列車本数が多く、踏切は遮断機が降りたままで、「自分が乗車する予定の列車が来るのに、踏切が開かなければ乗りそびれてしまう」と、踏切の前で焦るという。
 台風でダイヤが乱れ、なかなか開かない踏切がさらに開かなくなり、しびれを切らして、列車が接近しているのを気付かず降りている遮断機をくぐって、踏切に入り列車に撥ねられて亡くなった方もいる。

 そんな踏切事故をなくすため東口を設置し、駅をバリアーフリー化しようと、大阪市立大学で教鞭をとる先生方や学生・関係者・地元住民の皆さんが、JR西や大阪市に要望して、ようやく昨年6月から東口を設置する工事が始まった。

 踏切の事故をなくすには、踏切そのものを無くすことだという。しかし、踏切を無くすための鉄道立体化を進めるには莫大な費用と年月がかかる。その間に再び事故が起きないように、すぐできる踏切の安全対策を講じることが必要だと思うし、すぐにできる対策があった。

 悲惨な踏切事故が再び起きないよう、一刻も早く駅の東口設置工事が完成すること、そして将来JR阪和線の鉄道高架化が実現するようにと思う。

新しい駅舎の杉本町駅が見える。
駅の左に見えるのは大阪市立大学
(JR杉本町駅東口設置推進の会提供)

完成間近の杉本町駅東口。右に行くと事故のあった踏切がある。
(JR杉本町駅東口設置推進の会提供)

駅バリアーフリー化をめざし、東西口にエレベータも設置される
(JR杉本町駅東口設置推進の会提供)














《参考》
拙ブログでは、以下で杉本町駅の踏切事故と踏切を取り上げた
「踏切事故の現場をたずねて~JR西日本阪和線杉本町駅構内」
http://tomosibi.blogspot.com/2011/02/jr.html

《参考》
「JR杉本町駅東口設置推進の会」
http://homepage3.nifty.com/muratak/higashiguchi.html
FCブログ「歩こう大阪!おおさか東住吉」では、工事の進捗状況がわかる
「JR阪和線杉本町駅「東口」設置改修工事進捗状況」
http://walkosaka.blog42.fc2.com/blog-entry-392.html

2012年2月28日火曜日

踏切の門扉施錠せず~JR神戸線明石踏切事故

2月17日、明石市のJR神戸線西明石駅構内にある社員専用踏切で、特急列車とトラックが衝突し、乗客ら9人が負傷するという事故がおきた。
報道によると、JR関係者への取材で、踏切近くにある構内進入用の門扉が数年前から施錠されておらず、誰でも出入りできる状態だったことがわかった。門扉には、電子式の鍵がつけられていたが、無施錠のままだったという。

今回事故を起こしたトラックも、この門扉から入り、商品を納入した帰りに踏切を渡ろうとして特急と衝突した。JR西日本は「電子式の鍵は壊れており、改良修理中だった」としているそうだ。
インターホンで社員に所属と用件を伝えると、遠隔操作で鍵が解錠され門扉が開けられる仕組みだったが、数年前から鍵は使われなくなったという。

JR西によると、現場の踏切は、駅構内の車両基地などに出入りする社員や業者専用で線路と並行する国道2号から入ることができる。門扉は、国道と踏切との間にある鋼鉄製でスライド式になっている。2003年に軽乗用車が誤って踏切内に入り、電車と衝突する事故が起きたのを機に設置された。

関係者によると、関係者以外の立ち入り禁止や左右確認などを注意喚起する看板があったが、遮断機や障害物検知装置はなかった。JR西によれば、この踏切は関係者専用で、法律的には「踏切」ではないという。

