2014年11月27日木曜日

電動車いすのお年寄りが亡くなった踏切~滋賀県長浜市JR北陸線木之本踏切

 報道によると、10月24日、午前10時20分頃、長浜市木之本町木之本のJR北陸線木之本踏切で、電動車いすに乗って、踏切を渡っていた高齢の男性が、木之本駅を通過する名古屋発和倉温泉行きの特急電車に撥ねられて亡くなった。特急の運転士が踏切内の男性に気が付いて非常ブレーキをかけたが間に合わなかったという。
 警察によると、木之本踏切の警報機・遮断機は、正常に作動していたという。
 
 11月23日、木之本踏切に行った。木之本踏切は、JR北陸線木之本駅のホームのそばにあった。警報機・遮断機のある第1種踏切で、非常ボタンも設置されていた。木之本駅には各駅電車は停車するが、特急は高速で通過する。駅を出て踏切を渡ると、国道に出るために信号がある。踏切の長さは20m位で幅は8~9mはあるだろうか。
 踏切道は駅と国道を結び、北陸自動車道の木之本インターチェンジも近くにあるためか、車両の通行が多かった。歩行者用の路側帯は両脇にあるが、それぞれ1mもなく狭い。歩行者は車をよけながら、踏切を渡らねばならない。
写真① JR北陸線木之本踏切。左に見えるのは、木之本駅のホーム。手前の
線路が下り線。男性はこちら側から踏切に入ったが、線路を渡りきれなかったらしい。
下りの特急は右側から来て、木之本駅を高速で通過する。2014年11月23日撮影
私が訪れた日は、SL北びわこ号が運行される日だった。木之本駅には、SLの運行予定を調べて行ったのではなく、偶然SLに出会ったのだが、SLファンが多いのには驚いた。木之本駅はSL北びわこ号の終点で、ここからSLは機関車にひかれて米原へもどる回送電車になる。そのせいか、駅周辺は、SLを撮影に来た人たちの車両が駐車していたり、SLに乗車して木之本駅まで来た子供連れの人たちで混雑していた。
 木之本踏切を渡って100mほど先に信号があるので、車両が踏切と信号の間に多く入ってしまわないように、この日は、警備員の男性が車両の誘導にあたっていたが、SLの運行のない日は、警備員が踏切に立つことはないという。
写真② 木之本駅に到着したSL北びわこ号。2014年11月23日撮影
電動車いすを運転する男性が、どういう状況で踏切内に取り残されたのか、報道では定かではない。しかし、踏切道の路側帯をみると、幅が狭いうえに、途中に、車両が路側帯に入らないようにするためなのか、小さなU字型の柵がある。(下の写真③)
写真③ 路側帯にU字型の柵がある。      2014年11月23日撮影


写真④ 木之本踏切を通過する下りの特急電車。   2014年11月23日撮影
電動車いすの男性が、写真③のこちら側から、下り線路を渡ったところで、写真のような小さくても、柵があったら、通行できない。後戻りして、車道に入り直して先に進まなくてはならない。
 後進しようと、電動車いすを操作しているうちに、早い特急電車は踏切に来てしまう(写真④)。
男性がどちらの路側帯を通行していたのかわからないが、いずれにしても狭い路側帯を車両に注意しながら、踏切を通行するのは大変だ。
 
 
 電動車いすの事故は、(独)製品技術評価基盤機構が事故調査にあたる。また、今度、消費者庁の消費者安全委員会も、新しく電動車いすの事故を調査することを決めた。
 調査にあたる委員会には、男性の乗っていた電動車いすが製品として問題がなかったかどうかだけでなく、踏切の安全対策に問題はなかったかどうかも調査して、事故が減るよう、対策を検討してほしいと思う。
 急速に高齢化が進んでいるという日本。お年寄りは、一人で自立して行政や周囲に頼らずに生きていくように言われている。また、お年寄り自身もなるべく人に迷惑をかけないように、子供らの負担にならないようにと懸命に生きている。電動車いすや手押し車などに頼って必死に歩いて買い物や通院に出かけるお年寄りが増えている。そんな中、町の中はバリアフリーが十分進んでいるとは言いにくい。とくに踏切やホームでは危険が大きいと感じる。
 高齢者に「自立せよ」というばかりではなく、自立して安心して生きていけるよう住みやすい環境をつくるべきではないだろうか。

最後になりましたが、亡くなられた男性のご冥福を祈ります。
 
≪参考記事≫
「特急と衝突、車いすの男性死亡 誤って進入? 長浜の踏切 /滋賀県」朝日新聞大阪2014年10月25日
http://digital.asahi.com/article_search/detail.html?keyword=%E6%9C%A8%E4%B9%8B%E6%9C%AC%20%E8%B8%8F%E5%88%87&kijiid=A1001220141025M-SI-1A-014&version=2014112605

2014年11月25日火曜日

ハンドル型電動車いすの事故調査を決定~消費者安全委員会

 報道によると、11月22日までに、消費者安全委員会は、高齢者がハンドルで操作する電動車いすの事故について、新たに事故調査をすることを決めた。
 消費者安全委員会は暮らしの中でおきる身近な事故の原因を究明している。同委員会によると、ハンドル型の電動車いすは、これまでに47万台出荷されている。メーカーから消費者庁への報告によると、2012年度以降、13件事故が起き、そのうち9人が死亡、4人が重傷を負っているという。
 また、13件のうち5件は踏切で起きているという。

 電動車いすは、主に、身体に障害を持った方が操作するジョイスティック型電動車いすと、足腰の弱った高齢の方が操作するハンドル型車いすとがある。
 高齢化が進む中、お年寄りの外出を助けるものとして、急速に電動車いすを利用する人が増える一方、事故も起きている。製品事故を調査する(独立行政法人)製品評価技術基盤機構では、電動車いすの事故を調査対象として、調査を行い、事業者に改善を求めたり、利用者に注意を促している。
  電動車いすは時速6kmと、結構スピードが出るが、道路交通法では歩行者扱いで、
  免許がなくても運転できる。乗車してみると、乗る位置が低いせいか、会場に作られた
  坂道の上り下りは怖かった。しかし、足腰が弱ってきたら、必要になるかもしれない。
  福祉機器展で。  2014年10月3日撮影

 しかし、事故は減少する様子を見せないばかりか、踏切で電動車いすに乗った高齢者が電車に撥ねられて亡くなったり、段差で転倒して重傷を負うなど、電動車いすの事故が続いているのが現状だ。
 畑村洋太郎委員長は「車いす自体にさまざまな安全対策が施されてはいるが、高齢者が利用するという視点からさらにできることがないか、考えたい」と述べたという。
 事故調査することで、事故の実態がわかる。同委員会には、電動車いすの安全対策や踏切の問題点を探り、事故を未然に防ぐ方法を探ってほしいと思う。

≪参考≫
電動車いす安全普及協会では、電動車いすの種類や利用上の注意などについて説明している。
http://www.den-ankyo.org/index.html

拙ブログでは以下などで、電動車いすや車いすの事故を取り上げた。
●「踏切事故の現場をたずねて~高知県佐川町白倉踏切」2010年4月26日
 
http://tomosibi.blogspot.jp/2010/04/blog-post_26.html
●「電動車いすの女性が亡くなった事故~阪急神戸線旧庄本踏切」2014年5月6日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/05/blog-post.html
●「電動車いすのお年寄りが亡くなった事故~大阪府高石市南海本線羽衣7号踏切」2014年7月22日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/07/7.html
●「車いすで踏切を渡るこわさ」2014年10月20日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/10/blog-post_20.html

≪参考記事≫
「ハンドル型電動車いす事故を調査 消費者事故調 」2014/11/22 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG22H0C_S4A121C1000000/

2014年11月8日土曜日

再発防止と事故調査~JR飯田線湯沢踏切の事故調査報告書

 
  10月30日、運輸安全委員会は、今年4月12日に長野県飯田市のJR東海飯田線湯沢踏切(第4種、警報機・遮断機なし)で起きた踏切死亡事故について、事故調査の結果を公表した。
 遮断機のない踏切については、今年4月から、死亡事故に限り、運輸安全委員会の事故調査対象に加えられた。
 4月以降、運輸安全委員会は、8件の鉄道事故に事故調査官を派遣している。残念ながら、その        うち6件は踏切事故である。また、5件は、遮断機のない踏切で起きた死亡事故である。
 
 JR東海飯田線湯沢踏切の事故調査報告書(以下、報告書と略)については、運輸安全委員会のホームページで公表されている。報告書を読んで感じた疑問点を挙げてみたい。
 
 
 今年4月12日、長野県飯田市にあるJR飯田線湯沢踏切(第4種、警報機・遮断機なし、以下湯沢踏切と略)で、近くに住む男性の運転する農耕トラクタ(以下、トラクタと略)と、飯田線天竜峡駅発中央線茅野駅行の下り普通列車(2両編成)が衝突し、運転していた男性が亡くなった。
 報告書の「4原因」(7ページ)では、事故が、男性が「小型特殊自動車の通行が禁止されている湯沢踏切道に、トラクタが侵入したものの通過しきれず、列車と衝突したことにより発生したものと考えられる」と書かれている。
 また、報告書「4原因」では、列車が湯沢踏切に接近していることに気付かずに運転者がトラクタを踏切に進入させたのは、湯沢踏切の幅員が狭く、通常はトラクタで通行しない踏切道であったことから、運転者が運転に意識が集中していたことが影響した可能性があると考えられるという。

1. なぜ、トラクターの運転者は踏切を渡ったのか?
 報告書3ページで、湯沢踏切の交通規制について、事故当時、異なる標識があったことを指摘している。
 踏切の両脇には、「二輪の自動車以外の自動車通行止め」の標識が設置されている。一方、湯沢踏切の20m手前、踏切を通る市道と県道との交差点には、「二輪の自動車以外の自動車通行止め、小特を除く」の規制予告を表示する指示標識が設置されていた。「小特」とは、小型特殊自動車のことで、農耕トラクタも含まれる。
 しかし、自動車通行禁止であるなら、踏切の入口にポールなどを設置して、自動車が進入できないようにすべきだと思うが、事故当時は設置されていなかった。報告書には、道路管理者が再発防止策として、事故後今年9月に金属製の杭を設置したとある。


JR東海飯田線湯沢踏切。男性はこちら側から、トラクタに乗って踏切に入って
渡ろうとしていた。柵があるので、斜めに入らねばならない。2014年4月29日撮影

   報告書4ページには、この指示標識が、踏切に設置されている標識と相違した表示であることから、本事故後に、この標識は撤去されたとあるが、どうしてこのような矛盾する表示がされていたのか、報告書には記述がない。
 信濃毎日新聞の報道によると、どのような経緯で異なる規制が表示されたのか、飯田署や長野県警に取材したが、警察ではわからないとの返答だった。
 報告書では、亡くなったトラクタの運転者がトラクターの通行禁止を知っていたかどうかはわからないとしている。
 事故がなぜ起きたのかを考える上で、交通規制がどうなっていたのかという点は重要なことだと思う。
 一人の人間の命が関わっているのだ。いつから、異なる交通規制の表示があったのか、もし調査したのなら記載されるべきだし、調査していないのなら調査すべきだと思う。

2. なぜ、トラクターの運転者は列車を確認できなかったのか?
 報告書の中で、湯沢踏切から列車の来た方の見通しについて、調査した結果が記されている。
 湯沢踏切付近は半径400mの右曲線(列車の進行方向に対して、以下、左右は列車の進行方向に対して)で、列車からすると線路は下り坂である。同踏切の左側は、市道が踏切で左に曲がり上り坂になっている。そのため、トラクタの男性が来た踏切左側から、列車の来た伊那上郷方面を見ると、この坂道が邪魔をして見通しが悪い。

湯沢踏切の周辺図と事故現場略図。豊橋を起点として
距離が書かれているので、わかりにくい。
図の中に本文中で説明されているポイントを記入するとよい。
(図は、運輸安全委員会事故調査報告書よりコピー)

