2014年1月27日月曜日

お年寄りの踏切事故、実態調査を

 1月12日付毎日新聞によると、独自の調査で、2005年から2012年の8年間で、少なくとも、100人以上の認知症の方が亡くなっていることがわかった。

 毎日新聞は、事業者の事故届出をまとめた「運転事故等一覧表」(国交省鉄道局)と、警察への取材から、上記の8年間に115人の方が認知症のため、踏切や線路内に入り込み、電車に撥ねられて亡くなっていることがわかったと報道、お年寄りの状況が調査されていない事故も合わせると、実態はもっと多くの認知症の方が亡くなっているのではないかという。
 
  しかし、国交省は、認知機能の衰えたお年寄りが、何人踏切や線路内に入って事故に遭っているのか、実態を把握していない。正確な人数や事故の状況がわからないと的確な再発防止策も出てこないと思う。事業者は、事故の報告の際に、認知症などについて把握し報告するとともに、国交省も事故の報告の際には、正確に記入するよう、指導すべきだと思う。
 報道によると、2012年3月6日夕刻、埼玉県川越市の東武東上線川越駅近くの踏切で、近くに住むお年寄りが電車に撥ねられて亡くなった。お年寄りの女性は、認知症を患っており、週に一度くらい徘徊することがあった。外に出ると、道がわからなくなり、帰れなくなることがあった。
 事故のあった日、家族は女性が外出したことに1時間ほど気付かなかった。その間に、女性はGPS機能付きの携帯電話や迷子札を持たずに、外に出てしまった。

   また、2011年10月には、西東京市の西武新宿線田無駅近くの踏切内で、高齢の女性が取り残され、遮断機が降りていたので引き返し、反対側もおりているのでまた反対側に行き、引き返したところを電車に撥ねられたという。お年寄りが、踏切内を一往復半していたことが踏切の監視カメラでわかった。
 お年寄りは遮断機が下りていたので「通れない」と考えたのか、踏切内を往復する姿を想像すると、実に痛ましい事故で、やり切れない思いになる。徘徊するお年寄りを介護施設に閉じ込めたり、縛り付けたりすることはできない。それでは、虐待になってしまう。

 お年寄りは、住み慣れた住まいで、住み慣れた街で、よく知っている人たちに囲まれて、穏やかに暮らしたいと思う。地域で安心して暮らせるよう、踏切の安全対策も講じてほしい。
 
《参考記事》
「認知症:鉄道事故調査を 遺族会代表、制度改善を要望」毎日新聞 2014年01月23日
http://mainichi.jp/shimen/news/20140123ddm012040046000c.html
 
「認知症:05年度から8年間、115人が鉄道事故死 妻が踏切で事故死、賠償請求137万円 在宅介護の家族苦悩」
毎日新聞 2014年1月12
http://mainichi.jp/shimen/news/20140112ddm041040099000c.html

「認知症鉄道事故死:踏切1往復半の末… センサー感知せず
毎日新聞 2014年1月13http://mainichi.jp/select/news/20140113k0000m040114000c.html

遮断機のない踏切の事故~調査対象拡大について~

 1月24日、国土交通省は、踏切事故の調査対象拡大について意見募集をする旨、ホームページに公表した。

 改正案は、第3種(警報機有り、遮断機無し)・第4種踏切(警報機、遮断機とも無し)の死亡事故について、事故調査の対象にするというもので、運輸安全委員会(以下、JTSBと略)の踏切事故の調査対象が拡大されることになる。

  
事故調査は、遺族にとって、大切な人がなぜ、突然この世を去らねばならなかったのか、その理由を知り、その死を受け入れる上で、必要なことだ。
 事故調査が公正に中立な立場で徹底して行われ、事故の再発防止に役立てられることが何よりも亡くなった人の命を生かすこと、決して私たちのところに戻ることのない命に、生きていた意味を持たせていただくことだと思う。

  私たち遺族の会では、以前から、JTSBや国交省鉄道局に対して、踏切での事故を調査すべきと要望してきた。
  今回の事故調査対象の拡大は、事故の再発防止にとって大きな前進といえる。遮断機のある踏切よりも遮断機のない踏切で事故が起きている割合が高いということから、危険性の高い踏切の事故調査から始めるということだ。

 
 現在は、JTSBが調査を開始する際、踏切やホームでの事故は、以下の要件がある。
①乗客乗務員に死亡者がある場合
②死傷者が5名以上の場合 
③鉄道係員の取扱い誤り又は車両・鉄道施設の故障、損傷などに原因があるおそれがあると認められるもので、死亡者を生じたもの(2008年、JTSBが発足する際あらたに付け加えられたもの)
④特に異例と認められる場合

 今回は、これに加えて、第3種・第4種踏切の死亡事故について、事故調査の対象にするというものだが、現在、全国の踏切道33,710箇所のうち、3種・第4種踏切は、3,850カ所(11%)ある。また、3種・第4種踏切では、事故が44件(踏切障害事故295件のうちの約15%、平成24年度)起きている。