しかし、特急などが数多く通る本線で、しかもすぐそばを国道が並行して入っているため、誤って一般の車両が入ってきかねない踏切に、なぜ、遮断機が設置されていなかったのだろうか?
社員や関係者専用の踏切と言っても、特急などには一般の乗客が多数乗車している。万が一、列車がトラックと衝突した衝撃で列車が脱線などすれば、多くの乗客に被害が及ぶと思う。
JR西には、今回の事故を機に、社員専用通路として使われているすべての「踏切」を点検してほしい。そして、「踏切」が、列車運転本数が多く特急など早い列車が通る「踏切」である場合には、警報機や遮断機を設置するなどの安全対策を至急講じてほしい。

《参考》
運輸安全委員会は事故調査の進捗状況をホームページに公表し、現場の写真などを掲載した
「西日本旅客鉄道㈱山陽線鉄道人身事故の進捗状況」2012年2月22日
http://www.mlit.go.jp/jtsb/flash/jrwsanyo_120217-120222.pdf
《参考記事》
「踏切の門扉施錠せず 誤侵入の危険性 明石・特急衝突」2012/02/20 16:50 【神戸新聞】
http://www.47news.jp/news/2012/02/post_20120220165436.html




2012年2月22日水曜日

アメリカ原子力規制委員会、メルトダウンを想定して対応

 報道によると、21日アメリカの原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故発生直後、委員会内部で行ったやり取りを記録した議事録を公開した。
 この中で、アメリカ当局が、事故発生から5日後には、最悪の事態を想定すると、1号機から3号機まですべてメルトダウンする可能性もあるとして、日本政府が付近の住民に出した避難・屋内退避指示よりも広い範囲の勧告を行うよう提起していたことがわかった。

 21日、アメリカ原子力規制委員会は、東日本大震災が発生した昨年3月11日から、10日間にわたる委員会内部の緊急会議のやりとりを記録した3000ページ以上におよぶ議事録を公表した。

 福島第1原発の敷地周辺から、放射性セシウムが検出されたことから、同委員会は原子炉内部で部分的な炉心損傷が起きている可能性があるとして、幹部が避難勧告を発電所から半径50マイル(約80km)に出すべきではないかと委員会に進言していることがわかったという。

 また、議事録では、同委員会のヤッコ委員長と日本に派遣された担当官とのやりとりが記され、日本に滞在するアメリカ人の避難について検討していたことがわかるという。
 アメリカの福島第1原発事故直後の対応が詳細に記されているということだが、先日、日本の政府が議事録を作成していなかったことと比べると、驚く。日本では、原子力災害対策本部などの議事録が作成されていないため、政府の事故直後の対応がどうだったのか、検証できない。これから、事故直後のメモなどを参考にして議事録を作成するということだが、メモでは、細かなところが不明確になりかねない。
 原発事故に関するさまざまな会議には、記録をとるための人員を配置して、やりとりを正確に記録してほしいと思う。事故にどう対応したのかを検証することは、今後同じような事故を防ぐために役に立つと思う。

《参考記事》
「米当局 メルトダウンを想定して対応」NHKニュース222 1930
K10031999211_1202221928_1202221かkっかっこhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20120222/k10013199921000.html

『「必要なのは水、水だ」 米、福島原発事故時の対応公開 』2012年2月22日21時57分
http://www.asahi.com/international/update/0222/TKY201202220646.html

2012年2月19日日曜日

ライターによる火災、幼い子が犠牲に

2月14日、東京都板橋区で、幼い女の子が住宅の火災で亡くなった。警視庁は、死因は二人とも、一酸化炭素中毒とみている。

火事が起きた時、母親は二人を残して買い物に出かけて不在だった。高島署によると、3階の居間のこたつ付近が激しく焼けており、付近にライターが落ちていたという。落ちていたライターは、子どもの火遊びを防止するための機能がついていない子どもでも点火が簡単にできる旧型のものだったという。

高島署はライターの火遊びが火事につながった可能性があるとみて、調査をしている。しかし、子どもが使いにくくした「CR(チャイルドレジスタンス)」機能のない使い捨てライターは、昨年9月から販売が禁止されている。