報告書には、踏切の左側から伊那上郷駅方面を見た列車見通距離は、150mとある。また、トラクタが進んだとされる経路上で、もっとも列車を見通せる位置についても検討している。
 6ページには、トラクターが列車と衝突した踏切右レール上から約10m手前の位置付近が、最も列車の見通しがよいが、トラクタがその位置にいたとき、列車は踏切から約370m付近を走行していたから、トラクタの運転者は、接近する列車を確認することはできなかったものと考えられると指摘している。
 トラクタの運転者が、近づく列車に気が付かなかったのではなく、そもそも踏切から見える位置に列車が来ていなかったのである。


湯沢踏切の入口に立って、列車の来た伊那上郷駅方向を見る。
左には草が茂り、右側には鉄塔があって、列車の来た方角は
上り坂になっており、見えにくい。150mほど先に、警報機・
遮断機のある第1種踏切の唐沢踏切がある。2014年4月29日撮影
 また、列車の運転士からも踏切が直前まで見えない。報告書によると、運転士は約70m前方にある湯沢踏切道内の右レール付近に、右側を向いたトラクタを認めたと話している。運転士は、すぐに非常ブレーキを使い汽笛を鳴らしたが、踏切の右側にいたトラクタと列車の右側が衝突し、約140m走って止まった。
  唐沢踏切から見た湯沢踏切方面。下り坂になっている。列車の運転士は、
  踏切手前70mあたりで、湯沢踏切にトラクターに乗った男性がいることに
     気付いたという。唐沢踏切と湯沢踏切は150mほど離れている。
  報告書によると、運転士からの踏切見通しは40m。  2014年4月29日撮影
列車の運転士がトラクタを認めてから止まるまでの距離140mと70mを、単純にたすと210m。これからすると、この列車が、踏切の手前で安全に止まるには、210m以上必要だということだ。それなら、運転士が気が付いた70m手前よりも、もっと手前から、踏切の異常が運転士にわかるための対策をとるべきではないだろうか。

3. なぜ、トラクタは踏切内に取り残されたのか?
 ①湯沢踏切の入口には踏切注意柵があるため、トラクタは斜めに踏切に進入する。そのため、踏切を斜めに横断することになる。ななめに横断すると、レールに車輪がはさまったり、ハンドルをとられやすい。
 ②湯沢踏切に接続する道路は市道で、舗装されていない。踏切には、レールをまたぐ幅1.8m長さ2mの敷板が敷設されているが、敷板が短く、敷板と市道までの間はバラストと呼ばれる砕石が敷かれている。市道と踏切の敷板との間がゴロゴロとした石では歩きにくいし、トラクタでは、ハンドルをとられやすいと思う。
 ③幅が1.8m、長さ2mしか敷板のない踏切を渡るには注意が必要だ。トラクタ本体と田畑の耕うんを行うロータリー装置を含め、トラクタの全長は3.2m、全幅1.40m、全高1.24mある。トラクタが脱輪しないように速度を落としてゆっくりと渡らねばならない。
 報告書によると、トラクタの運転者は、変速レバーが前進2段(時速1.62km、秒速約0.45m)と、速度を落として踏切に入っている。男性は、踏切をゆっくりと慎重に渡っていたのだろうと思う。  トラクタの最高速度は前進6段(時速12.56km、秒速約3.49m)だが、走行中に変速できない構造だった。
 列車の汽笛を聞いた男性は、間近に迫っている列車に気付き、どれほどの恐怖を覚えたことだろうか。当時の男性の心境を思うと、やりきれない。

男性は、こちらからトラクタで踏切を渡ろうとした。敷板と市道の間は
舗装されていない。ゴロゴロとした砕石が敷かれ、渡りにくい。
                                 2014年4月29日撮影

4. 運転者に唐沢踏切の警報音は聞こえただろうか?
 報告書5ページには、湯沢踏切の手前150mにある唐沢踏切(第1種、警報機・遮断機あり)と、約100m先にある座光寺踏切(第1種、警報機・遮断機あり)の両踏切の警報音は、湯沢踏切で聞くことができたとある。また、座光寺踏切の全方位型警報灯が明滅するのが見えたと記述されている。
 湯沢踏切を通行する者は、湯沢踏切に警報機がなくても、列車の来た方角150m先にある唐沢踏切の警報音や、元善光寺方向100m先にある座光寺踏切の警報音と警報灯の明滅を見て、列車の接近に気付かなくてはいけないとうことだろうか?

  しかし、トラクタを運転していたら、トラクタの走行する騒音(報告書によると、定常走行騒音75dB)で、列車の来た方角にある唐沢踏切の警報音は聞こえないだろうと思う。
 また、報告書によると、この湯沢踏切手前の付近は住宅があることから、第4種踏切の手前では汽笛合図を行うことを指示する標識が、設置されていないという。
 つまり、湯沢踏切の手前では、列車の接近を知らせる汽笛が鳴らされない。列車の接近を知るには、湯沢踏切の付近にある唐沢踏切や、座光寺踏切の警報音などに頼らなくてはならないということだ。
 

 警報機や遮断機のない踏切では、どちらから列車が来るのかわからない。湯沢踏切のような列車の来る方角が見通しの悪いところでは、踏切通行者にとっては列車の接近していることが、列車の運転士にとっては踏切の異常事態がわからず、危険だと思う。
湯沢踏切から元善光寺駅方面を見る。100mほど先に警報機・遮断機のある
座光寺踏切がある。                      2014年4月29日撮影

  遮断機のない踏切で事故調査を開始するにあたり、運輸安全委員会の後藤委員長は、3月26日の会見で「運輸安全委員会としては、原因究明のための適確な調査を行うことで、踏切障害事故の再発防止及び被害軽減に寄与して参りたい」と語っていた。
 遮断機のない踏切で事故調査が開始され、踏切事故の実態が広く一般に知られることになった。踏切事故を無くしていくために、さまざまな分野の方々の知見と英知が集まることを期待したい。

≪参考≫
運輸安全委員会ホームページ
「RA2014-9 鉄道事故調査報告書 Ⅲ 東海旅客鉄道株式会社 飯田線 伊那上郷駅~元善光寺駅間  踏切障害事故 平成26年10月30日」
http://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/rep-acci/RA2014-9-3.pdf
拙ブログ、湯沢踏切については
「遮断機のない踏切で事故調査~JR飯田線湯沢踏切」2014年4月30日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/04/jr_30.html
≪参考記事≫
「トラクター進入 内容違う2標識 飯田署事故後に1つ撤去」信濃毎日新聞2014年10月31日付

2014年10月20日月曜日

車いすで踏切を渡る怖さ

 小児がんの治療から、車いすの生活を送ることになった樋口彩夏さんが、踏切を車いすで渡るのがいかに怖いか、彼女の経験を書いてくださった。

 彼女は新聞のコラムで
私はできることなら、踏切を通りたくありません。車いすのタイヤが線路にはまって動けなくなるという、怖い思い出があるからです。」と書いている。
 梅雨の真っただ中のある日、彼女は手でこぐ自転車・ハイドバイクの練習へ出かけた。そこで、同じ境遇の人たちとおしゃべりをするのが楽しみで、彼女にとっては、両下肢麻痺特有の悩みを打ち明けられる唯一の場なのだという。

 目的地までは、自宅の最寄り駅から急行電車で8駅を30分、そこから先は車いすをこいで15分という道のりだが、途中に唯一の難所である踏切がある。
 厄介なのが、レールの溝だという。この溝に車いすの前輪(小さいほうのタイヤ)がはさまらないように、前輪を浮かせたまま、後輪だけで前に進まなければならない(以下:ウィリーと略)。

 樋口さんが電車から降りて、踏切を渡ろうとすると小雨が降ってきた。車いすの操作で手がふさがるため、樋口さんは傘をささない。踏切を渡りはじめ、2本ある線路のうち、最初の1本は2回のウィリーで難なくクリアした。
 樋口さんが、2本目にさしかかったとき、雨に濡れたハンドリム(車いすをこぐところ)から手がすべって、ウィリーを失敗した。 前輪がレールの溝にはまって、身動きがとれなくなってしまった。

 その直後に、けたたましい踏切の警報音が聞こえてきた。見る見るうちに遮断機も降りてしまった。
 その時、踏切の向こうから、通りかかった女性が、踏切脇の緊急停止ボタンを押してくれた。女性が押したのと同時くらいに、電車は駅のホームに停車した。運よく、電車はもより駅に停車する急行だった。
2013年8月2日、車いすに乗って踏切を渡っていた男性が
踏切内に取り残されて、電車に撥ねられて亡くなった。
障害物検知器は、男性を検知しなかった。
神戸市北区、神戸電鉄田尾寺駅~二郎駅間にある踏切
2014年9月28日撮影
樋口さんは踏切から出られて、事なきをえた。しかし、迫りくる電車を前に、逃げることも助けを求めることもできず、恐怖に苛まれながら亡くなっていった人々もいることを思うと、胸が痛むという。
 樋口さんは、自分の経験したことは、踏切と車いすの物理的な相性の悪さに、気の緩みが加わって招いたことで、自分が細心の注意を払ってさえいれば、防げたことかもしれないという。しかし、では、それが車いすが関連した踏切事故すべてに通ずるかと言えば、それは間違いだと指摘する。
 
 
 樋口さんは、警報音が鳴る時間が短く、車いすで渡りきれないなど、当人ではどうしようもない事情を抱える踏切も存在しているのが現状だと指摘する。

 踏切を通行する人の注意だけでは解決できない問題を抱えているのが、今の踏切だ。そういう問題を解決するのが、道路を管理する自治体や踏切の保安設備を整備する事業者ではないのか。
 新聞やニュースで、車いすや電動車いすが関係する事故が目につく。一歩間違えば自分も同じような事故になったかもしれないと、樋口さんは思う。そして、踏切でもう、これ以上悲惨な事故が起きないようにと願っている。

≪参考記事≫
「車いすで踏切を渡る怖さ」樋口彩夏(ひぐちあやか) 2014年7月15日朝日新聞アピタル
http://apital.asahi.com/article/ayaka/2014071500007.html


2014年10月10日金曜日

事故が相次ぐ阪急京都線松原通踏切

 報道によると、今年4月3日午後10時40分ころ、京都市右京区の阪急京都線松原通踏切で、乗用車が、誤って踏切から線路内に入り、電車と衝突するという事故が起きた。運転していた女性は車外に脱出していて無事だった。
 この踏切では、昨年1月にも乗用車が、踏切から誤って線路内に入って大阪方面へ150mほど走り、特急電車と衝突、運転していた男性が亡くなった。地元の人たちは、危険な踏切なので、松原通踏切を「魔の踏切」と呼んでいるそうだ。
 今年6月に、京都府警右京署と鉄道会社と京都市が、事故が続いている松原通踏切の安全対策について検討する二回目の会合を持った。
 その結果、非常ボタンの設置や踏切内に見えやすい線を引くなど、暫定的な対策をとることを決めた。

阪急京都線にある松原通踏切。幅は3m程度で、線路と道路は
斜めに交差している。こちら側の道路は、三差路になっている。
                           2014年9月28日撮影

 松原通踏切は、京都市右京区にあり、阪急京都線の西院駅と西京極駅の間にある。幅は3mくらいだろうか。阪急京都線は複線で、踏切の長さも20mあまりある。警報機と遮断機が設置され、障害物検視装置が設置されている。4月の事故当時は、非常ボタンは設置されていなかった。9月28日、踏切に行ったら、非常ボタンらしいものが黒いビニールをかぶせられていた。新しく設置されたらしいが、まだ、作動していないのだろう。
 線路と道路は斜めに交差しており、道路の端はぎざぎざになっていて路側帯はなく、歩行者は歩きにくい。
 踏切の北西側は五差路、南東側は三差路になっていて、車両の通行や人の往来が多い。近くに大型ショッピングセンターがあるせいか、大通りから車両が頻繁に入って来るようだ。
 狭い踏切道で車は対面通行できないから、車は一台ずつ交代で踏切を渡っていた。