《参考》
 ●改正案の概要等については、
  「パブリックコメント:意見募集中案件詳細」一覧に資料配布案内があります。
「鉄道事故等報告規則及び運安全委員会設置法施行規則の一部を改正する省令案等に 対す  る意見」
 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=675000001

●踏切箇所数、事故件数などは、
 国土交通省鉄道局「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成24年度)」

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(以下、国交省の資料まとめ)

《改正案の内容》

.背景

 第9次交通安全基本計画において、鉄軌道交通の安全に関して、運転事故全体の死傷者数減少を目指すこととしているが、踏切障害事故については近年、死亡数が120人前後で推移している。
 踏切障害事故について、独立性・中立性を有する運輸安全委員会の機動的な調査が、事故の再発防止や被害軽減に寄与すると考えられることから、事故リスクの高い第3種・第4種踏切道(以下、第3種踏切道等)における踏切障害事故について、調査対象を拡大する。

 これに関連して、鉄道事業者による地方運輸局への速報対象についても整備する。再発防止への寄与度が低いと思われるものについては、調査対象から除外する。

 (※)第3種踏切道:遮断機が設置されいないが、警報機が設置されいる踏切道
    第4種踏切道:遮断機も警報機も設置されていない踏切道

.概要

(1)鉄道事故等報告規則等の一部改正、
    3種踏切道等における死亡者を生じた踏切障害事故について、速報対象に追加
【鉄道 事故、軌道事故】
(2)運輸安全委員会設置法施行規則等の一部改正
   ①第3種踏切道等における死亡者を生じた踏切障害事故について、調査対象に
 追加する。【鉄道事故、軌道事故】
  ②その他
   a.作業中の除雪車の列車脱線事故について、調査対象から除外【鉄道事故】
      b.踏切障害事故、道路障害事故、鉄道人身障害事故に係る死傷者の
    調査対象要件について5人以上の死傷者を生じたものであって、死亡者を
    生じたもの」に変更 【鉄道事故、軌道事故】

 パブリックコメント募集
 「鉄道事故等報告規則及び運安全委員会設置法施行規則の一部を改正する省令案等に対する意見」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=675000001

 

2014年1月7日火曜日

幼い子の踏切事故~JR四国予讃線宮の窪踏切

 報道によると、2014年1月5日、午前10時40分ころ、松山市安城寺町のJR予讃線の踏切で、大阪市の保育園に通う5歳の男児が、松山発伊予西条行きの普通電車に撥ねられて亡くなった。
 
 
 
 愛媛県警とJR四国によると、運転士が踏切内にいた男児を見つけ、警笛を鳴らし、ブレーキをかけたが間に合わなかったという。
 報道によると、母親は子どもと松山市に住む母親の知人宅を訪れていた。男児は母親といっしょに来ていたが、弟といっしょに外に出て、踏切で電車を見ていたようだ。
 幼い子らが、大人らと一緒に出かけた見知らぬ土地で、踏切や線路内に入り、電車に撥ねられて亡くなる事故が起きている。慣れないところで、危険な場所をよく知らずに、先に行った子どもの後を追いかけて、電車に気付かずに踏切に入ってしまうことがある。
 
 長野県諏訪市の中大和踏切や茅野市の踏切でも、先に行った子どもの後を追いかけて入った子どもが電車に撥ねられて亡くなるという事故が起きているという。いずれも、子どもが慣れない土地で、警報機や遮断機のない踏切内に入り事故に遭っている。
(長野県の二つの踏切は事故後、遺族や地元の要望で、警報機や遮断機が設置された)
 

 先に行った子どもの後を追って、横断歩道や線路・踏切内に入り、自動車や電車に撥ねられて亡くなる事故が後を絶たないのは、子どもに「電車に注意しなさい」と大人が言ったり、看板を設置するだけでは、事故を防ぐ効果がないということを示している。子どもらが線路内に簡単に入れてしまう状況も考え直す必要があると思う。
 地方では、線路わきにフェンスもないところが多い。フェンスを設置したり、踏切の遮断棹を線路内に入れないような頑丈な柵にするなど、子どもや路に迷ったお年寄りが入れないようにする工夫も必要ではないかと思う。
 JR四国では、以前にも三輪車に乗った幼児が踏切の遮断棹の下をくぐりぬけてしまい、電車に撥ねられ亡くなるという痛ましい事故が起きている。
 高速で圧倒的な重量の車両が線路を走るのだから、線路内に人が入れないようにする対策も、鉄道事業者は取るべきだと思う。

 
《参考記事》
「踏切事故:5歳男児 電車にはねられて死亡 松山」 毎日新聞2014年1月5日18時41分
http://mainichi.jp/select/news/20140106k0000m040013000c.html
列車にはねられ男児死亡 松山 」 NHKニュース2014年1月5日 15時20分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140105/k10014264481000.html