東京消防庁によると、2006年から2010年に、12歳以下の子どもによる火遊びの火災は328件あり、7人が死亡、125人がけがをした。火事の原因の7割がライターを使ったものだったことから、子どもが点火しにくいライターを販売するよう求められ、昨年使い捨てライターは販売規制されたばかりだった。

旧式のライターが回収されずにまだ販売されているのだろうか?そうであるならば、ライターを製造販売する業者は回収する方法を早く検討して回収してほしい。また、家庭でも、古い型のライターが残っていないか調べ、あれば処分する、また新しい型であってもライターを子どもの手の届かないところにおくこと、子どもに火遊びが危険であることを教えるなど、大人は幼い子どもを守る努力をしてほしい。
《参考》
拙ブログでは、以下で取り上げました
「ライター火災、消費者庁などが全国調査実施 」2010年4月4日
http://tomosibi.blogspot.com/2010/04/blog-post_04.html

(独)製品評価技術基盤機構は、子どものライターなどの事故について注意喚起している。
「子どもによるライター等の事故の防止について(注意喚起) 」2011年9月22日
http://www.nite.go.jp/jiko/press/prs110922.html

《参考記事》
「死亡は幼い姉妹 火元近くにライター 東京・板橋の火災」朝日新聞2012年2月15日11時49分
http://www.asahi.com/national/update/0215/TKY201202150151.html

「CR機能なしライター きょうから販売規制 園児に絵本で呼び掛け」 東京新聞2011年9月27日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20110927/CK2011092702000029.html

特急とトラックが衝突~明石踏切事故

報道によると、2月17日午後4時50分ころ、兵庫県明石市のJR神戸線西明石駅付近の踏切で、特急とトラックが衝突し、乗客8人とトラック運転手の計9人が軽傷を負うという事故がおきた。
特急は倉吉発京都行きの特急列車「スーパーはくと10号」(5両編成、乗客146人)で、踏切に進入してきた2トントラックと衝突したという。

JR西によると、現場は西明石駅から東に約800mの位置にある業務用の踏切で、車両のメンテナンスをする網干(あぼし)総合車両所明石支所の敷地内にあり、JR関係者以外は立ち入りできないという。列車が時速約100kmで踏切を通過しようとした際、運転士が踏切内に進入したトラックに気付き非常ブレーキをかけたが、間に合わず、先頭車両などにぶつかった。JR西は、事故当時、踏切に遮断機は設置されていないが、警報機は鳴っていたとみている。
国土交通省の運輸安全委員会は、18日鉄道事故調査官2人を現地に派遣し、現場周辺の調査に入った。また、兵庫県警は、トラックの運転手が、現場の踏切を通ったのは初めてで、不慣れだったのではないかとみている。

この踏切では、過去に2度同様の事故が起きていることもわかった。2003年と2006年に列車と車両が接触する事故が起きていた。JR西は対策として、警報ボタンを設置したという。警察の調べに対してトラックの運転手は、「警報音は聞こえたが、遮断機もなく、列車は来ないだろうと思った」と語っている。
現場の踏切には警報機だけで、遮断機が設置されていないという。 特急などの速度の速い列車が通過する踏切には遮断機が設置されるべきではないだろうか。

《参考記事》
「特急とトラック衝突、乗客ら9人けが 明石のJR神戸線」朝日新聞2012年2月18日
「県警が特急車両を検証、事故調は現地調査 明石踏切事故」朝日新聞 2012年2月18日
 
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201202180033.html
「西明石駅踏切事故 過去に2度、同様の事故」日本テレビ2012年2月18日
http://news.livedoor.com/article/detail/6291188/

2012年2月2日木曜日

JR飯山線踏切事故から1年

 2011年2月1日午後0時12分ころ、新潟県津南町上郷寺石の大根原踏切で、JR東の社員が車を誤って踏切内に誘導したため、車と列車が衝突し運転していた男性が亡くなった。