 
 踏切にライトはあるものの、線路脇に明るい街灯がないのか、夜になると踏切道がわかりにくくなるそうだ。二つの事故は、夜、雨天時に起きており、踏切横のフェンスや踏切入口にある木々が、踏切内を見えにくくしていたのではないかと思う。
 複雑に道路が集まる踏切で、交通量も多いのだから、道路の幅を広げ歩道を確保し、線路と直角に交差させるなど、踏切道そのもの改善が必要ではないだろうか。
 また、西院方面の線路は、松原通踏切を過ぎると、下り坂で地下のトンネルに入っていくため、この方向を見ると暗く感じる。夜間はなおさら、周辺の街灯が暗いと、線路が見えにくいかもしれない。

 松原通踏切で、同じような事故が起きないよう、関係する事業者や自治体には、急いで安全対策を講じてほしいと思う。

 最後になりましたが、松原通踏切で亡くなられた方のご冥福を祈ります。

線路と道路が斜めに交差している。そのうえ、歩道は確保されていない。
踏切の幅は、車1台が通行するのがやっとだ。
                                  2014年9月28日撮影
阪急西院駅は地下にあるため、京都線の線路が地下のトンネルに入っていく。
電車の来る方向は暗くわかりにくい。           2014年9月28日撮影
≪参考記事≫

「線路に車、電車が衝突 阪急京都線」京都新聞2014年4月4日http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140404-00000000-kyt-l26


 

2014年10月8日水曜日

ノーベル平和賞予測リスト、「憲法9条」がトップ

 10月10日に、ノルウェーのオスロで、2014年のノーベル平和賞が発表される。報道によると、その受賞予測のトップに「憲法9条を保持する日本国民」が急浮上した。
 毎年、受賞予測を発表し、的中した実績のある民間研究機関・オスロ国際平和研究所が、3日、ウェブサイト上の予測リストを更新、それまでランク外だった「憲法9条」がトップに上がった。
 これまで、同リストにはフランシスコ・ローマ法王が筆頭候補だったそうだ。3日付けで「憲法9条」が法王と交代した。
 報道によると、オスロ国際平和研究所長のハープウィケン氏は、
「中立や不可侵、平和主義につながる原則を掲げる憲法9条は、軍事的な紛争解決が多用される昨今において重要であるにもかかわらず、十分に光が当たっていない」と話しているという。

 戦争の放棄を定めた憲法9条をノーベル平和賞に推した「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会(事務局・神奈川県相模原市)には、今年4月に、ノルウェー・オスロのノーベル委員会から推薦を受理したという連絡があり、「憲法9条」は正式に平和賞候補になっている
 事務局のホームページによると、憲法9条に平和賞授賞をもとめる署名は10月2日時点で、41万人分集まっているということだ。
 戦後70年、日本が他国と一度も武力衝突を起こさずに来たのは、憲法9条の存在が大きい。
 
 憲法の理念を守ろうとする人たちと、憲法の中身を変質させ戦争ができる国にしようとする人たちとのせめぎあいの中で、守られてきた平和主義。それは、日本だけでなく、世界中の人たちが共感できるものにちがいない。
 先の戦争で失ったたくさんの命。その尊い犠牲を忘れず、戦争を無くし平和な世界をつくるのが、戦後に生きる私たちのつとめではないかと思う。その中心に、憲法をすえていこうと思う。

≪日本国憲法から、前文と第2章第9条を抜粋≫

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

   第二章 戦争の放棄
第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

≪以下のホームページから署名ができます≫2014年10月8日追加
「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会
http://nobel-peace-prize-for-article-9.blogspot.jp/
以下のキャンペーンのリンクからネット上で署名ができる仕組みになっています。
http://www.change.org/p/世界各国に平和憲法を広めるために-日本国憲法-特に第9条-を保持している日本国民にノーベル平和賞を授与してください-please-award-the-nobel-peace-prize-to-the-japanese-citizens-who-have-continued-maintaining-this-pacifist-constitution-article-9-in-particular-up-until-present?recruiter=162762234&utm_campaign=signature_receipt&utm_medium=email&utm_source=share_petition
≪参考記事≫
「9条、なぜノーベル賞トップ予測『戦後の歩みに共感』」朝日新聞2014年10月7日10時28分
http://digital.asahi.com/articles/ASGB64J07GB6PTIL010.html

2014年10月3日金曜日

交通事故被害者団体、第10次交通基本計画について意見提出

 9月24日、内閣府で、第10次交通基本計画についての意見聴取会があった。第9次交通基本計画は平成27年度で終わる。そのため、交通事故被害者団体から、平成28年度から始まる第10次交通基本計画に盛り込むべき内容について、意見を聞くというものだ。
 意見聴取会への参加については、内閣府のホームページで募集があり、意見を提出して参加を希望すると、審査の結果、参加が認められる。
 今回の意見聴取会に、踏切事故遺族の会としても意見を提出し、聴取会参加を希望したところ、意見聴取会の参加が認められた。
 
 9月24日は、各地の交通事故被害者団体が参加し、それぞれ、第10次交通基本計画に盛り込んでほしい内容を述べた。意見聴取会では、有識者、内閣府や警察庁、国土交通省などの担当者が被害者団体の意見を聞いた。
 
 踏切事故について、第9次交通基本計画の対策を引き続き進めつつ、次期の交通基本計画に盛り込んでほしいのは、緊急に対策が必要な踏切を見直し、高齢者や障害者等への対策を強化することだ。また、事故の再発防止対策に対する知見や経験を集めるため、事故情報を正確に収集し、事故情報を鉄道事業者だけでなく、広く、行政や沿線住民、専門家等と共有することが必要である。
 
 
 長期的には、道路と鉄道が交差する踏切道における事故は、踏切道の改良等の安全対策が進められた結果、減少傾向にあるといわれている。(参考:国土交通省鉄道局「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報平成25年度」、以下「情報」と略)
 しかし、依然として踏切事故は鉄道運転事故の約4割を占めており、改良するべき踏切道が残されている。
 急速に高齢化が進む中、近年、踏切内に取り残されたり、線路内に迷い込むなどして、電車に撥ねられて高齢者が亡くなるという悲惨な事故が多発している。
 上記の「情報」の中で、国交省が認めているように、踏切道においても、60歳代以上の通行者がかかわる踏切事故が約半数をしめている。高齢者が関わる踏切事故を無くすことは、踏切事故を大きく減らすことにつながる。
 また、車いすや自転車に乗って踏切道を渡っていた高齢者や障害のある方が踏切内に取り残されて電車に撥ねられて亡くなるという事故も後を絶たない。
 しかし、踏切道の9割近くを占める第1種踏切道(警報機・遮断機のある踏切道)で起きた事故は、運輸安全委員会では、事故調査の要件(死傷者が5名以上など)が厳しく、ほとんど事故調査されない。したがって、事故への有効な安全対策が講じられることはほとんどないといえる。せいぜい、踏切や駅などで、「踏切事故防止キャンペーン」と称して、チラシを配り、通行する人や運転手に注意を促すくらいだ。
 通行者が電車に撥ねられ亡くなる事故があったりすると、「踏切を渡るときは左右を確認して渡ってください。異常を発見したら、非常ボタンを押してください。押したら踏切内に絶対入らないでください」と、鉄道事業者は、踏切やホームでアナウンスを繰り返す。
 人間に注意を促すだけでは、事故が無くならないのは、危険や安全を研究する人たちの中では、常識で、人間の不注意やミスを防ぐ対策があらゆるところで講じられている。しかし、踏切ばかりは、通行する人に大きな負担を強いている気がする。
 
 1時間のうち40分以上閉まっている「開かずの踏切」では、遮断機が開いたから渡りはじめると、またすぐに警報機が鳴りだす。お年寄りや足の不自由な通行者は、警報時間内に渡りきれないことがある。遮断機が閉まっても、すぐに電車が来るわけではない。
 しかし、戸惑っていると30秒や40秒は、すぐにたってしまう。お年寄りが焦っているうちに、遮断機内から出られずに、電車に撥ねられて亡くなるという事故が起きている。
 そういう状況をセンサーで検知して、電車を踏切の手前で安全に停止させることはできないのだろうか。
横浜市鶴見区にある生見尾踏切。2013年8月23日、杖をついて
渡っていたお年寄りが渡りきれずに、電車に撥ねられて亡くなった。
踏切道は、中ほどに向かって盛り上がり、3路線が走る。
退避場所の向こうには、東海道線の踏切がある。
左に跨線橋があるが、エレベーターやスロープはない。
                           2013年8月24日撮影

足立区千住東にある踏切。自転車を押しながら渡っていた
お年寄りが、警報機が鳴りだしたので、戻ろうとしたが
踏切内に取り残されて、電車に撥ねられて亡くなった。
22mと長い踏切で、通学路でもある。カーブの途中にあるため、
路面に凹凸がある。              2014年2月12日撮影

 
 
 今年6月、警視庁が鉄道事業者や国土交通省等の安全担当者を前に、危険な踏切は高齢者の生活にとって障害になっているとして、人を検知する高感度のセンサーの設置や非常ボタンの増設などを要請した。高齢者や障害のある人の利用が多い踏切では、このような対策が急がれる。
2013年8月2日、車いすに乗って踏切を渡っていた男性が
踏切内に取り残されて、電車に撥ねられて亡くなった。
障害物検知器は、男性を検知しなかった。
神戸市北区、神戸電鉄田尾寺駅~二郎駅間にある踏切
2014年9月28日撮影
平成19年に、国交省が緊急に対策が必要な踏切の点検をしてから、7年がたつ。
その間に、運行本数が増えたり、スピードの速い電車が走ることになった踏切もあるだろう。各地の踏切の実態を把握し、それぞれの踏切の実情にあった緊急対策を急いでほしい。
 
 踏切が無くなることが、事故を無くすことにつながる。しかし、鉄道の立体化は時間と費用がかかる。すぐにこのような対策が進められないときは、できることから、一つ一つ進めてほしい。
 路面が悪ければ、整備し、路側帯がないところには設置する。また、踏切道の幅を広げることも必要かもしれない。開かずの踏切などでは、エレベーター付きの歩行者用立体横断施設なども設置してほしい。
 
 お年寄りや障害のある方も、自分の住む地域で、自立して生活するよう求められている。ならば、行政や鉄道事業者は、お年寄りや障害のある方も、安全に安心して地域で生活できる環境を整えるべきではないのか。
 踏切の安全対策に関わる人々には、もうこれ以上できる対策はないとあきらめずに粘り強く、事故をひとつひとつ無くす努力をしてほしい。ひとつひとつの大切な命を救ってほしい。
横浜市緑区にある川和踏切で、踏切内に倒れていたお年寄りを
助けた女性が、電車に撥ねられて亡くなった。踏切横には、
献花台が設けられ、多くの人が献花に訪れた。事故から1年、
JR東は川和踏切に献花台を設けている。 
写真は事故翌日の2013年10月2日に撮影したもの
≪参考≫
内閣府「第9次交通基本計画」平成23年3月31日
http://www8.cao.go.jp/koutu/kihon/keikaku9/keikakuall.html

2014年9月30日火曜日

女性が亡くなった事故から1年~横浜市中山駅川和踏切

 2013年10月1日、横浜市のJR横浜線中山駅近くの川和踏切で、倒れていたお年寄りを助けようとした女性が、お年寄りを助けた後、電車にはねられて亡くなった。

 川和踏切には、警報機や遮断機が設置され、3D方式の障害物検知装置や非常ボタンも設置されていた。踏切にいた男性が非常ボタンも押したということだが、電車が踏切の手前で停止するには至らなかった。
 踏切の手前はカーブしており、電車の運転士からも、電車が安全に停止できる位置からは踏切にいる女性たちが見えにくかったのだろうと思う。

