2013年10月24日木曜日

近畿行政評価局、踏切調査結果を発表

 今年2月、山陽電鉄荒井駅で起きた特急電車とトレーラー車との衝突事故を受けて、近畿行政評価局は、4月から7月にかけて、大阪府内の踏切道の安全確保に関する行政評価・監視を実施、その結果を公表した。

 近畿2府4県内のJR・私鉄の踏切4389カ所のうち、大阪府内の約3分の1にあたる239カ所を対象とした。対象となった踏切は無人で、警報機・遮断機つき、または警報機つき遮断機なしを対象とした。
 
 その結果、
①非常押しボタンの位置が不適切で、扱いにくいもの11カ所
②ボタン位置が見にくいもの5カ所
③路面劣化により、安全面で問題のあるもの1カ所
④異常の際の連絡先掲示が分かりにくいもの55カ所
⑤踏切内が狭く歩車道が分離されておらず、歩行者の安全のため、対策が必要なもの5カ所
⑥電動車いす利用者が横断に際し、開いている時間が短く渡り切れない恐れのある踏切4カ所
⑦踏切での車いすの利用者実態そのものを把握していない事業者が、調査対象5社のうち4社に     上った。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         
これらの点について、いずれも近畿運輸局を通じて各鉄道事業者に通知された。

 
 私たちが「運転事故等整理表」(国土交通省鉄道局)の踏切事故について集計したところ、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)では、東京圏(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県)より、踏切事故の件数が多いことがわかった。
 東京圏では、平成17年度から平成24年度までの8年間の踏切事故の合計件数は387件であるのに対し、大阪圏では、平成17年度から平成24年度までの踏切事故の合計件数が514件と、東京圏よりも多い。
 
 
 近畿行政評価局が、踏切の実態を調査し、近畿運輸局や近畿整備局を通じて各鉄道事業者に対して、踏切道の改善を勧告したことは、踏切の安全対策にとって大きな意味がある。
 踏切事故が減らない状況を一刻でも早く無くすこと、そのために鉄道事業者や行政は積極的に対策に取り組むべきだと思う。

《参考》
「踏切道の安全確保に関する行政評価・監視 結果報告書」
総務省近畿管区行政評価局2013年10月23日
http://www.soumu.go.jp/main_content/000255651.pdf

《参考記事》
「踏切調査の結果発表 近畿行政評価局」大阪日日新聞 2013年10月23日
 
 http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/131023/20131023022.html

2013年10月3日木曜日

踏切の障害物検知器、人を感知せず~JR横浜線川和踏切

 
  報道によると、JR横浜線の川和踏切の障害物検知器は、踏切内にいた女性や男性を検知していなかったことがわかった。
 
 装置は事故のあった川和踏切に1基設置されており、立体的にレーザー光線を出して、警報音が鳴り始めた後で、踏切内に数秒間とどまった物体を検知できるそうだ。

 検知すると、踏切前にある特殊信号発光機が光り、それを見た運転士が急ブレーキを操作する。従来のものよりも踏切内をくまなく検知できるという。
 
川和踏切の駅寄りにある障害物検知装置
(ポストのような形のもの)
                           2013年10月2日撮影
 特殊信号発光機は、踏切の手前50メートルと145メートルの位置にあり、運転士は発光器の約800メートル手前から、この発光器の発光を確認することが出来るという。しかし、現実には、手前には建物や樹木があり、どのくらいの距離から発光が見えるかは、走る場所によって異なると思う。
 
 
踏切の手前に設置されている特殊信号発光機
(オレンジ色のふたが付いているもの)
                  2013年10月2日撮影
 目撃していた人の話では、高齢の男性は、踏切道からはずれて線路でたおれていたという。そのため、女性も男性も障害物検知機の検知範囲を出てしまい、検知できなかったというのだ。また、国交省鉄道施設課によれば、高性能のレーザーでも、人が短時間で動くと検知しづらいという。
 
 踏切を通行するのは車両だけではない。通勤や通学の人、高齢の人も幼児を連れた母親も、足の不自由な人や目の不自由な人も通行する。
 私鉄では、非常ボタンが押されると、それに連動して電車が自動的に減速するしくみに変えてきているという。JRでも京浜東北線や山手線では導入しているそうだ。そうなれば、電車の運転士がわかりにくい特殊信号に頼らなくても電車を止めることができる。

 このような悲惨な痛ましい事故が二度と起きないよう、事業者には、さまざまなトラブルを検知して、事故を回避するしくみを講じてほしい。

《参考記事》
踏切の障害物検知器、人を感知できず JR横浜線事故」朝日新聞2013年10月3日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201310020620.html

2013年10月2日水曜日

お年寄りを助けようと 踏切へ~JR横浜線川和踏切

 報道によると、2013年10月1日午前11時半ころ、横浜市緑区中山町のJR横浜線鴨居ー中山駅間の川和踏切で、倒れていた高齢の男性を助けようとした女性が電車に撥ねられて亡くなった。
 男性は重傷だが、命に別条はないという。

 
 女性は、父親が運転する車で、一緒に会社にもどる途中だった。警報機の鳴っている踏切に男性がふらふらと入り、横たわるのをみると、女性は「助けなきゃ」と、父親が止めるのを振り切って車から飛び出し、男性を動かそうとしたとのことだ。

 現場の踏切は、中山駅から200mほど鴨居よりにある。幅は6mくらい、長さは12mくらいだろうか。第1種踏切で、警報機・遮断機が設置されている。また、非常ボタンが2か所に設置され、3D方式の障害物検知装置もある。方向指示器もあり、電車がどちらから来るのか矢印で示している。
踏切やホームで非常ボタンが押されたり、踏切でセンサーが立ち止まっている人や車を検知すると、踏切の異常を知らせる特殊信号発光器もある。

 事故当時、近くにいて踏切が開くのを待っていた男性が非常ボタンをおしたが、電車を止めるにはいたらなかった。
 また、電車の運転士も200mほど手前で踏切内に人がいることに気付き、非常停止をかけたが、踏切の手前で止まることができなかった。

川和踏切  女性は踏切の向こう側からお年寄りをたすけようと
踏切内に入った。               2013年10月2日撮影
 
  女性が車で待っていた踏切の停止線に立ってみると、下り列車の来た方角は列車が来るのが見えにくい。警報機が鳴っているものの、電車がまだ来ないと思われたのか、女性はお年寄りを助けるために、踏切に入っていった。

 女性は車の中で、踏切が開くのを待つ間、目の前で、人が電車に撥ねられるのを見過ごすことができなかったのだと思う。
 何もせずに、男性を死なせてしまうことができずに、自ら助けに行かれた。

踏切には、献花台がおかれた     2013年10月2日撮影
   報道によると、亡くなった女性は困っている人がいると放置できない優しい人柄だったそうだ。
そんな優しい人が一瞬のうちに、目の前で亡くなってしまうなんて、誰が信じられるだろう。
 女性といっしょに車に乗っていたお父さんの無念さはいかばかりだろう。

 
 踏切には、朝から女性の死を悼んで献花に訪れる人が絶えないらしく、花束がたくさん飾られていた。
 時折、涙のような雨が空から降りだす。空も、女性の死を悼むかのようだった。

 
《参考記事》
「父の目前 「助けなきゃ」 踏切内、女性はねられ死亡 JR横浜線」朝日新聞2013年10月2日