 踏切は、事故当時朝から遮断機が故障し警報が鳴ったままだったため、通行者があるとJRの社員が踏切の遮断機を手で上げていた。JRの社員は、遮断機を上げて車を踏切内に誘導したところ、長野発十日町行普通列車(1両)が来て車と衝突、車に乗っていた男性が死亡した。

 JR社員が車を誘導する際に、列車の運行状況などの安全確認を怠ったとみられているが、当時は大雪のため、踏切周辺は雪が壁になり2.4mに達していた。そのため、見通しも悪かったという。  

 国土交通省の運輸安全委員会は、事故後、事故調査を行っており、事故調査報告書は作成中である。(ホームページhttp://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail.php?id=1794

 
 列車は自動車よりも何倍もの重量とスピードがあるのだから、もし車や人と列車が衝突したら、人や車はひとたまりもない。そんな危険な踏切の遮断機を上げる際には、係員はダイヤや列車の運行状況などを確認してほしい。

 
 最後になりましたが、亡くなられた男性のご冥福を祈ります

《参考記事》
「飯山線踏切事故から1年 JR東社長ら現場で冥福祈る」 新潟日報2012年2月1日
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/pref/

2012年2月1日水曜日

阪神大震災でも議事録作成せず

  報道によると、阪神大震災など過去の大災害の際に設置された非常災害対策本部の会議でも、議事録や議事概要が作成されていないことが、内閣府防災担当の資料でわかった。
 昨年4月の公文書管理法の施行前とはいえ、自民社会さきがけ政権や自民公明政権の時代から、記録が残されていないことがわかった。公文書管理法では、政策決定の過程が確かめられるよう、会議の文書作成を義務付けている。
 非常災害対策本部は、国土庁長官(当時)や防災相トップが務める。1995年の阪神大震災、2000年三宅島噴火、2004年新潟県中越地震など7回設置された。いずれも議事録や議事概要がなかった。阪神大震災では、首相の緊急対策本部も設置されたが、この会議の議事録や議事概要もないことがわかった。
 会議で決定した事項や各省庁からの報告資料は残っているが、詳細な発言のメモはなくこれらの会議の議事録の復元は困難だということだ。

 また、国土交通省も、東日本大震災で設置した三つの会議の議事録を作成していなかったことを明らかにし、昨年3月11日から11月28日まで62回開いていた会議の議事録を、メモなどをもとに作成するという。

 災害時の対応がどうだったのか後から検証し、今後の対策に役立てられるよう、記録をとることは何よりも大切なはず。政府の重要な政策決定の過程が記録されず、会議の内容が公開されないのは、国民に対する「背任行為」(福島県双葉町井戸川克隆町長の発言)と批判されても仕方ない。

《参考記事》
「阪神大震災でも議事録つくらず 防災相トップの対策本部」 朝日新聞2012年01月31日
http://www.asahi.com/politics/update/0131/TKY201201310641.html

2012年1月31日火曜日

踏切事故の調査と再発防止策

 私たち踏切事故の被害者の家族は、国土交通省に対して、各鉄道事業者が踏切事故の原因を調べ再発防止策をとるよう指導すべきだと要望してきた。平成22年4月、鉄道局から各地方運輸局に、鉄道事業者が報告する「鉄道運転事故等届出書」(以下届出書と略)について改善するよう通達が出された。
 その結果、平成22年度から「届出書」の備考欄が詳しくなり、事故情報がより詳しく書かれるようになった。

  国土交通省鉄道局では、毎年「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報」という鉄道事故の統計と安全対策の状況をまとめたものを出している。
 私たちは、この統計のもとになる各鉄道会社の事故の報告がどのようになされ、事故の調査と再発防止策がどのようになされているのか、深い関心を持ってきた。