 私が事故の翌日、踏切に行って最初に感じたのは、「こんなにいろいろな安全装置が設置されているのに、なぜ、女性たちを救えなかったのだろう」という憤りだった。
後日、報道から、鉄道会社が設置する3D方式の検知器は、人を検知する設定になっていないことがわかった。検知器は、車両を検知するためのもので、人を検知する設定にすると、小動物なども検知してしまい、その都度電車を停止させて安全確認していると、運行に支障が出るので、人を検知する設定にしていないということだった。
女性が亡くなった踏切の横に、JR東が献花台を設けた。
朝早くから、献花に訪れた人がいた。2014年9月30日撮影
  「人の命と、電車のダイヤとどちらが大事なのだろう?」と、多くの人が思ったと思う。電車に乗っていると、たびたび、電車を止めて安全確認すると放送されることがあるが、私はそれで鉄道会社に対して不満を持つことはない。むしろ、安全対策をしている会社なのだと思って、感心する。

 近年、お年寄りや障害のある方が踏切内を渡っていて、途中で警報機が鳴りだし、踏切内に取り残されて電車に撥ねられて亡くなるという事故が後を絶たない。
 このような状況を重く見て、今年6月、警視庁は、国交省や鉄道事業者などに集まってもらい、踏切の安全対策を強化することを要請した。踏切に人を検知する高感度のセンサーを設置することや、路側帯の拡幅や設置、非常ボタンの増設などを要請したが、どれも急がれる対策ばかりだ。

 お年寄りや障害のある方にやさしい踏切は、子供を連れたお母さんや、若い人にもやさしい踏切でもあると思う。踏切内に取り残された人を検知して、電車を減速するとか停止させるなどの安全対策を講じてほしい。未然に事故を防ぐ手立てを早急に講じてほしい。
JR横浜線の川和踏切は車の交通量も多い。
やっと開いた踏切には、路線バスやバイクが行きかい、
路側帯をお年寄りや、買い物の主婦らが急いで渡る。
2014年9月30日撮影
最後になりましたが、亡くなられた女性のご冥福を祈ります。
 
 ≪参考≫
拙ブログでは、昨年10月、この事故について書いた。
「踏切の障害物検知器、人を感知せず~JR横浜線川和踏切」2013年10月3日
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/10/blog-post_3.html
「お年寄りを助けようと踏切へ~JR横浜線川和踏切」2013年10月2日
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/10/blog-post.html
今年6月の警視庁の要請については
「踏切事故防止対策の強化を~警視庁が要請」2014年6月4日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/06/blog-post.html
≪参考記事≫2014年10月2日追加
「神奈川)踏切の悲劇、娘で最後に…横浜線事故から1年」朝日新聞2014年10月2日
http://digital.asahi.com/articles/ASGB140W1GB1ULOB00F.html?_requesturl=articles%2FASGB140W1GB1ULOB00F.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGB140W1GB1ULOB00F

2014年9月29日月曜日

遺族が意見陳述~シンドラーエレベーター事故

 平成18年6月3日、港区のマンションで、エレベーターの扉が開いたまま突然上昇し(戸開走行)、エレベーターから降りようとしていた高校生が、エレベーターのかごと建物の天井にはさまれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。

 今日29日、この事故の刑事裁判の公判があった。事故当時、エレベーターの保守管理をしていた保守管理会社SECの幹部らと、シンドラー社の点検責任者計4人が、保守管理を怠ったとして、業務上過失致死罪で起訴された。
 今日まで、高校生の母親である市川正子さんは、54回の公判を傍聴してきた。市川さんは、意見陳述で「エレベーターは利用する人の命を預かっている。私たちはエレベーターが安全だと思って利用している。エレベーターの安全を守る責任が被告らにはあるのに、保守点検を怠り、大切な息子を突然奪った責任は重い」として、「被告らを有罪にしてほしい」と、裁判官に訴えた。

 事故から8年あまり、息子さんを失った消えることのない悲しみと、エレベーターの安全を管理するはずの会社と保守点検会社への憤りを抱えて過ごしてきたと語る市川さんの声は、震えていた。
 傍聴に駆け付けた市川さんの友人や、亡くなった息子の大輔さんが所属していた高校の野球部の監督、チームメイト、先輩・後輩らからの中には、市川さんの陳述を聞いて、もらい泣きする声や、目をうるませる人がいた。

 私たちは、日常、エレベーターを使わずに生活できない。乗るエレベーターを選ぶこともできない。私たちは、安全だと思って利用している。それなのに、エレベータ会社や保守点検会社が、必要な点検や、二重ブレーキなどの必要な安全対策をとらず、将来のある若者の命を奪った罪は大きい。

 被告らは、無罪を主張しているが、市川さんの陳述を真摯に受け止めて、事故を二度と起こさないためには何が必要なのか、あらためて自分に問い直してほしい。

≪参考記事≫
「エレベーター事故死:悲しみ憤り消えず 遺族が意見陳述」
http://mainichi.jp/select/news/20140929k0000e040147000c.html
毎日新聞 2014年09月29日 11時29分(最終更新 09月29日 12時46分)

2014年9月25日木曜日

踏切事故情報の開示と事故の再発防止

 今年7月15日付で、国土交通省に、「運転事故等整理表」の開示をもとめ、情報公開請求した。
これに対して、8月27日付で、国交省情報公開室は、備考欄に記入された年齢・性別と、事故を報告した鉄道事業者以外の法人を特定できる情報について開示しないと回答してきた。
 国土交通省鉄道局がホームページで毎年公表する「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報」(以下、「情報」と略)の1ページには、「この情報により、鉄道事業者の安全の確保に対する意識
が高まるとともに、鉄道の利用者や沿線住民等の安全利用等に関する理解が促進されるよう期待しています」と書かれている。
 
 
 この「情報」の統計のもととなる「運転事故等整理表」は、さまざまな鉄道事故を分析し、再発防止策を検討して行く上で、重要である。特に、事故関係者の性別や年齢は、個々の事故の特徴を分析する上で欠かせない情報である。
 各運輸局には、毎月、鉄道会社から事故の届け出が提出される。この届け出の1年分を国土交通省鉄道局がまとめ、統計をとり、「情報」として、毎年公表している。
 
 

 鉄道局が、平成22年4月1日付で出した通達(国鉄施第88号、国鉄安第90号「『鉄道事故等報告規則等の事務取扱いについて』の一部改正について」)により、鉄道事業者が、事故関係者の性別・年齢を「鉄道運転事故等届出書」の「備考」欄に記入することが義務づけられた。
 その結果、平成22年度より、鉄道局においてこの情報を集計し、事故関係者を年齢別に集計した結果が「情報」の中で公表されることとなった。
 この統計から、踏切事故の半数近くに60歳代以上の高齢者が関わっていることがわかり、踏切事故においても、高齢者に対する安全対策を講じる必要があることがわかった。
 このように、踏切事故を無くすための対策を考える上で、事故関係者の性別や年齢は重要で、欠かすことができない。
 
 
 また、「運転事故等整理表」で、事故を報告した鉄道事業者以外の法人名および法人が識別できる情報等については、事故情報の基礎的な情報であり、事故の再発防止にとって重要であり、開示される必要がある。事故情報の開示は、事故の事実の開示であり、事故に関係した法人に対する評価をするものではない。事故の事実全体を把握することで、再発防止策が検討できる。
 事故の情報が公開され、鉄道事業者のみならず、行政、沿線住民、鉄道利用者など、あらゆる人々と共有することで、事故を無くすための英知、経験が集まり、事故を無くすことにつながると思う。
 

 事故の状況を正確に知ることは、私たち遺族の願いでもある。突然、大切な人がなぜ、この世を去らねばならなかったのか、納得のいく説明を受けたいと思っている。病気で亡くなるのであれば、医師から 病気について説明を受け、大切な人の死を受け入れる準備ができる。
 しかし、私たちは、事故で突然大切な人を失い、混乱している。葬儀をしたのに、どこからか、「ただいま!」と、亡くなった人が帰ってきそうな気がする。亡くなった人の使っていたものを片付けることができない。
 正確な情報をわかりやすく説明され、同じような事故が起きないよう、事故の対策を講じていただくことは、私たちが大切な人の死を受け入れる上で必要であり、亡くなった人の命を生かすことでもあると思う。
 踏切事故の状況は、事故の現場にだれか居合わせればわかることだろうが、事故のほとんどは、事故調査もされないため、私たち遺族は事故の状況を正確に知ることができない。鉄道会社が、事故の情報を正確に把握し、届け出ることが必要である。そして亡くなった人たちの命を無駄にしないよう、二度と同じような事故が起きないよう、再発防止に取り組んでいただきたいと思う。 
 


2014年9月11日木曜日

白杖、点字ブロックは命綱~全盲の少女が蹴られてけが

 7月末、目の不自由な男性が、飼っている盲導犬のオスカーといっしょに通勤していたところ、何者かがオスカーをとがったもので刺したことがニュースでわかり、刺した人物に憤りを感じたばかりだ。オスカーは飼い主が驚くと危ないと思ってか、ほえなかったので、勤務先の同僚がオスカーの背中から血が出ているのを教えてくれるまで、飼い主の男性はオスカーが刺されていることに気がつかなかった。
 それなのに、また、目の不自由な女子生徒が、何者かに右ひざの裏を蹴られるという事件が起きた。

 報道によると、9月8日、女子生徒が午前7時50分ころ、川越市のJR川越駅前のコンコースを白い杖をたよりに、歩いて登校していたところ、前から来た人物が女子生徒の杖にぶつかって転倒したようだった。その直後、女子生徒にその転倒したと思われる人物が近づき、生徒の右ひざの裏を硬い靴で蹴った。

 近くにいた年配と思われる男性が、女子生徒を蹴った人物に向かって注意する声が聞こえたが、その人物は無言で立ち去ったという。
 女子生徒は、その日は登校したが恐怖から被害について話せず、帰宅後病院で治療してもらった。しかし、翌日も痛みがあり、授業に支障が出たため、校長に被害について話したという。

 目が不自由なために、白杖で点字ブロックをさがしながら歩く心細さは、想像に難くない。それなのに、女子生徒の白杖にぶつかった人物は、自分が転んだことに腹をたてたのか、目の見えない女子生徒に暴力を奮って去った。自分の姿が相手には見えないと思って、取った行動だろう。卑怯としか言いようがない。
 
 
 障害を持って精いっぱい生きる人たちに、もう少しやさしく接することができないのだろうか。点字ブロックの上に自転車やバイクが駐車していると、行き先がわからなくなるという。また、白杖をつきながら歩いている人に私たちがぶつかると、目の不自由な人は体の向きが変わってしまい、方向がわからなくなるという。私たちが注意して、目の不自由な人にぶつからないように歩くことは簡単にできるはずだ。
 女子生徒は、相手は自分のことをわかっても自分は相手のことがわからない、こわいと言っている。周囲の人たちの理解や支えを信頼するからこそ、外を歩くこともできると思う。それが今回のように、信頼できないことが起きると、歩くことさえ、不安が募ると思う。女子生徒に暴行を加えた人物は、早く名乗り出て、謝罪してほしい。

 白杖や点字ブロックの意味をあらためて、社会に知ってもらう必要もあると思う。障害を持っている生きることの大変さや、私たちができることを、学校教育をはじめとして、いろいろなところで考えてもらいたいと思う。

 
《参考記事》
「白杖、点字ブロックは命綱 全盲生徒けがで声相次ぐ」東京新聞 2014年9月11日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014091102000121.html
「川越・全盲女子生徒負傷 警察、捜査を開始」朝日新聞2014年9月11日
http://digital.asahi.com/articles/CMTW1409111100004.html

2014年9月5日金曜日

認知症のお年寄り、線路内に迷い込む~JR根岸線本郷台駅

 報道によると、9月4日午後6時20分ころ、横浜市栄区小菅ケ谷のJR根岸線の線路上で、81歳の男性が大船発大宮行きの普通電車に撥ねられて亡くなった。
 警察によると、男性は、妻と二人暮らしで認知症の診断をうけており、この日は現金を持たないまま、午前9時ころ一人で家を出たと言う。妻は、自宅で客と対応中で、その間に、男性は家を出たようだ。男性の自宅から、本郷台までは、約50km離れている。

 男性は、本郷台の駅のホームから線路内に下りたと見られている。どのように男性が線路内に入ったのか、事故の状況はまだ詳しく分からない。しかし、判断力が下がったお年寄りや幼い子供らが、線路内や踏切内に簡単に入れてしまうのはおかしいと思う。
 鉄道会社は、線路内に人が入れないようにフェンスをつくるとか、ホームから線路内に入れないようにする対策を進めるべきだと思う。
 高齢化が進み、判断力が弱くなって来たお年寄りも増えてきているという。実際、国交省の統計でも、踏切事故も60歳以上の人が関わる事故が半分ちかいことがわかっている。
 鉄道会社や自治体は、高齢化に合わせた安全対策を急ぐべきだと思う。

■2014年9月6日追記
《参考》今年1月、拙ブログで、認知症のお年寄りの事故についてとりあげた。
「お年寄りの踏切事故、実態調査を」2014年1月27日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/01/blog-post_27.html
《参考記事》
「東京の認知症男性 横浜の線路上ではねられ死亡」毎日新聞 9月5日(金)1時11分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140905-00000001-mai-soci


2014年8月20日水曜日

横浜市、新跨線橋の設計図提示~JR京浜東北線生見尾踏切

 報道によると、18日、横浜市は、昨年8月事故が起きた生見尾(うみお)踏切を廃止し、新しく設置する跨線橋のイメージ図を公開した。

 昨年8月23日夕方、杖をついて渡っていたお年寄りが、渡り切れずに踏切内に取り残されて、電車に撥ねられて亡くなった。

 生見尾踏切は、JR東の横須賀線、京浜東北線、東海道線が通過する。横須賀線・京浜東北線の踏切と東海道線の踏切の間には、、約9mの退避場所があり、三つの路線を全部渡り終えるには、約40m歩くことになる。二つの踏切を渡った先には、貨物線が高架になっている。
跨線橋から見た生見尾踏切。南北に長い。踏切道が凸凹して
    いるのがよくわかる。
    なかほどに、退避場所があるが、男性はここにたどり着けなかった。
    2013年8月24日撮影
貨物線の下をくぐると、今度は、京急の踏切があるというように、踏切の山側(岸谷側)から、海側(生麦側)の商店街などに行くには、三つの踏切を渡らなくてはならない。
 付近の学校に通う生徒やお年寄り、住民の皆さんにとって、生見尾踏切は、危険で不便を強いるものだ。踏切のすぐ横にある古い跨線橋は、急な階段でエレベータもない。そのため、長くてすぐに警報機が鳴りだす踏切道を、歩いて渡ることになる。

 18日、横浜市が示した案によると、新たな跨線橋は、長さ約60mで、幅約6m、エレベータは約40人乗り、自転車を3,4台積み込めるという。現在ある跨線橋も当面残し併用する方針だ。
 現在ある踏切道を廃止して、その上に跨線橋を設置するため、車両は通れなくなる。そのため、車両は新子安橋に迂回することになる。
 

 横浜市は、今年度中に設計を終え、来年度から工事に着工、完成には2年かかる予定だという。
 危険な踏切が無くなることに賛成だ。
 しかし、工事が完成するには、まだ多くの時間を要することだと思う。それまでの間、同じような事故の起きることのないよう、常時、踏切の監視員を置くなどの対策を採ってほしい。また、お年寄りが踏切を渡り切れなかったことを考えると、お年寄りの歩く速さを考慮した警報時間の設定も検討してほしい。

 
 昨年、事故後、9月の市議会で、林横浜市長はスピード感をもって立体横断施設を設置を検討すると答弁した。あれから、もうすぐ一年がたとうしている。
 一刻も早く踏切の安全対策が進められ、事故が二度と起きることのないことを願っている。

《参考》
○拙ブログでは、昨年、お年寄りの亡くなった生見尾踏切について取り上げた
「88歳の男性死亡、踏切渡り切れず~JR京浜東北線生見尾(うみお)踏切」2013年8月25日
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/08/88jr.html
○「生見尾踏切の安全対策について 横浜市道路局企画課」2014年8月18日横浜市ホームページ
http://www.city.yokohama.lg.jp/doro/press/h26/download/20140818-pln-02.pdf
《参考記事》
事故の踏切、60メートル跨線橋に」読売新聞20140819
http://www.yomiuri.co.jp/local/kanagawa/news/20140818-OYTNT50466.html

2014年8月6日水曜日

広島、原爆の日に~平和宣言の原点

 報道によると、8月1日、長崎市の田上市長は、長崎原爆の日である8月9日の平和祈念式典で読み上げる平和宣言の内容について、記者会見した。
 田上市長は、平和宣言の中で、安倍政権による集団的自衛権の行使容認について懸念を示す文言を入れることを明らかにした。
 
 田上市長は「安全保障の現状を明確に伝えるために集団的自衛権という言葉を入れたほうが伝わりやすい」と語った。一方、広島市の松井一実(かずみ)市長は宣言に盛り込まない考えを示した。
 長崎平和宣言は、被爆者や大学教授ら14人が委員を務め、田上市長が委員長を務める起草委員会での議論をふまえて、市が作成する。
 田上市長は、集団的自衛権行使容認をめぐる議論を機に、国民の中で平和に対する不安や懸念が広がっており、政府はそういった国民の声に真摯に耳を傾けるべきと要請するという。
広島平和記念公園に残された原爆ドーム。2012年12月1日撮影

原爆投下後の広島市、原爆ドームの周辺の写真。
広島平和記念資料館にて。 2012年12月1日撮影 

 同じ1日、広島市の松井一実市長は、6日の広島原爆の日に読み上げる平和宣言の骨子を発表した。しかし、集団的自衛権の行使容認については、言及しない考えだが、戦後69年間憲法の平和主義のもとで戦争をしなかった事実を重く受け止めて、これからも平和国家として歩むことを訴えるという。
 また、核保有国に対しては、非人道的な脅しで自国をまもろうとすることをやめ、信頼と対話による新たな安全保障の仕組みづくりを訴えるという。

 昭和22年の広島市平和宣言は、
「戦争の惨苦と罪悪とを最も深く体験し自覚する者のみが苦悩の極致として戦争を根本的に否定し、最も熱烈に平和を希求するものであるから」と、
原爆の惨禍をもたらした戦争を否定し、「永遠に戦争を放棄して世界平和の理想を地上に建設しよう」と訴える。
 
 69年前の夏の暑い日、きのこ雲の下で、一瞬のうちに、何が起こったのかもわからずにこの世を去ることになった人々を思い、二度と戦争を起こさないと誓うこと。戦争による大きな犠牲の上に、私たちがたどり着いた結論は、この後に大切に伝えて行かなくてはならないと思う。
 
 
《参考記事》
「広島市平和宣言(昭和22年)」広島市ホームページ
http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1111795443652/index.html
「(社説余滴)平和宣言の原点に返れば」朝日新聞2014年7月22日
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11257622.html
「平和宣言で長崎市、行使容認に懸念表明へ」朝日新聞2014年8月1日
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11278521.html

2014年7月31日木曜日

国交省「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成25年度)」を公表

 7月30日、国土交通省のホームページによると、国交省鉄道局は「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成25年度)」を公表した。

 それによると、平成25年度は、踏切事故が前年度にくらべて、8件減って287件、死亡者数は30人減って90人となった。
 死亡者数が大きく減ったのは、自動車などの「直前横断」が減って、「直前横断」の死亡者数が26人減って61人となったことが大きい。
 踏切の安全施設を管理する鉄道関係者や踏切道を管理する自治体などが、事故防止キャンペーンなどに取り組んだ成果だろうと思う。

 しかし、死亡者数が大きく減ったとはいえ、昨年度の踏切事故の中には、お年寄りが渡り切れずに踏切内に取り残されて電車に撥ねられたり、踏切内のお年寄りを助けようとした女性が電車に撥ねられて亡くなるなどの踏切事故が相つぎ、踏切事故の問題が報道などで大きく取り上げられた。深刻な問題を抱える踏切の事故が多かった。
 また、第3種(警報機あり、遮断機なし)・第4種(警報機なし、遮断機なし)踏切の事故は、合わせると44件で、前年度に比べて変わらなかった。遮断機のある踏切に比べて、事故が起きる割合が大きい状況は、変わっていない。第3種・第4種踏切の割合は全体の11%だが、事故は踏切事故全体の15.3%をしめている。

 お年寄りが渡り切れない長い踏切や、凹凸のある歩きにくい踏切の問題は、どう解決されるのか。踏切を渡る人や電車を運転する人の注意に頼る「安全対策」ではなく、具体的な対策をとるべきではないのか。
 鉄道会社が踏切警報時間を設定する際の人の歩く速さが、お年寄りが歩く速さよりも早いため、お年寄りが警報時間内に渡り切れないことがわかっている。踏切ごとに、通行者の実態を把握して、お年寄りが多ければ、警報時間の設定を検討した方がよいと思う。
昨年8月、お年寄りが渡り切れずに電車に撥ねられて亡くなった。
横浜市鶴見区生麦にある生見尾踏切。  2013年8月24日撮影
また、凹凸のある踏切道は、健常者だけでなく、お年寄りや車いすに乗って渡る人や、ベビーカーや手押し車を押しながら渡る人にとって、大変渡りにくいことが、テレビの報道などからわかった。
昨年4月、電動車いすに乗って渡っていた男性が亡くなった。
大阪府高石市羽衣7号踏切。カーブの途中にある。2014年7月20日撮影
線路のカーブにある踏切では、線路の外側が内側よりも高くなっているため、どうしても道路に凹凸ができる。特急や急行がカーブでスピードを落とさないためには、線路の高低差が必要なのだろう。しかし、踏切を渡らねば、生活できないお年寄りや近くに住む人のことも考えてほしい。毎日、小学校へ通学するために、危険な長い踏切を渡らねばならない子どもたちのことを考えてほしい。

 事故を減らすには、一つ一つの事故の実態を把握しなくてはならないと思う。数字の中の一つ一つの事故を具体的にみることで、それぞれの踏切にあった安全対策が出てくるのではないか。
 
 

今年2月、自転車で横断していたお年寄りが取り残されて亡くなった。
カーブの途中にあるため、凹凸が大きい。
東京都足立区千住東1丁目にある踏切。 2014年2月12日撮影。
《参考》
写真の踏切の事故については、それぞれ拙ブログでとりあげた。

なお、「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成25年度)」は国土交通省鉄道局ホームページ
http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr8_000019.html

《追記》
第3種・第4種踏切の事故件数について、記述追加しました。(2014年8月2日)

2014年7月26日土曜日

乗用車と電車が衝突・脱線~千葉県流鉄流山線の踏切事故

 報道によると、7月11日午後2時5分ころ、千葉県流山市と松戸市を結ぶ流鉄流山線の踏切で、線路内に入ってきた乗用車と2両編成の電車が衝突し、1両目が脱線した。
 踏切は、小金城趾駅と幸谷駅の間にあり、警報機・遮断機はない。幅は1.5mくらい、長さも4mくらいだろうか。現地に行って驚いたのは、踏切の周辺が住宅地だということだった。東京に近い住宅地の松戸市に、いまだに警報機も遮断機もない踏切があることに驚いた。
 乗用車は電車に衝突したあと、電車に約30m引きずられて大破した。乗用車に乗っていたのは、踏切のすぐ前に住む夫妻で、車内から救出されたものの、亡くなった。