 しかし、事業者が各地方運輸局に提出する事故の届出書には、踏切で列車とぶつかった運転者や歩行者の性別や年齢などが記入されていない届出書の多いことが、「鉄道運転事故等一覧表」(国土交通省鉄道局、以下、一覧表と略)に関する私たちの分析からわかった。
 この「一覧表」の死亡事故情報を記入する「概況」欄には、事故情報の記載が簡単で、事故を起こした列車の番号や速度の記載のない物が多く、警察の事故情報と「概況」欄の記載とが異なるものもあった。
 
  このように事業者が提出する「届出書」の事故情報が不十分では、有効な安全対策が講じられれないと思う。私たちは、踏切事故を無くすには、正確な事故情報を集め、分析し、再発防止策を講じることが必要であると、鉄道局や運輸安全委員会に要望してきた。

 2010年4月 、鉄道局はこの「届出書」の「概況」欄に、事故等の状況がわかるように、「・事故等に至った状況、・関係する鉄道係員の事故等発生時の取り扱い、・関係する車両及び鉄道施設の事故発生時の状況」の記入を事業者に指導するよう、各地方運輸局に通達した。
 
  また、「備考」欄には、踏切事故については列車に衝撃した運転者等の年齢及び性別を記入すること、運転者等が身体障害者である場合は障害の内容を記入する、車両が原因である場合は車両形式を記入する、第3種及び第4種踏切で発生した事故で過去3年間に同じ踏切道で事故が発生している場合はその発生年月日を記入する等、重要な事故情報が書きくわえられることになった。
 その結果、平成22年度の「鉄道運転事故等一覧表」は、「備考」欄に事故で亡くなった人の年齢や性別が記入され、障害のあった方はその内容が記入された。事故の「概況」欄の記載には、ばらつきがあると感じられるものの、列車の速度や列車番号、係員の事故対応などが書かれるようになった。

 また、この「届出書」の事故情報をもとに作成された「鉄軌道の輸送にかかわる情報(平成22年度)」(以下、「情報」と略)では、事故に関係した歩行者や運転手の年齢別の統計があらたに作成され、高齢者の事故が多いことがわかった。踏切事故303件のうち、70歳以上の高齢者は26.1%、60歳以上では43.6%を占めている。(「情報」p.14)
 また、「情報」では、踏切種別ごとの事故件数が作成され、衝撃物別・原因別の事故件数では、自動車・二輪車・軽車両・歩行者別の統計も作成されている。

 これを見ると、平成22年度は踏切道100箇所あたりの踏切事故は第1種踏切では、0.81件、第3種踏切では0.81件、第4種踏切では1.64件となっている。
 また、自動車の直前横断による事故は踏切道100箇所あたり、第1種踏切では0.09件なのに対して、第3種踏切では0.81件、第4種踏切では0.84件と、事故の割合が第1種に比べて約9倍と、非常に高くなっている。(「情報」p.15

 「情報」の中で、鉄道局も指摘するように、一般的には第1種踏切が道路の交通量や列車の本数が第3種第4種に比べて多く、その上列車の速度も高いことを考えると、第3種第4種踏切がいかに事故の割合が高く、危険かがわかる。
 周辺環境も含め、事故情報を詳細に把握し、事故がどこでどのように起き、どのような人たちが犠牲になっているのかを分析することは、同じような事故を防ぐことにつながる。

 鉄道事業者がまず、事故を詳しく調査し、事故を防ぐ安全対策を講じることが大切だと思う。そして、事業者によって安全対策が確実に実施されているかを、行政はしっかりとチェックしていくべきだと思う。
《踏切の種別》
1種踏切道:警報機・遮断機があるもの
2種踏切道:現在はない
3種踏切道:警報機があるが、遮断機がないもの

4種踏切道:警報機・遮断機ともないもの
詳しくは「情報(平成22年度)」p.32~33参照

《参考》
「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成22年度)」(国土交通省鉄道局)
http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk8_000011.html