千葉県流山市流鉄流山線の踏切。警報機や遮断機がない。
事故のあった午後2時ころ。 2014年7月23日撮影。
警報機・遮断機のない踏切の手前では、電車の運転士は警笛を鳴らすことになっている会社が多いと思うが、今回の事故の際、事前に鳴らしていたかどうかわからない。
 
 
 また、踏切の手前はカーブしている。列車の運転士からは踏切がどの程度の距離からみえるのだろうか。線路内に入って来た乗用車に気付いて急ブレーキをかけたが間に合わなかったという。
 車庫から出ようとする乗用車からは、家のフェンスなどで列車の来るのが見えにくい。
 危険だから、踏切に警報機などを設置してほしいと住民の方から要望が出されていたという。

 ダイヤを見ると、列車の本数も1日上下144本あった。事故のあった昼間の時間帯では1時間に上下各3本ある。1時間に6本、平均10分毎に列車が踏切を通過する。朝6時・8時台は、1時間に上下10本の電車が、警報機も遮断機もない踏切を通過する。平均して6分おきに、電車が通過する計算になる。
列車の来た小金城趾駅の方角を見る。乗用車が
止まっていたところからは、電車の来るのが見えにくい。
                        2014年7月23日撮影

乗用車が列車が通過するのを待っていたところ。路面には、電車が
脱線したときの衝撃のせいか、ひびが入っているところがある。
                            2014年7月23日撮影
事故のあった踏切の前後にも第4種の踏切が2か所あった。住民の方が生活に必要としている踏切で、ここを渡らないと外に出られない。踏切を通行する人は少ないかもしれないが、運行本数が増えた鉄道にとって、いったん踏切で事故が起きれば、重大な問題になる。それなら、通行者の多少にかかわらず、警報機や遮断機を設置すべきではないかと思う。
 
 運輸安全委員会は、この事故の調査のため、鉄道事故調査官を派遣した。事故調査がすみやかに行われ、事故の再発防止に役立てられるよう、願うばかりだ。
 最後になりましたが、亡くなられたご夫妻のご冥福を祈ります。

《参考記事》
「衝突した乗用車の夫婦死亡 千葉・流山線」
毎日新聞 7月12日(土)0時21分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140712-00000001-mai-soci

2014年7月25日金曜日

明石砂浜陥没事故、4被告の上告を棄却

 2001年12月、兵庫県明石市で、人工の砂浜が陥没、巻き込まれて女児が死亡するという事故が起きた。
 報道によると、7月22日、最高裁小法廷は、業務上過失致死罪に問われていたこの事故当時の、国と市の担当者ら4被告の上告を棄却した。禁錮1年、執行猶予3年とした1,2審の判決が確定した。
 この決定で、砂浜を所有する国土交通省の姫路河川国道事務所の元幹部2名と、砂浜を公園にしている明石市の元幹部の2名が有罪になった。
 国の元幹部は、「砂浜を使用しているのは市であり、国に安全管理責任はない」と主張した。
 しかし、決定は「国は市と陥没対策に取り組むなどしており、安全管理が市だけに委ねられていたとは言えない」と指摘、事故を予見できなかったとする元幹部の主張も退けた。

   朝霧歩道橋から陥没事故のあった大蔵海岸を見る。 
   向こうに見えるのは、明石海峡大橋。2014年7月21日撮影
   朝霧駅からのびる歩道橋では、2001年7月21日の明石市主催夏祭りの花火を見ようと、海浜公園に降りようとする人と駅に向かう人とが歩道橋で密集し、身動きが取れなくなった。歩道橋の上では、多くの人が、むし暑い中に閉じ込められて、群衆雪崩が発生、子ども9名を含む11名が亡くなった。けがをした人は247名にのぼった。
 夏休みに入り、家族で花火を楽しみにして、訪れた人が多かったのだろう。
市や警察が、朝霧駅から見物に来た人を歩道橋とは別の方向へ誘導して迂回させ、歩道橋に人が集中しないよう規制を適切に行っていれば、事故を防げたに違いない。
 また、歩道橋の設計にも問題があった。階段は片側にしかないため、降りる人も、上る人も同じ一つの階段に集中し、危険だ。広い公園だから、階段の用地がないということではない。手抜きとしかいいようがない。
  公園には、陥没事故で亡くなった女児をモデルにした像がたっている。
  カラフルな球体は、明石歩道橋事故で犠牲になった
  11名の方のモニュメント。
                                 2014年7月21日撮影
13年前に起きた悲しい事故を思い起こすとき、さまざまなイベントを行う自治体や関係者には、二度と同じような事故を起こさないよう、十分な安全対策を考えてほしいと思う。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
朝霧駅から歩道橋を見る。歩道橋の先には右側に下りる
階段がある。                    2014年7月14日
《参考》拙ブログでは、以前に明石歩道橋事故について、取り上げた。
ラベル「明石歩道橋事故」を参照
《参考記事》
「明石砂浜事故、4被告の上告棄却…有罪確定へ」読売新聞2014年07月24日 19時05分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140724-OYT1T50087.html

2014年7月22日火曜日

電動車いすのお年寄りが亡くなった事故~大阪府高石市南海本線羽衣7号踏切

 報道によると、昨年2013年4月15日午後0時40分ころ、大阪府高石市加茂にある南海本線の踏切で、電動車いすに乗った男性が亡くなる事故が起きた。
 
 事故のあった踏切は、南海本線の羽衣と高石駅の間にあり、警報機・遮断機が設置された第1種踏切である。幅約2m、長さ約9mで、踏切がカーブの途中にあるため、線路の外側は脱線を防ぐため、内側よりも高くなっている。そのため、踏切道に起伏ができ、高低差が20~30センチあるという。
 四輪車は通行止めのため、事故当時、障害物検知措置はなかった。また、非常ボタンは設置されていた。
 目撃した人の話によると、男性が乗っていた車いすが踏切内に立ち往生していたという。列車の運転士が、約110m手前で、踏切内の男性に気が付き、非常停止をかけたが、間に合わなかったという。
 
高石市南海本線羽衣7号踏切 男性の来た方から
踏切内をみる。路面に高低差があり、歩きにくい。
                  2014年7月20日撮影
   現場は、カーブするレールを跨ぐ踏切で、半径は300mくらいだろうか、運転士からすると、カーブを曲がって踏切が見えた時には、100mくらいまで接近しており、非常停止が間に合わないのだろう。それならば、見えてからブレーキをかけるのではなく、踏切内で取り残されている人をもっと早く検知して、電車が止まれるようにすべきではないだろうか。
 高低差のある踏切道の中で、車輪がレールなどに挟まったりしたのか、事故の状況は定かではないが、踏切に取り残された男性の恐怖は如何ばかりだっただろうと思うと、胸が苦しくなる。
羽衣7号踏切から列車の来た方(高石方面)を見る。
                         2014年7月20日撮影
  事故のあった踏切の付近は、南海本線の高架化工事が行われている。
南海本線・高師浜線(高石市)連続立体交差事業は、南海本線の羽衣駅から高石駅までの約3.1kmと高師浜線の約1.0kmで、鉄道を高架化することにより、13ヶ所の踏切を除却、都市内交通の円滑化を図るとともに、分断された市街地の一体化により都市の活性化を図る事業だとされている。2019年度完成予定で、総事業費約550億円にのぼる。
 高架化工事が進められている中で起きた今回の事故、残念で仕方がない。工事の間だけでも、踏切の幅を広げたり、路面を整備して通りやすくするとか、誘導員を置くこといったことはできないのだろうか?
羽衣7号踏切を斜め横からみると、起伏があるのがわかる。
右手に高架化工事途中の橋脚がみえる。
                        2014年7月20日撮影
この踏切の前後には、同じカーブの上にあるために、羽衣7号踏切と同様の起伏のある踏切が2か所、羽衣6号踏切と羽衣9号踏切がある。踏切の幅が狭い上に、起伏があって歩きにくく、電動車いすで渡ろうとすると、入口の車両通行止めのポールに車いすがあたってバランスをくずしたりしかねない。また、路面の起伏に、車いすの底面があたって、車いすの前輪が浮いて動けなくなったりしないだろうか?
 車高の低い車が、踏切の凸凹した路面にあたって動けなくなることがあるというが、そのような状況が車いすにもあるかもしれない。
 周辺は住宅街で、多くの人が生活道路として通行する。電動車いすの男性も日ごろから、この踏切を利用していたと言う。踏切道を管理する自治体や、安全装置を管理する鉄道事業者には、高架化工事を進めながら、既存の踏切の安全対策も十分考えてほしい。
 
 
 
 最後になりましたが、亡くなられた男性のご冥福をいのります。
《参考記事》
「車いす男性 踏切で死亡 大阪・高石 起伏で立ち往生か」2013年(平成25年)4月16日読売新聞
「電動車椅子の男性死亡 踏切で立ち往生? はねられ」2013年(平成25年)4月16日毎日新聞 

2014年7月14日月曜日

千葉県流山市:流鉄流山線第11号踏切で、脱線事故

 報道によると、7月11日午後2時ころ、千葉県流山市と松戸市を結ぶ流鉄流山線の第11号踏切(松戸市大谷口)で、踏切内に入ってきた乗用車と列車が衝突、1両目が脱線した。また、乗用車は衝突で大破し、乗っていた近くに住む夫妻は救出されたが、病院で死亡が確認された。

 同踏切は、警報機・遮断機がない第4種踏切で、付近の住民の生活道路として使われており、亡くなった夫妻の家も踏切の近くだという。
 住民が取材に答えているところによれば、以前にも列車と自動車が衝突する事故があり、踏切に警報機を設置してほしいと要望していたという。また流鉄も住民と対策を話し合っていたと答えている。安全対策が決まらないうちに起きた悲惨な死亡事故に、何ともやりきれない思いがつのる。

 ニュース映像をみると、事故のあった流山線の周辺は住宅地化しており、このような東京近郊の住宅街に、第4種踏切が残っていることに驚いた。
 事故がどのように起こったのかまだ定かではないが、踏切からの見通しが悪く列車がくるのが分かりにくくなかったかどうか、踏切の路面などが悪くなかったか、運輸安全委員会において十分調査されることを望みたい。
 国交省は、事故率の高い第4種や第3種踏切(警報機あり遮断機なし)を、第1種踏切に改善するよう鉄道事業者に働きかけているという。補助金制度なども含めて、中小私鉄が改善を進めやすいよう、安全対策を進めてほしい。

最後になりましたが、亡くなられたご夫妻のご冥福を祈ります。

《参考記事》
「千葉の踏切事故 乗用車の夫婦2人死亡」NHKオンラインニュース2014年7月12日1:08
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140712/k10015954251000.html
「踏切事故:衝突した乗用車の夫婦死亡 千葉・流山線」毎日新聞2014年7月12日00時21分
http://mainichi.jp/select/news/20140712k0000m040140000c.html

2014年7月2日水曜日

安全工学シンポジウム2014~安全・安心な社会をめざして

 
 7月10日(木)、11日(金)、日本学術会議総合工学委員会主催による「安全工学シンポジウム2014」が、東京都港区田町の建築会館で開催される。33の学協会が共催・協賛して、さまざまな分野の研究が発表される。

 
 OS-5 「繰り返される事故~事故防止のあり方を考える」では、踏切事故の遺族や、柔道事故の被害者家族が、研究者や専門家とともに、事故を防ぐには、何が必要か考える。
 なぜ事故が無くならないのか、事故をなくすにはどうしたらよいのか、ぜひ、多くの方々に一緒に考えていただきたいと思う。
 
詳しくは、以下のホームページを参照
「安全工学シンポジウム2014」

 
OS-5「繰り返される事故―事故防止のあり方を考える」
 71014:3017:00 建築会館会議室
  1.繰り返される事故〜事故防止のあり方を考える〜○加山宏(安全工学会)
  2.都市における踏切事故と安全対策○加山圭子(東武伊勢崎線竹ノ塚踏切事故遺族)
  3.脳震とうと繰り返し脳損傷 ○小林恵子(全国柔道事故被害者の会)
  4.未解決事故の原因を究明する ‐ 事故例からのアプローチ ‐
                 ○一杉正仁(滋賀医科大学)
  5. 責任追及と再発防止-事故調査の社会的位置づけ ○米倉勉(弁護士)
    6.「組織罰」についての考察 ○本江彰(日本ヒューマンファクター研究所)
    7.再発防止から未然防止へ(2) ○高杉和徳(製品安全コンサルタント)

2014年6月12日木曜日

お年寄りが亡くなったJR横須賀線住吉踏切~立体化工事のさなかに

 報道によると、6月5日午後4時ころ、品川区豊町3丁目のJR横須賀線住吉踏切で、70代とみられる女性が、久里浜発成田行きの快速電車に撥ねられて亡くなった。

 6月11日、住吉踏切に、事故のあった時間と同じころ行ってみた。
 踏切は、幅4m長さ10mほどで、警報機・遮断機が設置され、非常ボタン、障害物検知装置が設置されていた。車両は一方通行で、路側帯(歩道)は片側にしかない(下の写真1)。
 住吉踏切は、平成19年に、国交省が、全国の踏切から抽出した緊急対策が必要な踏切1960か所のうちの一つで、「開かずの踏切」だった。
 事故のあった5日は全国的に天気が荒れ模様で、ときおり激しく雨が降る日だった(写真2)。
 お年寄りが踏切を渡っていたときに、雨がどの程度降っていたか、参考にした記事には書かれていなかった。しかし、午後4時ころは、踏切道が登下校の児童や生徒、買い物帰りの人などで混雑する時間帯だったと思われる(写真3)。

  写真1  品川区豊町3丁目にあるJR横須賀線住吉踏切
  お年寄りはこちらから踏切に行った。2014年6月11日撮影

写真2  お年寄りが亡くなった6月5日も雨が降っていた。
2014年6月11日撮影

写真3  夕方は、踏切が開くのを待つ人が多い。高架になって
いるのは、東海道新幹線の線路。     2014年6月11日撮影
踏切のすぐ手前には、区立小中一貫校があり、地区センターもある。児童や地域の住民の皆さんが、踏切の手前で、快速電車が時速100kmくらいあるだろうか、猛スピードで通過するのを待っていた。
 踏切の道路が狭い上に、通行する人が多く、狭い歩道を大勢の人が行きかう。亡くなったお年寄りは、踏切を渡っていたら警報機が鳴りだしたので、あわてて後戻りをしたが、踏切内に取り残されて、事故に遭ったのではないかという。混雑する踏切内で、取り残されてしまったのだろうか。
住吉踏切は下り坂になっていた。上には、
新幹線の線路がある。2014年6月11日撮影
 
 
住吉踏切の前後では、横で都市計画道路補助26号線の横須賀線の下を通る工事が進められている(アンダーパス)。
 補助26号線は、品川区から板橋区まで、総延長28kmの都道。現在、品川区二葉1丁目から都立大崎高校の部分は地下道とする難工事が行われている。
 工事中の仮設道路は、道路幅約3m歩道約1.5mと狭い。その上、仮設の住吉踏切の歩道は、もっと狭くなっている。この道路は、周辺の小・中学校、高校の児童や生徒が通行する通学路だが、今日は、工事の現場や踏切に誘導員を見かけなかった。

 この補助26号線の工事が完成すれば、住吉踏切は廃止され、バリアーフリーの歩道橋ができる予定だ。しかし、その立体化工事の最中に起きた事故に、やり切れない思いが募る。
 狭くなった踏切の混雑する時間帯に、誘導員は配置されていなかったのだろうか?すぐそばに学校や地区センターがあり、お年寄りや小さいお子さんを連れたお母さんたちも通行する踏切に、なぜもっと安全対策をとらないのだろうか?
 豊町の住民のみなさんが、区役所やスーパー、公共施設などがある大井町駅方面に行くには、この踏切を通らねばならないのに、通行する人たちの安全が確保されていないのではないか…

 
 なぜ事故が起きたのか、事故の調査をする必要がある。事故調査をすることで、事故の原因がわかり、安全対策も検討できると思う。

 事業を行う行政や事業者には、立体化工事が完了するまで事故はあってはならないという決意を持って、安全対策を講じてほしい。

 最後になりましたが、亡くなられた女性のご冥福を祈ります。

《参考記事》
「踏切ではねられ70代?女性死亡 品川のJR横須賀線 /東京都 」朝日新聞2014年6月5日
http://digital.asahi.com/article_search/detail.html?keyword=%E8%B8%8F%E5%88%87&kijiid=A1001120140606MTKG-1A-009&version=2014060802

2014年6月10日火曜日

踏切の点字ブロック~大阪で設置

 報道によると、大阪では、踏切を渡る目の不自由な人のために、点字ブロックを設置する対策が進められようとしている。
 
 2007年、大阪府は、警察庁が横断歩道に専用の点字ブロックを設置する指針を出したのをきっかけに、踏切道内に点字ブロックを設置できないか検討を始めた。踏切内の点字ブロックは全国に例がなかったが、大阪府は阪急電鉄に話をして、2010年11月に豊中市にある服部天神駅北側の服部踏切に、試験的に設置した。
 服部踏切は、府道と阪急宝塚線が交差する。1日2万人が通行し、近くの市立福祉施設には、目の不自由な人たちも通うという。

 目の不自由な人は、線路と踏切道の境にある段差に杖を当てて歩く方向を推測しながら、踏切を渡っていたそうだが、点字ブロックがあれば、わかりやすく歩きやすいと評判がよいようだ。
 ブロックがはがれて電車にあたったり、突起につまづいたりしないかといった意見もあった。しかし、設置以来、阪急ではチェックを続けているが、破損や通行者の転倒といった事故の報告はないという。

 大阪府は、視覚障害者団体と協議して、次の試行場所を探し、南海電鉄が2か所の踏切に設置することに応じた。今年3月、南海電鉄は、泉佐野市の南海鶴原駅近くの二色浜4号踏切と、泉南市内の樽井5号踏切に設置した。

 踏切内に点字ブロックを設置したのは大阪府が最初で、他の自治体では設置されているところはないという。目の不自由な方が踏切道から足を踏み外すことはよくあるという。大きな事故につながらないよう、点字ブロック設置が可能な踏切では、ぜひ、対策を進めてほしいと思う。

《参考》
 点字ブロックは、正式には、「視覚障害者誘導用ブロック」、日本が発祥の地。1967年、岡山市の交差点付近で、全国で初めて設置された。岡山市の旅館を経営し発明家でもあった故・三宅精一さんが、失明した友人のために、点字ブロックを考え、岡山市の交差点に設置したのが始まりだという。三宅さんは点字ブロックを自費で制作し、設置が望ましいところを調べて、点字ブロック約6,000枚を全国の自治体に寄贈し続けた。
 今では、点字ブロックは世界に広がり、目の不自由な人が安心して歩けるよう、誘導する。

《参考記事》
「踏切安心 足元から 点字ブロック 大阪が先駆」朝日新聞2014年6月10日
http://digital.asahi.com/articles/ASG5J6JFVG5JPTIL011.html
「点字ブロックの父知って 足跡たどるDVD制作中」朝日新聞2014年2月18
http://digital.asahi.com/articles/ASG2G4F6JG2GPPZB00P.html

2014年6月6日金曜日

認知症の不明者、警察庁が対策を強化

 
 報道によると、6月5日警察庁は、認知症が原因の徘徊で保護された「迷い人」の身元を特定するため、氏名が分からなくても体の特徴や所持品などを手掛かりに検索できるシステムを新たに活用するよう、都道府県警に指示した。取り扱い記録の作成を徹底し、警察本部が関わることも対策に盛り込み、通達した。

 警察庁が出す通達には、保護されている身元不明者の写真付き資料を警察本部などに備え付けることが明記され、行方不明届を出した家族は、この資料を見ることができるという。
 今まで、家族が行方不明届を警察に出すと、警察は住所や氏名などを聞き取って「行方不明者照会」システムに登録、「迷い人」を保護した際に利用していたが、氏名が分からないと検索できない難点があった。また、これとは別に、「身元確認照会」システムも運用していたが、遺体の身元確認にしか使われていなかったが、「迷い人」の特定にも活用することにした。
 

 どちらのシステムも、全国の情報が共有される。また、「行方不明者」や「身元確認」の登録まで、時間がかかるため、照会を繰り返すことも指示された。
 また、今後は、警察本部が不明者の発見や特定に関わる署の対応をチェック、指導する。保護を引き継ぐ自治体との連携も強化するという。

 警察庁は、認知症が原因で行方が分からなくなり、家族などから、警察に届け出があった不明者は、昨年1年間に10,322人だったと発表、2012年から715人増えた。2012、13年の2年間に届け出のあった19,929人のうち、今年4月末現在で、所在の確認できない人は258人に上るという。
 所在確認までの時間は、届け出の受理当日が6,443人(63.3%)、二~七日間が3,506人(34.4%)で、97.7%の人が七日以内に確認されているが、32人は二年以上かかっていた。

 昨年は、認知症の行方不明者が1万人を超えた。また、2007年に、群馬県警が、保護された女性の名前を誤って取り扱ったため、身元の確認がされなかった。7年たった今年になって、報道によって、家族が女性の所在を知るというケースなどがあった。

 
 新聞各社やテレビの報道によって、認知症の行方不明の方がたくさんいること、また保護されているにもかかわらず、家族に居場所を知らせるシステムが十分機能していなかったことが分かった。
 警察と自治体は、行方不明となっている認知症の方の情報を共有して連携を強めてほしい。情報を丁寧に把握して、行方不明の人を探す家族が情報の検索を容易にできるようにしてほしい。
 今回の対策が進むことで、行方が分からなくなっていた方が、一刻も早く家族のもとへ帰れることを願いたい。

《参考記事》
「老いてさまよう:認知症不明、警察庁が対策強化 家族『捜す力に』 実効性の確保必要」
毎日新聞 2014年06月05日 東京夕刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140605dde041040055000c.html
「認知症不明者:確認強化 警察庁通達、照会項目増やし 昨年の自治体引き渡し157人、13人身元判明せず」 毎日新聞 2014年06月05日 東京夕刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140605dde001040084000c.html
「認知症迷い人 氏名不明でも検索」東京新聞 2014年6月5日夕刊

2014年6月4日水曜日

踏切事故防止対策の強化を~警視庁が要請

 報道によると、6月3日、警視庁は高齢者が踏切を横断中に、電車に撥ねられて亡くなる事故が相次いでいるため、鉄道事業者を集めて、踏切事故防止のための安全対策を強化することを要請した。鉄道事業者10社の安全対策の責任者を同庁に集めた「踏み切交通事故防止対策会議」の開催は初めてだという。会議の冒頭、広田耕一同庁交通部長は、「危険な踏切は高齢者の生活の大きな障害となっている。今回の会議を契機に有効な安全対策を進めて行きたい」と会議の参加者を前に話した。
 
  
 会議には、国土交通省、東京都交通局、JR東日本、私鉄大手各社が参加した。
警視庁が要請した主な内容は、
①踏切内の障害物を検知し、運転士に知らせる高感度のセンサーの設置
②非常通報装置の増設
③路側帯の整備など
①について
踏切に障害物検知装置が設置されていも、踏切内に取り残された自動車を検知するのが目的で、人を検知する設定になっていない。そのため、昨年10月横浜市で、高齢者を助けようとした女性が検知されず電車に撥ねられて亡くなるなどの事故が起きていた。このような事故を防ぐには、高感度のセンサーを人を検知できるように設定したりする必要がある。
                           
JR横浜線川和踏切   駅寄りにある障害物検知装置
(ポストのような形のもの)
                           2013年10月2日撮影
②について
第1種(警報機・遮断機付き)の踏切には、非常ボタンが設置されているところが多いが、踏切の出入りする双方に一つずつ計2カ所しか設置していないことが多い。しかし、幅の広い踏切では、片側の非常ボタンに行くのに何秒か、時間がかかってしまう。一秒を争う緊急事態に、近くに非常ボタンがなかったり、手が届かない位置に非常ボタンがあっては、押すことができない。非常通報装置を増設する必要がある。
                              
JR高崎線の上り快速列車が上町踏切(埼玉県本庄市)を通過する
非常ボタンは踏切の片側にしかない
                      2012年12月29日撮影
③について
踏切道の片側にしか歩道(路側帯)がないため、狭い路側帯で通行者が行きかい、混雑する踏切では、路側帯を整備する必要がある。
2月6日、北千住東1丁目の踏切を、自転車で渡っていたお年寄りが取り残された事故の現場は、路側帯が片側にしかなかった。そのため、途中で警報機が鳴りだし、お年寄りが後ずさりしながら、踏切の外に出ようとしたが、出られなかったことが、防犯カメラの映像からわかったという。

千住東1丁目にある踏切 東武伊勢崎線の線路と引き込み線の計5本が通っている。
                       路側帯が片側にしかない                       2014年2月12日撮影
                                                             

 踏切事故をなくすためには、さまざまな対策が考えられると思う。できることはたくさんあるはず。鉄道事業者や関係する自治体には、一つ一つ確実に取り組んでほしい。

《参考》北千住東1丁目の踏切事故について、拙ブログでは
「急カーブにある踏切~東武伊勢崎線北千住東踏切」2014年2月
http://tomosibi.blogspot.jp/2014_02_01_archive.html
《参考記事》
○「踏切事故防止対策強化を要請=鉄道各社に、高齢者死亡で-警視庁」 
 時事通信社2014年6月3日
http://i.jiji.jp/jc/i?g=soc_30&k=2014060300860
○(6月5日追加)「 踏切事故 目に見える対策実現を 警視庁と鉄道各社が会議」東京新聞2014年6月5日朝刊 
○「第9次交通安全基本計画」内閣府
http://www8.cao.go.jp/koutu/kihon/keikaku9/keikakuall.html

2014年6月2日月曜日

3人が死傷した踏切~広島市JR芸備線無連地第2踏切

 報道によると、2013年12月5日、広島市安佐北区白木町秋山のJR芸備線無連地(むれんじ)第2踏切で、介護福祉施設の車が広島発三次行き普通電車(2両)と衝突して、車を運転していた介護施設職員の女性と、乗っていたお年寄りが亡くなった。同乗していたお年寄りの妻も重傷を負った。

 事故後、広島テレビが、事故がなぜ起きたのか、警報機・遮断機のない踏切がいかに危険か検証、ドキュメンタリーとして放送した。
 この番組によると、現場は、遮断機・警報機のない第4種踏切で、電車が来た方はカーブしているため、見通しが悪かった。電車が無連地第2踏切に近づくと手前で、警笛を4秒鳴らすが、鳴り終えるとすぐに踏切に着く。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          踏切入口から電車が見えにくいため、カーブミラーが設置されていたが、朝や雨の時などはミラーが曇っていて、電車が来るのが見えにくいこともあったという。番組では、踏切の手前で、車から助手席の人が車から降りて、電車が来るかどうか確認する場面もあった。
 事故の前に、付近の住民からはJRに対して、踏切に警報機を設置してほしいという要望が出されていた。
 また、報道によると、40年前にも、踏切でバイクに乗った近くに住む女性が、電車に撥ねられて亡くなる事故が起きており、女性の夫がお地蔵さんを踏切近くに建てていた。
 

 事故後、付近の住民や警察、JR西日本広島支社などで、安全対策について検討した。その結果、今年5月になって、JR西日本は、現場の踏切に、警報機と遮断機を設置することを決めた。
 
 番組が放送される前は、JR西日本の担当者は、「遮断機や警報機の設置には、3,000万円かかる」「設置には、交通量などを考慮して決める優先順位があり、無連地第2踏切は優先順位が低かった。」などと、ニュースで語っていた。
 事故から半年も経たずに、このような安全対策を決めた背景には、住民のみなさんの強い要望や、広島テレビはじめ各社の報道の力が大きいだろうと思う。

 しかし、事故が起きて尊い命が奪われてから、安全対策を考えるのではなく、変化しているひとつひとつの踏切の実態を把握して、積極的に事故を未然に防ぐ対策を講じてほしいというのが、正直な気持ちだ。

 最後になりましたが、亡くなられたお二人の方のご冥福を祈ります。

《参考記事》
「介護送迎、2人衝突死 遮断機ない踏切 1人重体−−広島」
毎日新聞 2013年12月07日 大阪夕刊
http://mainichi.jp/area/news/20131207ddf041040025000c.html
「安全過疎 取り残された危険な踏切」 2014年5月26日放送 広島テレビ制作
http://www.ntv.co.jp/document/back/201405.html

2014年5月31日土曜日

お年寄りが取り残された踏切事故~阪急宝塚線北ノ口踏切

 今年4月26日、阪急宝塚線服部天神駅近くの北ノ口踏切に行った。
報道によると、2012年10月22日午後2時10分ころ、大阪府豊中市服部元町にある、阪急宝塚線北ノ口踏切で、73歳の女性が、雲雀丘花屋敷発梅田行き普通電車(8両)に撥ねられて、亡くなった。

 北ノ口踏切は、曽根駅と服部天神駅の間にあり、曽根駅から来ると、線路が右へ大きくカーブした先にある。第1種踏切で、警報機・遮断機が設置されている。しかし、車両通行止めで車両が通行しないからか、障害物検知装置はない。また、非常ボタンも設置されていない。幅は2.2m、長さ8.6mで、歩行者専用である。

 事業者の事故の届出によると、事故当時、電車が時速55kmで北ノ口踏切に差し掛かった際、踏切道手前82mで運転士が女性を発見、非常停止の措置を取ったが、間に合わず、女性と接触、踏切を約28m過ぎて停止したとある。
阪急宝塚線北ノ口踏切   2014年4月26日撮影
報道によると、亡くなった女性は呼吸器系の病気のため、外出時には酸素ボンベを載せたキャスター付きの台車を引いていたそうで、この日も台車を引いて踏切を渡っていたようだ。渡っている途中で警報機が鳴ってしまい、踏切内に取り残されたらしい。台車の車輪がレールの溝に入ってしまって動けなくなり、踏切内から出られなかったのかもしれない。

阪急宝塚線北ノ口踏切。線路の外側の方が内側よりも高い。
事故から1年半経つが、踏切道の改善はされたのだろうか?
                  2014年4月26日撮影
 
 北ノ口踏切から普通電車の来た方、曽根駅方面を見る。
 左へ大きくカーブしている。     2014年4月26日撮影
北ノ口踏切は、カーブの終わるあたりにあり、線路の外側は電車の脱線を防ぐため、内側に比べて高くなっている。そのため、踏切道の路面が波を打つようだ。 ここのカーブが半径何mなのか、線路わきに表示が見当たらなかったが、上の写真の注意書きが見つかった。黄色い張り紙には、「注意 この区間見通し悪し 早期待避」とあった。
 
 
 お年寄りが酸素ボンベを引きながら歩いたり、手押し車を押しながら、凹凸があるところを渡るのは、歩きにくいと思う。車輪ががたがたとして進みにくいと思う。
 
 ここは、運転士から見ても危険だ。カーブを曲がったと思ったらすぐに踏切があり、運転士が踏切内で人が取り残されているのを発見しても、すぐに電車は止まれない。
 電車が踏切の手前で安全に止まれるように、障害物検知装置を設置し、踏切内に取り残された人を検知して電車が自動的に止まれるようにすべきだと思う。多くの事業者は、障害物検知装置は車両を検知するための装置で、人を検知する設定をしていないという。
 しかし、踏切を通行するのは、車両ばかりではない。北ノ口踏切のような、住民に必要な生活道路では、お年寄りや子どもを連れた人、児童や生徒も通行する。すべての通行者が踏切内で、取り残された際に、通行者を検知して、電車が止まれるようにすべきではないのか。
 踏切内に取り残された人を発見したときに、運転士に知らせる非常ボタンも設置すべきだと思う。踏切に設置されていれば、取り残されたお年寄り本人だけでなく、踏切の近くにいる通行者が、非常ボタンを押して、電車を踏切の手前で止めることができるのではないか。
 事故が起きて尊い命が奪われる前に、ひとつひとつの踏切を点検して、必要な装置を設置したり、歩道の凹凸をなくすなど、早急にできる対策に取り組んでほしいと思う。
 
 
 最後になりましたが、亡くなられた女性のご冥福を祈ります。
 
《参考記事》
「73歳女性はねられ死亡 阪急宝塚線」毎日新聞2012年10月22日

2014年5月6日火曜日

電動車いすの女性が亡くなった事故~阪急神戸線旧庄本踏切

 4月26日、大阪府豊中市の阪急神戸線神崎川~園田の間にある、旧庄本(きゅうしょうもと)踏切に行った。
 ここでは、2012年11月5日、電動車いすに乗っていた女性が特急電車に撥ねられて亡くなった。事業者の報告によると、事故当時、特急電車は、踏切を時速110kmで通過している。
 報道によると、旧庄本踏切で、電動車いすのそばに女性が倒れているという110通報があった。豊中南署の調べでは、女性(79歳)は、歯の治療を終えて帰宅する途中だったようだ。

 旧庄本踏切には、遮断機、警報機があり、非常ボタンと障害物検知器が設置されている。踏切の幅は約2.5m、長さ約8mくらいだろうか。
 事業者が運輸局に提出した事故報告の「概況」欄には、「担当運転士は、通過中に電動カートに乗車していた当該女性は確認していない」と記入されている。特急電車の運転士は、女性に気付かずに踏切を高速で通過していたらしい。
 

阪急神戸線旧庄本踏切 2014年4月26日撮影
旧庄本踏切     踏切道が線路に対してななめに交差している。
ななめに黄色線が引いてあるが、歩道といえない。2014年4月26日撮影
踏切道は、上の写真を見てもわかるように、線路にななめに交差している。その上に、歩行者が通る踏切道の端は、ぎざぎざで歩道といえない。歩道を確保してほしいと思う。
 また、線路は踏切の前後の道に比べて高いため、電動車いすで通行しようとすると、走りにくいのではないだろうか。

 踏切が開くのを待っていた女性が、何らかの理由で、踏切内に進入してしまい、梅田行きの特急電車(8両)の7両目側面に接触したが、なぜ進入したのかはわかっていない。
 この事故は、製品事故として、メーカーから連絡が入り、(独)製品評価技術基盤機構(以下NITEと略)が、事故の際に女性が乗っていた電動車いすの調査を行っている。
 このNITEの事故情報の「事故原因」欄には、
「当該製品が踏切内に進入した原因は不明であり事故原因の特定には至らなかったが、当該製品は、前進・後進等の捜査に対して正常に反応し、ブレーキ機構にも異常は認められてなかったことから、製品に起因しない事故と推定される」とある。
 なお、このNITEの情報には、製品が原因とされる事故ではないため、メーカー名の記載はない。また、亡くなった方の個人情報の記載もない。そのため、事故発生日と事故発生地の情報から、この事故情報が、旧庄本踏切の事故と推測した。

 なぜ、事故が起きたのか、十分調査されないまま、危険な踏切が放置されていないだろうか。
この旧庄本踏切に立ってみると、そんな思いが大きく膨らんでくる。

 最後になりましたが、亡くなられた女性のご冥福をお祈りいたします。

《参考記事》
「踏切事故 車椅子の女性はねられ死亡 阪急神戸線」2012年11月5日(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20121105k0000e040167000c.html